第一話

 俺は、鶴橋高校つるはしこうこうの1年生――代永弘和よながひろかず


 好きなことは、アニメ鑑賞で嫌いなことは人付き合いや他人が絡んだ面倒沙汰。特に人との馴れあいなんて面倒臭すぎて絶対にお断りだ!!


「セイヤァッ!」


 俺は自宅の道場に置いてある木人を相手に、力のこもった正拳突きをお見舞いする……。


 この空手道場や木人は、全て生前に祖父が俺達に残してくれたものだ。


 俺は練習を終え自宅へ上がると、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出した。


『面倒沙汰』は絶対にお断り!……そんな風に考えていた俺だったのだが、ある日を境に『面倒沙汰』に巻き込まれるようになる日々を過ごすことになるなんて、正直なところ夢にも思わなかった。


 それは、今から数ヵ月前へとさかのぼる。


 ♦︎


 4月上旬。


 一週間前まで中学生だった俺達は、まだ立春の寒さが残る高校の体育館に集められた。


 集められた生徒達の間では「めんどくさい」だの、「寒い…」だの「早く終われ」だのと、色々とヤジが飛び交っている。


 今日は記念すべき鶴橋高校の第23期の入学式当日である。


 正直言ってどうでもいい。


 体育館に集められた後、俺達はそこで約一時間近くにも渡る校長先生の話を立ったままの状態で長々と聞かされることとなり、入学式が終わり、体育館を出る頃には数名が痺れた両脚を引きずっていた。


 その後、俺達はクタクタの状態で教室へと案内されると座席表を言い渡された。


 俺の席は教室の後ろのドアから入ってすぐのところにある。


 しかもここは前にある教壇とは少し離れている上に、俺の前の席には体格のいいクラスメートが座っている為、前からでは俺の位置は視界に入りづらい。


 つまり、安易に当てられることもないし、俺は比較的楽にサボれるというわけだ……。


 ♦︎


 その後、一限目が終わると……。


 クラスメート達はいそいそと名刺交換のように、他者との交流を図ろうとし始める。


 やれやれ……だぜ。営業マンかよ。


 俺は皆んなの行動をチラッと横目で眺めては、話しかけられるのも面倒なので、 "話しかけるな" という念を身体に纏う事にして、そのまま机に突っ伏した。


 幸いにも俺の机の周りにだけは人が寄ってきてはいないので、俺は安心して1.5限目の睡眠学習をすることが出来た。


 ♦︎


 それから一週間の月日が経つ……。


 俺が他者との交流を図らずに一週間が経過した時、クラス内では当初とは違う光景が見て伺えた。


 俺の周囲で男女共にクラスカーストがほぼ出来上がろうとしていたからだ。


 物好きだね〜。どうして、今時の若い子達はそんなに群れたがるんだろうね〜。


 俺はあくびを一つし、そのまま机に突っ伏してはこの日もいつもと変わらずに誰とも話すことなく、睡眠学習に入った。


 ♦︎


 それから更に一週間が経過した頃……。


 クラスカーストは確固とされていた。


 当然、言うまでもないが俺はどのグループにも属してはいない。


 読んで字の如く、一匹狼である。


 それから四限目が終わり、俺はひと足先に購買部へと向かい、あんパンと牛乳を購入しては教室へと戻った。


 皆がお弁当を食べようとしている中で、俺は一人机に突っ伏したまま、今日は何のアニメを見ようかと一生懸命に悩んでいた。


 うーん。妹ものも良いが……今日は転生系を。


 その時だった……。


 俺の思考を一瞬で消し去るかのような大きな明るい話し声が教室内に響いた。


 それは『佐山可憐さやまかれん』を筆頭とする、女子のクラスカーストによるものだった。


 俺は思考を止められて少しイラっとしたので、腹いせに盗み聞きをすることにした……。


『そんな事されたら、例えエモくてももう2度と行かないよね?』


「「確かに! あ、そうだ!可憐ちゃん! その店さ!? SNSでちょっと炎上させて見ない? 面白いと思うよ?」」


『いや。そう言うのは、なんか性に合わないからいいよ』


「「あ、そうなんだ……まぁ可憐ちゃんが言うんだったらウチらは手の出しようがないわ〜」」


『でも、アタシのこと思ってくれてありがとうね!』


「「可憐ちゃ〜ん! ウチら! 一生可憐ちゃんについて行きます!」」


『ちょっと、大袈裟だってばぁ〜』


 話を盗み聞きしたところ、佐山がSNSで話題になったカフェに行っては、頼んでもない商品が二品も出て来たにも関わらず、その二品の料金を合わせて払わされたとのことらしい。


 酷い話である……。


 まぁだからと言って、よくあるやり返しをするような人じゃなかったのは、ちょっと意外だった。


『佐山可憐』。クラスカーストのトップに君臨しており、クラスで一番可愛いと言われているので当然だが、俺を除いた男子達からの人気は絶大。


 少し幼さが残る幼女フェイスにはうってつけの夢と浪漫の詰まった、ちょうど良いサイズの二つの袋が今日も野郎どもの視線を集めまくっている。


 ちなみにカップ数だが、目測だと恐らくCよりのDくらいだろう。


 ちなみに俺はA派だ……。貧乳は最高なのだ。


『あ、それでさぁ〜。この間、食べてって渡したチョコの味どうだった?』


 俺が脳内で色々と変な妄想をしていると、彼女らの会話の内容が急に切り替わる。


「「うん! 美味しかったよ! それに、可憐ちゃんから貰うものだったら『大智君』、どんな物でもきっと喜んでくれるよ! だって! 可憐ちゃんと大智君! 幼馴染だもんね! 美男美女でお似合いだよぉ〜!」」


 可憐とは、少し離れた窓側の席に座っている『猿渡大智』が軽く咳き込んだ。


『もぅ〜やめてよぉ〜! あ、うん……美味しかったなら良かった!』


「ん?。今……」


 彼女佐山の声のトーンが一瞬だけ沈んだのを、俺は聞き逃さなかった。


 因みに、話題に出てた "大智" ……猿渡大智さわたりだいちとは、このクラスにおける男子クラスカーストのトップに君臨している人物だ。


 陰キャでフツメンの俺とは対照的で、陽キャでイケメンな上、おまけに頭もよくスポーツ万能さながら、女子人気は非常に高い……。


 はっきり言って、この二人は俺とは別世界の住人であり、一生関わることがない人種……。


 それがまさか、『佐山可憐』、『猿渡大智』のこの二人によって俺の約束された安寧の日々が崩れさっていくことになるとは、この時の俺はまだ想像もしていなかった。


 to be continued……。


 ♢


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