第61話 視聴者さん参加型配信前にちょっとやってみよう配信2
“どの辺で採取するんですか?”
「そうですね。本番の方も今日も。なるべく満遍なく、いろいろな物が揃っている場所を選ぶつもりです」
“じゅあ、向こうの草ばっかりの場所とかはなしか”
「そうですね。もちろん素材によって、多い少ないはあるでしょうが。たくさんの物がある場所から1つの物を見つけるって、けっこう大変なんですよね。ちょっと見てください」
俺が指した場所を晴翔が映す。そこは草が多く生えている場所で、花は2種類、少ししか生えていない場所だ。
「例えばあの場所で、たまたま選んだカードが黄色い花だったら? 予想なんかしなくても皆さんすぐに、何本花が生えているか分かってしまいますよね」
“確かに”
“5本って、見た瞬間に分かる”
“今のは予想とか、そういうレベルじゃないもんな”
「それだと、せっかくのプレゼントがかかっているゲームなのに。ドキドキ感も何もなく終わってしまって、面白くないですよね。なので、本番もいろいろな物がある場所で、ゲームをする予定です」
“うん、面白くない”
“いろいろな物がある場所の方が良いな”
“分かりました!!”
“OKです!”
“いやぁ、今から楽しみだ”
「あー、それと。難易度が上がると思うので、その辺は気をつけてくださいね」
“難易度が上がる?”
“それはまぁ”
“今例えで見た場所からは、そりゃあ難易度は上がるわな”
“うん”
“それは分かってるから大丈夫ですよ?”
“みんな、しっかり何がどれくらいあるか見極めて予想しような”
「いえ、俺が言っている難易度は場所の事ではありません」
“え? 場所じゃない?”
“じゃあ何の難易度のことだ?”
“途中で生えている物が変わるとか?”
“ダンジョンだから急に生成もされる事もあるもんな”
「あ、それもありますが、そちらはそんなに影響はないと思います。というか、皆さん忘れていませんか? 俺達の方にはブーちゃんがいるって」
俺がそう言うと、一瞬コメント欄静かになった後、すぐに大騒ぎになったよ。
“あー!!!!!!”
“そうだ! ブーちゃんも探すんだ!!”
“予想しても、ブーちゃんが動くか動かないかで、変わってくるじゃん!!”
“何で忘れてたんだあー!!”
“めちゃ難易度上がるじゃん!!”
「そうです。もしも予想ができる20分間までに、ブーちゃんが動いていなかったのに。予想受付終了してから最後の10分で、ブーちゃんが動いたら? かなり結果が変わってくると思うので。ブーちゃんでだいぶ難易度が上がります」
“あちゃー!”
“何で忘れてたんだ”
“完璧忘れてたよ”
“これは難易度MAXだぞ”
“プレゼントが遠のいて行く!!”
「ですので、今日の練習はその辺も含めて、皆さん予想してみてください。さぁ、ここが今日、ちょっとやってみようの会場です」
話しているうちに、そして視聴者さんに最悪な情報を得たと同時に、今日のちょっとやってみようの場所に到着した。ここは花も草も満遍なく生えている場所で、しかも湖もあるので、本当に色々な物を集められる場所だ。
“思ったより広いな”
“あー、ブーちゃんショックが”
“広さよりもブーちゃんの問題が大きくて”
“ブーちゃん、ずっとおんぶで寝ててくれないかな”
「ははっ、さすがにそれだと俺が持ちませんよ。では、ショックがまだ続いているかもしれませんが、さっそくやってみましょう。まず今日最初に探すのは、こちらの薬草です」
俺は採取しにきた薬草を、視聴者さんに見せる。良く知られている薬草で、色々と使い道があるから、ちょくちょく採取しにくるんだよ。どのタイプのダンジョンにも生えているんだけど、草原タイプのダンジョンが1番生えている。
“あの薬草か”
“その辺に良く生えてるやつな”
“見た感じ、かなり生えてるね”
「それでは今から時間を計ります。ちなみにいつもラビ達が採取している量の平均を、ヒントとしてお伝えしますね。ただあくまで平均ですからね。それと答えの数は、それを参考に出しています。1番から5番まであるので、予想した数と1番近い数が書かれている番号に投票してください。良いですか?」
“はい!!”
“OKです!!”
“おっ、ラビたん達、やる気満々”
“くそ、とりあえず予想するぞ!”
“まずはラビたん達の様子見だな”
“その後にブーちゃんだ”
「ではいきます。……スタート!!」
俺の合図とともに、ラビ達が薬草を探し始めた。視聴者さんもコメント欄で話し合いながら、そしてラビ達の様子を見ながら、予想を立てていく。
が、まさか最初から予想外のことが起きるとは、俺も考えていなかった。
この場所についてから、すぐにブーちゃんをおんぶから降ろして、その辺に寝かせておいた。そしてゲームがスタートしてから5分くらいはそのまま寝ていたんだけど。
いつの間にか起きて、俺の隣までくると、わざわざ俺の隣で仰向けになり、また寝る体勢になってさ。
この時俺は、何で今日はわざわざ、俺の隣に? くらいにしか考えていなかった。が、仰向けに寝てから数秒。いきなりブーちゃんがゴロンゴロンと転がり始めたんだ。
最近は転がるのが上手くなって、家の中で時々転がっていたんだけど。まさかここでそれをやるとは。突然の事にかなり驚いた。
“ええ!?”
“ブーちゃん転がってる!?”
“初めての動きだ!!”
“緊急配信依頼の大きな動きだぞ!!”
“みんな、予想は一旦中止だ。これは先に見ておかないとだぞ!!”
ブーちゃんの動きに盛り上がる視聴者さんと、どんどん転がるブーちゃん。クーちゃんの隣を過ぎ、ププちゃんも通り過ぎていく。そしてラビの所まで行くと、今度はUターンをはじめて、俺の方へ戻り始めた。
と、ブーちゃんが近づいてきて俺は気づいた。ブーちゃんの体の色が緑になってる? って。気のせいじゃないよな? 何だ、どうして緑なんだ? そう思いながらブーちゃんを待つ。
そうして数秒後、俺の足元でピッタリ止まったブーちゃんは……。今探している薬草が、身体中に付いている状態だった。
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