【カクヨム10参加作品】異世界王子の日本転移! 勇者に国を追われ恋人も寝取られた! だが、それでも俺はお前に心からの感謝を忘れない! 

石のやっさん

第1話 努力は俺を裏切らない

俺の名前はセレス、スタンピート、トリスタン


剣技の国、トリスタン王家の第三王子として生まれる。


上の兄たちはジョブやスキルに恵まれていたが、悲しい事に俺はジョブやスキルに恵まれなかった。


第一王子は聖騎士のジョブを持ち、第二王子はクルセイダーのジョブを持つ中、俺はまさかのジョブ無し。


つまり、何の恩恵にも預かれない存在だった。


本来なら、子供の時に捨てられても可笑しくない存在だったが、家族はとても優しく兄弟と同じと同じように平等に育ててくれた。



先王のおじい様は俺にいった。


「お前は確かに恵まれていない、魔法は努力で補う事は出来ぬ、だが剣はジョブやスキルだけではない、努力を重ね技を工夫し実戦を重ねれば、その差を埋める事は出来る」


僕には何もない、だから、剣の国トリスタン王家に恥じない様に生きる為には、死ぬほど努力をするしかなかった。


暇さえあれば剣を振り、それ以外の時間は学問に励んだ。


勿論貴族としての立ち振る舞い、マナー全てを完璧にこなす為の努力も惜しまない。


そう言う点では僕は凄く運が良かった。


ジョブやスキルは貰えなかったが、家族は優しく、本当の天才である、兄二人は惜しみなく、僕に剣や学問を教えてくれた。


父もおじい様も剣の稽古には暇があれば付き合ってくれる。


おじい様は今でこそ引退したが元は武王と呼ばれ、王でありながら戦争時には先陣で剣を振るっていた。


他にも、王宮騎士などが俺に剣を教えてくれる。


そんな恵まれた環境で剣が学べる人間はそうは居ない筈だ。


学問やマナーを学ぶには王家だから本は幾らでも城にある。


そして母であり王妃でもあるマリアーナは王族なので完璧なマナーを知っている。


厳しくもそれらの知識を鞭を振るいながら俺に教えてくれた。


努力は俺を裏切らなかった。


出だしこそジョブ持ちに何も敵わなかった物の、知らないうちに剣技が身に付き戦えるようになって来た。


兄二人の様に斬鉄までは出来ないものの斬岩位まではどうにか俺も出来るようになった。


斬岩と簡単に言うが、これはジョブ『上級剣士』を持っていても努力しなければたどり着けない境地だ。


学園に通い勉学も死ぬ程努力した、『ジョブ無し野郎』そう言われ無いようひたすら頑張った。


ジョブは無くても血がある、そう言われ『ブラッドオブトリスタン』と呼ばれる様になった。




努力は俺を裏切らない。


その言葉を頭に刻み、努力に努力を重ね。


オークは勿論の事、オーガですら倒せる実力が身についた。


スキルもジョブも無い、だが死ぬ程の努力は身を結んだ。


学園の卒業の時はトップの証である、赤いマントを羽織る事を許された。


このマントは成績が1番の証で卒業式の中で1名のみが羽織れる物だ。



学園を卒業した俺は一人前として扱われる。


学園での成績が優秀だった事もあり、直ぐに俺はコネなど使わず、自力で騎士の試験を受け合格した。


つい最近までは平和だったのだが、学園を俺が卒業する時期と重なり、魔王が人類に宣戦布告。


そして戦乱の時代になり、魔王軍との戦いが熾烈を極め各地は戦場となっていた。


平和なのは王都周辺のみ、騎士の資格があり、トリスタンの第三王子の俺は戦う義務がある。


一旦軍に所属したら暫くは帰ってこれない、それ故、卒業後の休みの間に、王子である俺は婚約者を決めて、戦に旅立つ必要があった。


「喜べ、セレス......お前の努力が認められて公爵家から婚約の話が来たぞ、相手はなんとジョセフィーナ嬢だ」


父から聞いた時一瞬耳を疑った。


ジョセフィーナ嬢は王国一美しいと言われ、近隣諸国にまでその名は知られている。


赤い髪を持つ色白の姿から『王国のルビー』と呼ばれる程だ。


「それは本当ですか? 信じられません」


王子とは言え第三王子。


兄上達なら兎も角、俺はそこ迄の価値は無い。


「本当だ、お前は全てに置いて努力をした、その結果だ! 誇っていいぞ、ジョセフィーナ嬢もそんなお前の姿に惹きつけられ、自らバルドール公爵に頼んだそうだ」



「報われた、全てに」


「おいおい、まだ此処からだ、王国一の美女を妻に娶るんだ、まだ終わりで無いぞ、このまま精進しろ」


「はっ!」


俺が戦場に向うまでの猶予は半年......慢心せずに剣の腕を磨き続けた。


魔法が一切使えない俺には『剣技』『体術』それを極める以外に道は無かった。


それを極め続ける為に訓練に明け暮れる。


そんな俺をジョセフィーナ嬢は良く見に来ていた。


婚約者と言う事でお互いに行き来が許された。


「セレス、本当に貴方は凄いわね」


「ジョセフィーナ、私がどうかしたのですか?」


「いえ、所作振舞い、全て凛々しく見えますよ、しかもこれで学問に剣術全てが一流なんですから」


俺に才能は無い。


もし、そう見えるなら、それは俺の努力が実ったに過ぎない。


「それを言うならジョセフィーナはこの世の物とも思えない美しさ......それに貴方といると凄く癒されます」


「それは本当ですか? ならば私達きっと良い夫婦になれますね」


「はい、俺は貴方に相応しい男性に成れるようこれからも努力し続けます」


「ならば、私はこれからも貴方を癒せるような女性で居られる様に自分を磨きます」


それから時間が過ぎた。


幸せな日々も今日で一旦終わりだ。


これから俺は戦場に行かなくてはならない......この国を世界を守るために。


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