第2話:バイト先は政府の秘密組織
『夜天衆』の詳細は明らかになっていない。
しかし、鎌倉時代初期から存在していた噂されており、かつては天皇に仕えていたとか。
「自分たちが日本を支配すべきだと考えている、野蛮な集団ですよ」
「へぇ~」
ちょっと面白そうじゃん。
そんな話を聞いていたら、車はとある建物の前で停車した。
「着きました」
「いや、ここって防衛省じゃん」
「そうですよ? 地下に本部があります」
俺は霧島さんについて行き中に入る。そこから隠されたエレベーターに乗り、地下に降りていく。
エレベーターを降りると、二十人ほどの人がおり、気付いた一人の女性が駆け寄ってきた。
「霧島課長、ご無事でし――って、怪我をされているじゃないですか! 早く治療しますよ!」
「ええ。それと室長はいますか?」
「はい。先ほど帰ってきましたよ。今は部屋にいます。それで、そちらの少年が、話しに上がっていた?」
「ええ。黒崎蒼汰くんです。彼を室長のところへ」
「わかりました。では、こちらに」
霧島さんは治療を受けると言うのでここで別れ、俺は案内について行くことに。
部屋の前に着くと、彼女はノックをする。
「綾崎です。例の少年をお連れしました」
「通してくれ」
部屋に入ると、いかにも高官とも言える四十代のおっさんがおり、案内をしてくれた彼女は「では失礼しました」と去っていった。
おっさんに座るように促され、ふかふかの高級そうな椅子へと腰を下ろす。
「初めまして。超常災害対策室の室長、最高責任者の風間隆二だ」
「黒崎蒼汰、高校二年生」
「黒崎くんだね。それで、話しは聞いているかな?」
「検査と機密保持でしょ?」
その通りだと頷く風間さん。
風間さんは続ける。
「報告では君は一般人だと聞いているが、本当かね?」
「本当も何も、事実だからね。両親ともに一般人だよ。異能だなんて初めて見たし、知ったよ」
「そうか。だが、君は異能がないという。にもかかわらず、君はあの夜天衆の一人を倒したと聞いた」
事実なので頷くしかない。
「こちらでも君の素性は調べてある。嘘を言っていないことも。本当に、普通の家庭だ」
「だろ?」
「ああ。もしかしたら異能があるかもしれないから、検査はするよ。異論は認めない」
そして風間さんは「本題に入ろう」と言い、一枚の用紙をテーブルに出した。
見ると誓約書と書かれていた。
「機密保持の誓約書か?」
「その通り。これにサインしてくれればいい」
「どれどれ」
俺は手に取って確認する。もしかしたら、不利になる条件が書かれている可能性があれば、今後に影響する。後々地獄を見る場合もあるからね。
奴隷契約なんてまっぴらごめんだ。
誓約書には堅苦しい言葉で色々と書かれていたが、要は「第三者に漏らさない、話さない」だった。これを破った場合、処罰があるとのこと。
不利な条件は一切なかったので問題ない。
俺はサインした紙を渡すと、風間さんは確認して頷いた。
「大丈夫だね」
「もし誓約を破った場合の処罰って?」
「強制的に拘束し、異能に関する一切の記憶を消去する。あるいは、罰金だ」
「うわっ、記憶消去ってフィクションじゃなかったのか⁉」
「よくあることだ」
「……まあ、その時は風間さんを人質に逃げればいいか」
「いや、怖いこと言うね⁉ てか、異能者が集まる秘密組織を相手に、よくそんな物騒な発言ができるね!」
「異能者って、あの連行された男くらいの実力でしょ? あの程度ならいくら集まろうが余裕よ」
そこにノック音が響き、入ってきたのは手当てを終えた霧島さんだった。
「本当に高校生か疑いたくなりますね……」
「本当だよ。で、手当ては終わったのかね?」
「はい。それで誓約書を書かせたということは……」
霧島さんの発言に風間さんは「その通り」と頷き、口を開いた。
「黒崎くんには、その力を生かすため、超常災害対策室に所属してもらいたい」
「異能者と戦うことになるんでしょ? 俺にメリットは?」
「卒業後は防衛省に所属の職員となる。給料も普通の職員より出るし、活躍次第でボーナスも出る。今はバイトとしてだから、最低でもこれくらいかな」
電卓によって出された金額を見て、俺は即決した。
面白そうな仕事だし金も出る。将来も安泰。断る要素など無かった。
「いつでも頼ってくれよ、ボス」
「変わり身が早いよ……」
「こんなアウトロー思考の持ち主が同僚になるんですね……」
何とも言えない顔をしていた。
一緒に働くことになったのでみんなに挨拶をし、検査を受けるのだった。
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