俺が好きなのはメイドのあの子なのに、お嬢様の方がグイグイ来るんだが!?
くりから
プロローグ
第1話 一目惚れ
高校の入学式、桜が舞い落ちる木の下で俺は一目惚れをした。
その日、俺は少し早めに学校に来て、桜の木に体を預けながら人を待っていた。
同じ中学校出身で仲が良く、よくつるんでいた友達と一緒にクラス掲示を見ようということで、混まないうちに早めに来ようと約束していたのに、
“ごめん、寝坊した。すぐ行くから、ちょっと待ってて”
LINEに送られてきたのは、友達からの遅刻を詫びるメッセージだった。
“おい、コラ。こっちはもう学校に着いてんだよ”
“ごめんごめん。あとでジュース一本奢るから許してよ”
ピコッ (土下座をする土佐犬のスタンプ)
「なんだ、このスタンプ……」
初めて見るスタンプに困惑したが、罪悪感を感じているということは伝わった。
“とりあえず謝罪はそれでいいから、急いで事故らないように早く来い”
“急かしつつも私の心配をしてくれるなんて、隼人大好き。愛してる”
送られてきたメッセージを確認し、既読無視をすることに決め、スマホから目を離して、それをポケットに片付けた。
友達を待っている間、やることもないので何気なく校門から入ってくる新入生を眺めることにした。
同じ中学校出身に見える仲が良さそうな子もいれば、それを見て悪態をつく子もいたし、校門まで見送りに来た親を鬱陶しそうにする子もいた。
同じ学年で、同じクラスになるかもしれない子たちを眺めてつつ、どんな子とクラスメイドになるか考えていると、突然、その場の空気が変わった。
黒塗りのリムジンが校門の前に止まり、そこから2人の少女が出てきた。
そして、その2人はまるで太陽と月のようだった。
1人は腰まで届きそうな長い金髪の髪に、出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んだ抜群のプロポーションを持ち、もう一方の子に花が咲くような笑顔を向ける女の子。
もう1人は身長が高く、スレンダーながらも、しっかりとした胸の膨らみがあり、輝くような銀髪を肩で切り揃え、クールな面持ちで、もう一方の子の話を聞く女の子。
多くの人がその2人に目を取られ、まるでその場の時が止まったかのようだった。
そんな中、俺は胸の動悸を抑えるのに精一杯だった。
その2人が通り過ぎ、視界の外へ消えたことで、ようやく思考が再開した。
(な、なんだ今のは)
未知の感覚に戸惑い、再開した思考がまとまらないながらも、脳裏にはしっかりと“月のように美しいあの子”の姿が焼き付いていた。
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