第15話

愛梨はStormのコンサートに来ていた。

ボーカルの大地だけでなく、ギター、ベース、ドラムと全てが際立っている。

愛梨はタオルを回して歌を聴いていた。

物凄い熱気である。

コンサートが終わって愛梨は楽屋に向かった。

面会は1人5分と決まっていた。

愛梨は行列の後ろに並んだ。

みんな何処かで見た顔ばかりである。

その時、後ろから肩を叩かれた。

「演歌歌手の馬場愛梨さんじゃない?」

「はい」

愛梨は返事をして驚いた。

そこにいたのは高校生シンガーソングライターとして人気が高い伊達希美加だったのである。

「ウチのお父さんがあなたの大ファンなの。後でサインくれる?」

「いいですよ」

「私はよく演歌は分からないんだけど、あなたの歌は好き」

「ありがとう。私も希美加さんの歌はよく聴きます。特に"一番好きな人"が大好き」

「本当に?嬉しい。あの歌はかなり思い入れがあるから」

話していると順番が来た。

「ねえ、一緒に入らない?そうしたら10分話が出来るし」

「そうねー」

愛梨は思わず笑顔になった。


Stormと話が終わった後で愛梨と希美加は近くのファミレスに行った。

「このハンカチにサイン頼める?」

愛梨はサインして希美加に渡した。

「どうして演歌歌手になろうと思ったの?」

「祖母が民謡を習っててよく歌っていたの。それを横で聞いて歌うようになったらしいの。それで3歳から民謡を習いだしたの」

「へえー」

「10歳の時、県の歌自慢大会で優勝したから、ダメ元でサンライズミュージックのオーディションを受けたらグランプリになったの。それで12歳の時にデビューした」

「凄いね!」

希美加は目を丸くしている。

「希美加はどうやって歌手になったの?」

「私は自分で作った歌をクララミュージックに送ったの。それで歌手デビューの話が来た。中学3年の時よ」

「そうなんだ」

「話は変わるけど愛梨って恋してる?」

希美加はジッと愛梨を見つめた。

「全然。そんな時間なくて…… 」

「私も恋の歌は沢山作るけど、自分では全然…… 」

「私も歌では歌うけどね」

愛梨はそう言うとため息を吐いた。

「友達の話は殆ど恋話なの。私は聞いてるだ

け」

愛梨は苦笑いする。

「私も同じ。恋ってよく分からなくて。好きな人もいないし」

希美加はコーヒーカップを両手で包み込んでいる。

「みんな何でそんなに恋出来るんだろ」

希美加が呟くように言った。

「本当だよね…… 」

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