第2話 チー牛上野くん

 はてさて、どうしようか...。


 今のところはどうやら主人公とヒロインたちの関わりはゼロ。

つまり、これはエロゲーの始まりより少し前の時期、実際日付は4月15日を指していているわけで、何らかのイベントが起きるとしたらゴールデンウィーク。


 それまでに彼女たちとの接点を持ちたいわけだが...。

 というか、そもそもこの世界はどういうルートに進むんだ?やっぱハーレムルートなのだろうか?


 何かしらのイベントさえ起こればどのルートかはすぐわかるが、そんなイベントが起こった時点でもう終わりだと思った方がいい。


「んじゃー、この問題を...上野」


 このモブは部活とかに入っているのか?

クラスの立ち位置も知らないし、友達がいるかも分からない...。

 高校2年の設定だから、誰かしら仲が良い友達くらいいると思うが...。


「上野〜。聞いてるのか?」


 その友達次第では...ワンチャンある。主人公に近づけば早いが、それはリスクも高い...。


「...上野!」


 クラスメイトと先生の目線がこっちに集まる。

 どうやら上野とは俺のことらしい。


「は、はい...えっと...その問題の答えは...aの3乗、マイナスbの4乗です」と、立ち上がり解答した。


 と、無駄に頭が良かった前世での記憶が生きて、咄嗟に回答を導き出すことができた。


「...正解だ。けど、授業はしっかり聞いておけよ」

「...はい」と、そのまま席に座る。


 特にクスクスと笑われることもなく、みんなが前を見る中、1人の女子がこちらを見ていた。


 それは天真爛漫少女、天野川美羅だった。


 ...なんだ?なんでこっちを見ている?


 そうして、授業が終わり、次の授業が何なのかを黒板近くに貼られた時間割で確認しつつ、友達とかが話しかけてこないかなーと思っていたら、天野川が机の下から顔をひょこっとだし、こちらを見つめる。


「うわっ、びっくりした...」と、素で驚いていると「ね!これ見て!」と、携帯電話の画面を見せてくる。


 それは某有名なSNSの絵であった。

いわゆる、チー牛と言われる人が写っていた。


「上野くんにそっくりだよね!」と、屈託のない笑みで心を刺しに来た。


「...いや、そんなに似てないと思うけど」と、間近で見る可愛い顔に耐えきれず、思わず目を逸らしてしまう。


「えー?そっかなー?うーん?似てるけどなー」


 多分、気づいていないですけどそれ悪口ですよ。


「...チーウシ?チーウシって言うんだって!」

「おい」


 流石にその呼び方はいかんと思い、注意する。


 というか、こんなモブのくせになんで天野川と接点があるんだ?


「な〜にしてるの〜?美羅〜」


 ゆったりとした喋り方で近づいてくる菅原小葉...。

 よ、よし!いいぞ!なんか接点が増えていく!


「あのね!見て見て!これ!上野くんにそっくりじゃない!?」

「...あ〜、う〜ん...ごめんね〜?上野くん〜。美羅は決して悪気はないのよ〜」

「あっ、だ、大丈夫っす...」


 胸元がはち切れんばかりにパツパツになっている。隙間から黒いブラが見える。エロい。


「この子ね〜、友達100人作りたいらしくて〜、今いろんな人に声をかけてるのよー。良かったら友達になってくれない〜?」


 ものすごいチャンスが到来した。


「ぜ、是非、お願いします」というと、「やったー!よろぴ!うえぴ!」と、楽しそうにそんなことを言う。


 うえぴ...変なあだ名をつけられた。


 よし、幸先の良いスタートだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

次の更新予定

2024年11月25日 00:15

エロゲーのモブに転生した俺はモブなりにヒロインを攻略したいと思います〜知らぬ間にメインヒロインどころかモブ女子からもモテモテになってしまった〜 田中又雄 @tanakamatao01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ