漫ろ
Rokuro
漫ろ
深夜、多分3時くらい。
別に何をするもなく、ただの夜更かし。
眠れない脳を無駄に行使するために、一人暮らしの部屋でブンブン鳴る古いパソコンを動かしながら。
ポットでお湯を沸かして下らない動画を見る。
ゴポゴポという沸騰の音が煩わしい。
でも、別に今見ている動画は面白いわけではない。
ただ、脳のリソースを無駄に消費しているだけだ。
明日が休みだとか、朝起きれないだとか。
健康とか不健康とか寝不足とかどうでもよくて。
ただただ、不真面目に真面目っぽくしているだけ。
カチッ。
ああ、お湯が沸いたのか。
耳に入る音に気付いて近くに置いてあるポットに手を伸ばす。
しかし、ポットはまだ沸騰の途中だ。
しばらくしてカチという音が鳴って。
目の前で沸騰が終わった。
空耳で片づけることにした。お湯が沸くのが楽しみだったんだ。
深夜に飲むコーヒーほど、排他的な物はない。
眠れないのに眠ろうとする努力もせず起動材を口に含もうものなら、この夜を起き通すことに決めたということだ。
画面では売れない動画制作者がバズると思ってるネタを寒々しくやっている。
同時に寒い部屋で、時折タイピングをして温まった人差し指で左手の暖を取る。
トン。
今度は上から音がした。
上階には確か女性が住んでいたはずだ。
朝はドタバタしているようだったので、きっと社畜なのだろうと。
高みの見物をしているわけなのだが。
……そういえば。
今朝からそんな音が聞こえないな。
いつもなら慌ただしく歩いているはずなのにな。
まあ、旅行にでも行ってるのかもしれない。
関係ないことを気にしても意味などない。
コン。
窓辺から音がした。
これは、気のせい。
一瞬、背中が凍ったけど気のせい。
気のせい。
コンコン。
違う。
気のせい。
分厚い遮光カーテンの向こうから、音がする。
コンコンと、コンコンと。
この遮光カーテンを開いたら。
ふと、恐怖を思う。
カタカタ。
やめて。
今は違うんだ。
どうか。どうか。
ガラガラ。
思い出させないで。
ガシャン。
思い出させないで。
ゴウ。
思い出したくない。
漫ろ Rokuro @macuilxochitl
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