黒騎士
宙灯花
第1話 黒騎士
だが
どこにでもある西部の町の酒場だ。正面に木製のカウンターがあり、その背後の棚には
店内には丸い木のテーブルが三つと、それを囲む椅子がいくつか置いてある。椅子のひとつは破壊されて、その近くで店主の老人が倒れている。天井から吊り下げられた裸電球が、柔らかな光で店内を照らしていた。
両開きのスウィングドアの向こうで、乾いた風が口笛のような音をたてている。巻き上がる土ぼこりと共に丸まった枯れ草が転がり、ときおり通りすぎる馬車のひづめの音が、うらぶれた町角の夜道に
だが、実はここは、鉄筋コンクリート造りの四階建てビルの三階だ。
「いいから、酒を出せ」
店主を突き飛ばし椅子を投げたのは、三人組の男たちだ。みな若い。ハイカットのスニーカーを履き、ブルージーンズにロック柄のTシャツを着ている。肩に
ウェストサイドのミュージカルを安っぽくしたような
店員はカウンターの前に立っている若い女の子だけだ。
ディアンドル、と呼ばれるチロル地方の民族衣装をまねたものだろうか、白いブラウスの上に胸もとの大きく開いたライムグリーンのワンピースを着ている。
「あんたら、飲むだけ飲んで払わないじゃないか」
土ぼこりの浮いた木の床に転がっている老人が、必死にうったえた。
「カネが入ったら払ってやるよ」
「そう言いながら何週間経ったと思ってるんだ。それに、あんたらが来てから常連さんたちが寄りつかなくなってしまった。この町から出て行ってくれないか」
「なんだと」痩せて背の高い男が眉を寄せて立ち上がった。赤いジャンパーには
黄色いジャンパーの男が、奇妙な笑い声をあげながらテーブルを蹴り倒した。大きく腹が出ている。刺繍は
「たのむよ、店の中で暴れないでくれ。他にも客はいるんだ」
「おっさんがカウンターにひとりで座ってるだけじゃないか」
ロッソは黒騎士の方に一瞬だけ視線を流した。
「大事な店なんだ」
「うるせえ」
ブラウは腰のホルスターからニューナンブM60を引き抜き、銃口を老人に向けた。
「グリューネローゼ、伏せなさい!」
老人は店員の女の子に叫んだ。
「おじいちゃん……」
「お巡りさん用の威力の小さい銃だが、当たればそれなりのダメージはある」
「よく知ってるじゃないか、じいさん」ブラウが口もとを歪ませた。「本当はSAKURA M360Jが欲しいんだ。だから、酒に使う金がないんだよ」
「そんな、身勝手な。しかも、なんで賢者に
「なにを言ってるのか分からないが」ブラウはM60に口づけした。「おまえ自身で確かめてみるか、コイツの素晴らしさを」
男たちの口元に凶暴な笑みが浮かぶ。
「おい」
黒騎士の低く
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