バイト先では、先輩や社員に従順に!

崔 梨遙(再)

1話完結:1400字

 僕達は学生の頃、大晦日から1月7日まで、神社の初詣の警備員をしたことがある。大晦日は9時だったか? 10時だったか? 夜に集合。制服を渡されて制服に着替える。そして、配置や仕事内容を知らされる。その晩は徹夜。そのまま元旦の夕方まで仕事をする。2日目からは日勤。朝9時から夕方の6時くらい迄が勤務時間。大晦日は日給1万2千円、他の日は日給1万1千円だったと思う。ちなみに、成人の日も単発で呼ばれた。それで、10万円くらいもらえた。当時としては、いいバイトだった。


 交通安全で有名な神社だったので、車でのご祈祷が繰り返される。だから、仕事は祈祷が終わった車と祈祷を始める車の入れ替え。誘導だった。祈祷が終わったら、“ご祈祷が終わりましたので、速やかに車にお戻りください。恐れ入ります、速やかな退場をお願いします”、メガホンでアナウンスもする。車両の台数も毎回チェックする。


 仕事のことはいい。その時、一緒にバイトしていた級友は仁志君、篠原君、北村君だったのだが、仁志君にみんなが困ったのだ。


 何に困ったか? 休憩時間だ。僕達は休憩が終わる5分前に駐車場に戻る(多分、それが普通だと思う)。しかし、仁志君は5分から10分、遅れてくるのだ。僕等だけならいい。だが、現場には警備会社の社員さん達もいるのだ。文句を言われないわけがない。


 ぼくらは、トイレに行く時間も考えて詰め所を出るのだが、仁志君はきっちり休憩してからトイレに行くから遅れるのだ。そして、最初は何故か? 社員さんは僕にばかりクレームを持って来た。


「あいつに、5分前にくるように言っとけよ」

「はい、言うときます」


 どうやら、僕はこの4人のリーダーだと勘違いされていたようだ。全然、リーダーではなかったのに。でも、とりあえず仁志君には言った。


「休憩が終わる5分前にもどって来ないと、社員さんの機嫌が悪くなるで」

「休憩はしっかりとらなアカンやろ? それは権利やで」

「でも、時間ピッタリに来るならええけど、仁志の場合、遅れてくるやろ? 遅れたらアカンやろ?」

「なんで? みんなも俺みたいにしたらええやんか」

「僕は社員さんから“注意しとけ”と言われたから注意しただけや。文句があるなら社員さん達に言ってくれ、僕は知らん」


 そもそも仁志君は変わっているのだ。大晦日、徹夜になるので途中、通常の休憩以外に3時間の仮眠時間があるのだが、僕等3人が近所の喫茶店に行こうとして誘っても、


「金が勿体ないから、俺は詰め所で寝とくわ」


と、マイペースぶりを発揮していた。そう、僕等の意見や忠告を聞くタイプではないのだ。


 そして、また僕が社員さんに言われる。


「あいつ、また5分遅れで戻って来るやんけ」

「ああ、注意はしましたが、僕等の言うことを聞かないんです。仁志君に直接注意してください。社員さんから言われた方が、言うことを聞くでしょうから」

「そうか、わかった。俺から言うわ」


 ということで、5分遅れの仁志君は、とうとう社員さんに注意された。


「注意されたわ、ムカつくわ-!」

「まあ、しゃあないやんか、時間通りに来たらええだけのことや」

「あの社員さんが1分でも遅れたら、今度は俺が注意するわ」

「おいおい、やめといた方がええぞ」


 社員さんが1~2分遅れて戻って来た。


「遅れられたら困りますよ~!」


 仁志君が注意した。すると仁志君は……詰め所に連れて行かれた-!



 仁志くーん! どこ行くねーん!







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