第21話 轟く名声
颯太が連邦で治療法を確立し始めたころ、彼は周囲の助けを借りて、より効率的に医療体制を整えていくことを考えていた。その中でも、特に重要な役割を果たすことになったのがセリナ・オールバックとルディ・マーテルだった。
ある日、颯太は診療所に一通の手紙を受け取った。それは、セリナ・オールバックという商人からのもので、彼女は医療器具や薬草の流通を担当していると名乗っていた。手紙には、颯太が行っている治療法を支援したいという申し出が記されており、その内容に興味を持った颯太は、すぐに彼女と会う約束をした。
約束の場所に現れたセリナは、颯太が予想していた通り、商人らしい風格を持っていた。身なりは洗練されており、その目には確かな計算がうかがえた。セリナは颯太に微笑みかけながら言った。
「篠宮颯太殿、初めまして。私はセリナ・オールバック。商業の世界で長年活動しており、今は医療器具や薬草の流通を担当しています。貴方の治療法を聞き、これは大変素晴らしいものだと思い、是非ともお手伝いさせていただきたいと思いました」
颯太はその言葉に驚き、少し考え込んだ後、答えた。
「ありがとうございます。しかし、私は医療技術を広めるためにあまり商業活動に関わりたくないのです。ただ、これだけの規模で治療を行うには、物資の供給が必要であり、それには助けが必要です」
セリナは軽く頷き、続けた。
「その通りです。実際に、私は物資の瞬間移動ができる能力を持っています。この能力を使えば、遠く離れた地域にも医療器具や薬草を瞬時に届けることができます。これにより、貴方の治療法を連邦内外に迅速に広めることができるはずです」
颯太はその提案を慎重に受け入れるべきか悩んだが、最終的にはセリナの能力と提案が連邦にとって必要だと感じた。
「それなら、是非お願いしたい。あなたの協力があれば、より多くの患者を救うことができるでしょう」
セリナはその言葉に満足そうに微笑み、早速手配を始めた。彼女の能力により、医療器具や薬草は一瞬で連邦の各地に届き、颯太の治療法は急速に広がっていった。セリナはその後、連邦内外での物流網を整え、颯太が必要とする物資を常に供給できる体制を整えた。
その後、颯太はもう一人の協力者であるルディ・マーテルと出会った。ルディは放浪の学者であり、医学に関する膨大な知識を持っていた。彼は颯太の治療法に興味を持ち、どうしてもその知識を記録し、広めたいという強い意志を持っていた。
ある日、颯太が診療所で患者を診察していると、ルディが訪ねてきた。彼は年齢が60を超えているように見えるが、知識に対する情熱は若者に負けないほど旺盛だった。ルディは自らの目的を説明した。
「私はルディ・マーテル、放浪の学者です。あなたの治療法に強く感銘を受け、これを広めるために記録を残したいと思っています。私は『知識の魔書』を使い、瞬時に本に触れた内容を記憶し、それをすぐに書き起こすことができます。これを使えば、貴方の治療法を一冊の本としてまとめ、広めることができる」
颯太はその話を聞き、興味深く耳を傾けた。
「それは非常に有益です。治療法を記録し、広めることができれば、連邦内外で多くの命を救うことができるでしょう。しかし、医療知識を広めることにはリスクも伴います。私の治療法が間違って使われたり、誤解されることは避けなければなりません」
ルディはそれに対して、微笑みながら答えた。
「もちろん、貴方の信念に従って、最善の形で書き残します。私はその知識を広めるために全力を尽くします」
颯太はルディの言葉を受け入れ、二人は協力して医療書を執筆することになった。ルディの能力で、膨大な量の情報が瞬時に記録され、それが一冊の医学書として形を成すまでにそう時間はかからなかった。その書籍はすぐに連邦内で広まり、颯太の治療法は医学界で注目を浴びることになった。
セリナとルディの協力を得て、颯太の治療法は連邦内で急速に広まった。しかし、それだけではない。颯太の名声は瞬く間に周辺国にまで伝わり、治療を受けたいと願う人々が連邦に集まり始めた。
特に近隣の商人や民間人が、自らの健康を取り戻すために連邦に足を運ぶようになった。セリナが瞬間移動を使って物資を効率的に届けることで、連邦内外の供給網は安定し、医療体制の拡充が進んだ。患者たちは連邦に集まり、次々と治療を受けることができるようになった。
しかし、王国だけはこの動きに脅威を感じていた。王国の貴族たちは、連邦が医療拠点としての地位を確立しつつあることに警戒していた。王国が連邦に対して優位を保ちたいと考える中で、颯太の存在はますます不安定なものとなっていった。
ある日、王国の使者が連邦に到着し、颯太に対して強い警告を発した。
「連邦がこんなにも医療に力を入れるのは、王国にとって脅威だ。お前が使うその力、我々にとっては許容できるものではない。慎重に行動することを勧める」
颯太はその言葉に動じることはなかったが、王国からの敵意を強く感じるようになった。彼はあくまで命を救うために医術顧問として活動していたが、王国の圧力が次第に強まっていくことは避けられなかった。
颯太は周囲の協力者と共に、医療体制を拡充し、連邦内外でその名声を広めていった。セリナの物資の流通、ルディの記録作業、そして颯太の治療法は、急速に多くの命を救うための力となった。しかし、王国からの圧力と敵意が次第に強まる中、颯太は自らの信念と向き合い続けなければならないことを感じていた。
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