第17話
「お姉ちゃんー」
梨央が有紀の手を引っ張った。
「ああ、ごめん。梨央。今日はハンバーグにする?」
「梨央、お姉ちゃんのお手伝いするの。お姉ちゃん、疲れてるから」
有紀は梨央の前に屈みこんで目線を合わせた。
「梨央は優しい子。お姉ちゃん、大好きよ。じゃあお箸並べて貰おうかな」
「うん!」
いけない……何で静の事考えたりするのよ。
「そうか。梨央がお箸並べたのか。よくやったぞ。梨央」
父親にも褒められて梨央はご機嫌である。
「梨央。お風呂入ろう」
「うん!」
梨央の寝顔を見ながら、有紀はいつの間にか静の事を考えていた。
入学してまもなくの頃、有紀は屋上で歌っていた。
合唱部に入りたかったが、保育園に梨央を迎えに行かなければならないので、入部を諦めていた。
「綺麗な声だな」
給水塔の裏にいた男子生徒が有紀の前にやって来た。
「白藤だよな」
「どうして私の名前を知っているの?」
「有名だからな」
「何で?それは加藤君の方だよ」
加藤静は1年A組で、入学式の日から女の子のアプローチが絶えないと有名だった。
1年の女子は静が一体誰と付き合うのか興味津々である。
「お前、時々此処で歌っているからさ」
その言葉を聞いて有紀は真っ赤になった。
誰もいないのを確かめて歌っていたつもりだったのに。
「お前、屋上の美声女子って言われてるぜ」
「恥ずかしい!もう止めるわ!」
有紀は両手で顔を覆った。
「お前、何で合唱部入らないの?」
「ちょっと家庭の事情で」
有紀はサラリと躱した。
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