第21話
拓真さんが戻ってくると小さな封筒を一つ持っていた。
「お前に渡したいと言ったのはこれだ、ほら受け取れ」
拓真さんから封筒を受け取り、一体なにが入っているのか確認するとそこには1枚の通帳と手紙が入っていた。通帳の中を確認するとそこには俺がみたことのない金額が入っており名義は俺になっていた。入っているお金に動揺しつつももう一つの手紙も確認するために開けてみる。
「この手紙を見ているということは拓真さんが敬斗君に無事通帳を渡したということだろう。いきなりのことでびっくりしたことだろうね。だがこの通帳は君が受け取るべきものだ、この通帳に入ってるお金のほとんどが君の両親に関するものだからだ。幼い時に君を引き取った際、拓真さんの協力もあって一時的に保険金を預かったのだ。あの時君はまだ小さくどうしようも無かったから成長した君に渡すまで私達が預かっていた。君の両親にかわり育っていく君を見るのは私達夫婦のかけがえのない大切な時間だった。そんな君もひとり立ちしようともがく姿は時には辛く歯がゆい思いを何度もした。だが君は君の両親と同じく無我夢中で料理に全力を尽くしていてやはり親子なんだなと思い知らされた。そして18になった君にこの通帳を渡そうと思った時に拓真さんが私達の前に現れて敬斗くんの今の状況を知らせてくれた。私達は心優しい君の行動を信じ、英梨さんの現状を知って少しでも助けになればと思い少しばかりこの通帳に気持ちを入れさせてもらった。困った時はいつでも帰ってきて欲しい、私達も君の家族なのだから」
手紙を読み終わり一息つく。改めて今の両親に感謝をしてちゃんと直接会って感謝の言葉を伝えなければならないと感じた。逃げるように出た俺のことを家族と言ってくれることに胸が締め付けられる。
「英梨さんのとこも親を亡くして行き場に困っていたからな、そこを昔のお前と共感するとこもあっただろうし、お前自身が助けようと思って行動したからお前の今の両親は動いたんだろう。まっもともと両親の金はタイミングをみて渡すつもりだったからいい機会だったんだ。素直にその金は受け取っておけ、あって困るものじゃないしな。それに」
拓真さんがなにかいいかけたが言葉が止まってしまう。言いづらい内容なんだろうか?
「は〜敬斗俺も手伝うからその金で英梨ちゃんと妹を連れて一緒に引っ越しをしろなるべく早急に」
「えっそんな急になんで?なんかあったんですか?」
「英梨ちゃんを引き取ろうとした親戚とこの1週間で話をしにいったんだが、あの目はダメだ。今までの経験上ああいうやつは何かをしでかすことが多い、英梨ちゃんの今住んでいるところはもちろんあっちも知っているからなにか起きる前に動いた方がいい」
拓真さんがここまでいうのだからそれは事実なのだろう。幸い引っ越しなどする為のお金は手に入った、ここは拓真さんを信じて動こう
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