幕間(涼風 雪 視点)①「なんでもは知らないわよ。知ってることだけ。」
結局のところ私の本質は戦隊ヒーローやどこぞのライダーに憧れる少年と変わらないのだ。
私のイデアというものがあるとしたら、きっとそういった純粋無垢なものなんだろう。
――――私は元々空っぽであった。
両親の仲が悪いのは幼いながらも薄々感じていた。いや、仲が悪い、という言葉は正確では無い。恐らく、最初から壊れるような「仲」なんてなかったのだろう。
私は両親に興味を持たれなかった。
自分の世話は全て自分でした。
本来は子供の道標となるべき親がこんな感じだったので、私はどう生きたらいいか。何になればいいか。全く分からなかったのだ。
―――きっかけは確か小学生の頃、偶然見たアニメ。
「なんでもは知らないわよ、知ってることだけ。」
そう言う彼女は非常に知的で、魅力的に見えた。
「ただの人間には興味ありません」
そう言う確固たる自我を持っている彼女に、強く憧れた。
「上手くやれと言っているんだ。敵対でも無視でもなく、さらっと無難にやり過ごす術を身につけたまえ。それが、社会に適応するという事さ。」
そういう彼女はまさに私の理想とする『大人』そのもので、私の道標となった。
「正常位じゃ誰もイけねえんだよ、ロック。」
当時は正常位の意味は分からなかったけど、自分の正義と思想に自信を持って悪を蹂躙する彼女をかっこいいと思った。
――私は、彼女達のようになろうと決心した。
確固たる自我を持って行動し、知的で不思議なな雰囲気で溢れ、人の心を導き、悪にすらなれる存在。それが。私の目指す道であった。
だが、当然私は凡人であった。そんな、さながら「みんなが憧れるアニメキャラクター」になんぞ普通はなれないだろう。
だから私は努力した。死ぬほど努力した。私は努力せずに成○川さんやラ○ト君、羽○さん、ほう○るのようになれる程の圧倒的な才能は持ち合わせていなかった。
「小中は義務教育だから行かなくてもいいか。」
そう思い、私は小学校4年生から中学卒業まで1日も学校に行かなかった。
家でひたすら勉強していたのだ。
当然参考書代など親が出してくれるわけないので、恥を承知で時々学校に行っては兄姉がいる人たちに土下座する勢いで「兄姉の使ってない参考書があったら譲ってくれないか」とお願いした。
「不登校の人には優しくしてあげないと!」みたいな偽善からなのだろうが、みんな快く参考書を譲ってくれた。
先生にも頼み込んで、もう読んでいない本などをもらい、起きている全ての時間と労力を勉強と活字に生かした。
そんな生活を6年送っていたらどうなったか。
自分で言うのもなんだが、まあアニメキャラに片足半分突っ込んでるレベルにはなった。
中学3年生で受けた無料の全国統一模試では2ミスで2位と50点差程つけての圧倒的1位。当然塾からも特待生として勧誘がきたが、入学金が払えずに入れなかった。
高校は県内ではトップの私立校に進学しようとした。
「学校に行ってないとなると調査書が酷い点数なのでは…?」
そういう疑問はもっともだが、そんな些事、圧倒的な点数でねじ伏せればいいだけの話だ。
まあ当然のように首席合格。答辞はめんどくさいなーとか思ってたら、当然のように生活態度が良かった子に任せられた。恥ずかしい。
アニメの舞台の宝庫、高校生活。これからは学校に毎日行って、最後は先生から「リア充爆発しろー!」なんて言われる高校生活をエンジョイするんだ!
問題が起きたのは第一回目の某残酷全国模試の時だった。圧倒的な1位に君臨してしまったのだ。
それに加えて高校の授業はひたすら退屈であり、内職か寝ることしかやることがなかった。
そんな私が腫れ物扱いされるのにそう時間はかからなかった。
「努力しないで勉強ができる天才」
「化物」
「調子に乗ってる生意気なやつ」
というのが私の評価だそうだ。陰口というものは案外本人の耳にも入るものなのだ。
友人もいつの間にか離れていき、希望に満ち溢れた高校生活はすぐに退屈なものへと変化した。
しかし、高校は義務教育ではない。最低限の出席日数を確保しなければならなかった。
私は出席日数と青春への一縷の希望のために高校へ通った。
授業中は寝るか保健室、他の時間は1人で過ごす。そんな青春とはかけ離れた高校生活を私は過ごしていた。
私の本質はヒーローに憧れる純粋無垢な少年、と表現したが、少し綺麗に表現しすぎた。
言い換えれば、「究極までこじらせた変人女子高生」である。
――そんな私が「彼」の存在を認知したのは、高校2年生に入ってからだった。
-------------------
読んで頂きありがとうございます!
本当は、幕間(各人物視点の話)はストーリーが全部終わってから公開する予定でしたが、さすがに3ヶ月更新無しとなると私の数少ない読者様方に失礼だと思ったので、とりあえずいきなり出てきてキャラ付けが浅い涼風の話を1部公開することにしました。
…え?なんでストーリーが全部終わったあとに公開しようとしてたのかって?
だってみんな、好きでしょ。ざまあされる側とか被害者の身近な人の視点。
ストーリー終わっても小出ししていけばみんな離れないで読んでくれるかなーって…。
さてさて、今回はヒロイン涼風ちゃんのお話でした。
「普通の人がたった6年でこんな頭良くなる…?現実離れしすぎでは…?」
と思った人も多いでしょう。結論。知りません。だって涼風ちゃん常人じゃないですし。涼風ちゃんみたいな生活送ってた人なんて「多分」居ないと思いますし。(いたとしても1人か2人とかそのレベルでしょう。)
本文中でめちゃくちゃサラッと「起きている全ての時間を勉強と活字に生かした」とありますように、涼風ちゃん、まじで勉強と読書しかしてません。常人なら2年目でメンタル壊れてます。
普通の人なら、小学生範囲なら半年~1年、中学範囲なら1年、高校範囲なら2年~3年くらいで極められると思います(本当に勉強しかしていない場合)。
結局涼風ちゃんは中三末期時点で、大学の普通の論文読める程度に進化してるという学力の設定です。
あと涼風ちゃんがここまで両親に冷遇されている理由は割とすぐ分かると思います。ここはそんな重要じゃないやつなので、あんま気にしないでください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます