第25話 今日こそ俺はゆっくりまったりするぞ!!

『ピュッピュウ、ピュピュ~♪ ピュルルル~♪』


「お~い、チョコ~? どこだぁ?」


『ピュッ!? ピュピュッ!!』


 シュッ!! サッ!!


「お~い、チョコ~?」


『キャンッ!!』


「何だ、こんな所に居たのか! さぁ、そろそろ時間だから帰るぞ。また遊びにこような。ここのダンジョンならいつでもゆっくり遊べるから」


『キャンキャン!!』


 スタスタスタ……、……、……。


『ピュウ? ピュ? ……ピュ~』


        === === === === === === === ==== === === ===


「ようし、みんな後は自由に遊んでくれ。俺も自由にこの辺でゴロゴロしてるから。まぁ、後で少しだけ素材を採取してるかもしれないけど。それでもここからはあまり動かないから。何かあったら、すぐに戻ってこいよ」


『きゅい?』


「遊ばないのかって? 俺は今日ゆっくりするって決めたんだよ」


『ぷぷ~』


「ゆっくりしたら遊ぼうって? だから遊ぶんじゃなくて、ゆっくりするの。ほら俺の事は良いから遊んでこい」


『きゅうっ!! きゅきゅきゅ!!』


『ぷぷ~、ぷ~ぷ。ぷぷ!!』


 向こうの花が沢山咲いている方へ走って行くラビとププ。最後に言い残していったのは、だから! ゆっくりしに来たんだから、ゆっくりが終わったら遊ぶ!! ボールが良いなぁ、新しいボール。後で遊ぼうね!! だった。ダメだ、分かってない。


『にゅにょお』


 俺達の話しを聞いていたブーちゃんが、俺の隣でニヤリと笑いながら鳴く。その表情は、へっ、ちゃんと説明できないで、遊ぶことになってるよ、と表情がものがたっていて。


「何だよ、分かってるんだったら、お兄ちゃんのお前がラビ達に教えてくれよ」


『にゃ~う、にゃにょおぉぉぉ』


 何でだ? 俺はもう寝る。そう言い、俺の横でゴロンと仰向けになると、すぐの寝始めたブーちゃん。いやいや、魔獣同士の方が、しっかり伝わるかもしれないんだから、お兄ちゃんのブーちゃんがラビ達に話してくれても良いだろうよ。


 はぁ、と俺はため息を吐き、メールをチェックする。すると晴翔から連絡が来ていて。後1時間ほどで、今俺達がいる場所へ着くそうだ。


 俺達が今日来たのは、ダンジョン中でも珍しい。いや、世界でもそんなに見つかっていない。基本危険とされているダンジョン。だがそうとは思えない程、平和で皆がゆっくりと過ごせる、珍しいダンジョンに俺達は来ているんだ。

 

 なぜこのダンジョンに来たのか、疲れを取るためだ。まったく、あの大食い選手権はかなり疲れたからな。

 それに昨日、俺達が配信した物をチェックしていたら。協会で会った沼田んだが言っていた通り、俺の家に遊びに来て、相手をさせられる事に。


 それでさらに疲れた俺達は、急遽このダンジョンに来て、ゆっくりしようと決めたんだ。

 ただ晴翔は、家族に何かを手伝ってから行けって言われたみたい、ダンジョンで合流する事になっている。


 どんな風に平和でゆっくり過ごせるダンジョンなのか。ここには魔力が沢山満ちているわりに、何故か強い魔獣、C級以上の魔獣がおらず。しかも居る魔獣も全て、人も魔獣も襲わない。少食の魔獣ばかりが住んでいるんだ。


 そして今回ダンジョンは洞窟タイプなんだけど。地面は全て土と草で覆われていて、そこら中に花畑が広がり。これが本当にダンジョンかと思われるほど、和やかな景色が、洞窟の最奥まで続いている。


 ラビ達も離れて遊んでいても問題はない。まぁ、一応協会から、いくら心配のないダンジョンでも何かあったらと、数人の監視員が定期的にダンジョン内を確認して回っているけど。


 俺はシートを出し、寝始めたブーちゃんの隣に敷くとゴロンと寝転がり、ブーちゃんのお腹を借りる。するとすぐに文句の鳴き声が。


『にゅにょおぉぉぉ』


「良いじゃないか、少しくらいお前の気持ちいいお腹で休ませてくれよ。昨日そのためにお前のブラッシングを念密にやってきたんだから。それで今日はお前の毛もそんなに飛ばないし」


『ブー、ブー』


「……おい、今文句を言っている最中だったよな? その最中に寝るか!? はぁ、まぁ良いや。さてと、ラビ達はどうしてるかな?」


 寝たままの姿勢で、ラビ達が走って行った方を見る。そこには上手にボールで遊んでいるラビとププちゃんの姿が。


 3匹の中で1番最後に家にやってきたププちゃん。ププちゃんの登録をするために、初めて協会へ行った時、ついでに買い物もしたんだけど。その時ププちゃんが1番興味を示した場所が、魔獣達用のおもちゃが置いてある棚だった。


 それで気に入った物があるなら、家族になった記念で買ってあげようと思って、ププちゃんに何が欲しいのか聞いたら。

 自分達の色、ラビの毛の色は基本白で、ブーちゃんの毛の色は黒、ププちゃんの体の色は水色なんだけど。


 その色と同じ、白、黒、水色の、サッカーボールと同じくらいの大きさの、ボールのセットが欲しいと言ってきたんだ。だからそれを買ってあげたら大喜びで。ずっと大切にこのボールで遊んでくれている。

 そろそろボロボロになってきたから、新しい物に変えてあげようと思っているんだけどな。


 ラビ達が大丈夫なことを確認すると、俺はぼけっと天井を見上げる。さすがにダンジョンで寝るなんてことはしないけど、こういうまったりな時間があったって良いだろう。晴翔も来たら、一緒にゴロゴロすれば良いし。


 が、なんて思っていた1時間後、俺は強制的に動かされる事になり、しかもそれが原因で、新たな出会いがあるとは、この時の俺は考えてもいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る