第8話

ある日の夕方、有紀が梨央と夕食の買い物をしていた時、有紀が手を離した瞬間に梨央がお菓子コーナーを目指して走り出した。

そこへ1人の高校生がいて梨央はぶつかりそうになった。

「ありゃ。お母さんと逸れたの?」

高校生の男の子には勿論悪気はない。

しかし、梨央は母親の事を聞かれて大声で泣き出した。

「わ!どうして泣くんだ⁈」

男の子が狼狽えていると、有紀が走って来た。

「梨央!どうしたの?」

「お姉ちゃんー!」

梨央は有紀にしがみ付いて声を上げて泣き出した。

「ごめんなさい。この子、何か迷惑を掛けたんでしょうか?」

「いや……って白藤じゃないか?」

「あれ?三浦君じゃない」

「わあーん!」

「ごめん、俺、何か悪い事言ったかな。お母さんと逸れたのか聞いただけだけど」

三浦智也は頭を掻いていた。

「ごめんね。うち、母が2年前に亡くなっているの」

「うわぁ!ゴメン!知らなかったとは言え

…… 」

智也は見るも哀れに狼狽え始めた。

有紀はその姿を見て微笑んだ。

「三浦君が悪いんじゃないわ。タイミングが悪かっただけ」

有紀は梨央を抱き上げた。

「梨央、もう泣かないの。お姉ちゃんの友達

よ」

「じゃあ、俺行くわ。本当にごめんね」

智也は歩いて行った。


智也は途中で振り返ると、有紀がオマケ入りのお菓子を梨央に見せていた。

梨央はもう泣き止んで笑っている。

妹に見せる優しい笑顔に智也は釘付けになっていた。

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