第23話 肉だ肉肉!! 今日は肉の日配信だ!! 2

「ゴホンッ。あー、転がってしまいましたが、この様子だとブーちゃん、今日も動いてくれるかもしれません」


「あ~、タク」


「何だ?」


「立てないから起こしてくれって言ってるんじゃないか?」


 再びブーちゃんを見る俺。ブーちゃんは俺が自分を見たことに気づき、手足をバタバタさせ少しだけ体を傾けた後、元の体勢に戻るを2回繰り返して止まった。そしてひと言。


『ぬにゃあぁぁぁ』


「おい、いつも仰向けで寝ていても、自分でいつの間にか起きているだろう。自分で起きれば良いじゃないか。俺は今、下処理をするために軍手をしてるんだよ。自分で起きてくれ」


“そうそうブーちゃん、1匹で起きようねw”

“あの短い手足が何とも言えんw”

“ブーちゃん、可愛いなぁ”


 俺はブーちゃんを無視して、ストーンバッドの下処理を始める。ストーンバッドは基本、人間でも皮と牙以外は全てを食する事ができる。まぁ、あんまり美味しくはないが。

 だけど魔獣達にとっては、美味しい魔獣に入るらしい。だから綺麗に下処理をして、いろいろな魔獣の料理に使っている。


 ただ、この皮を剥く時が1番大変で。背中部分はダンジョン産の素材を使った、かなり丈夫な包丁でも、傷1つ付けることもできないほど硬いため、なんとか包丁が入るのはお腹部分を狙う。そしてその作業に慣れてくれば、1匹5分くらいで皮を剥ぐ事ができるようになる。


 俺も最初の頃は、1匹下処理するだけで、30分以上かかっていた。それなのに魔獣達は普通にストーンバッドを食べているんだから、まったく魔獣達の歯はどうなっているんだか。ププちゃんの攻撃だって凄いよな。簡単に貫通しちゃうんだから。


 ただ今言ったとおり、ププちゃんの攻撃が貫通していようが、背中側が切れていようが、そこから剥く事が難しく、やはりお腹部分を大きく切ってからじゃないと、綺麗に皮を剥ぎ取る事ができない。


「こうしてお腹で1番柔らかい場所を手で探していきます。ストーンバッドによってそれぞれ違うので、これも慣れるしかありませんが。1つの方法として、トンカチや棒などで叩いてみても良いです。このストーンバッドで説明しますが……」


『みにょおぉぉぉ』


『きゅい! きゅきゅ』


『ぬにょおぉぉぉ』

 

『ぷぷ? ぷぷぷ~』


「煩いぞお前達!! ……くっ」


 俺はブーちゃん達の方を振り向く。そしてその現状を見て、仕方なく軍手を外しブーちゃんの所へ。俺が見たのは、ラビとププちゃんがブーちゃんの手を引っ張り、なんとか起き上がらせようとして、逆に尻餅をついた姿と。


 次に背中を押して起き上がらせようと、なんと背中と地面の間に手を入れたまでは良かったが、逆にラビ達の手が挟まれて、引っ張っても出せなくなり、助けを求める姿だった。


“www”

“誰か止めてくれwww”

“笑いすぎて死ぬwww”

“w”

“w”

“後ろが気になって、説明が頭に入らんwww”

“やっぱりこれ、ブーちゃん配信回だろwww”


「ほら、俺が起こしてやるから。というか抱っこしてやるから」


 俺がブーちゃんを抱き上げれば、手が自由になったラビ達がホッとした顔をして、細目でブーちゃんを睨んできた。そして俺といえば、そこら辺からちょうど良さそうな台を持ってきて、そこにブーちゃんを寄りかからせてやったよ。


「これで良いだろう! まったく、お前のご飯にもなるんだから、少し静かにしていてくれ!」


『ぬにょおぉぉぉ!』


「静かにしているって? 邪魔してるだろうが!」


『にょおぉぉぉ!』


「鳴いてない? いやいやさっきは鳴いていたし。今は動作が煩いんだよ」


「おい、タク、配信中だぞ」


 俺はバッ!! と振り向く。そして慌てて咳払いすると、まずすぐに謝った。


「みなさん、お見苦しい所をお見せして申し訳ございません。さぁ、ブーちゃんはそのままに、配信を再開しますね」


“いや、ブーちゃん配信でも良いですよw”

“それとも家族喧嘩配信はいかがでしょうか?”

“www”

“家族喧嘩配信は草”

“他人の家族喧嘩なんて見てもだけど、ブーちゃん達ならありだなw”

“ブーちゃん、お肉いっぱい食べられるから、少し静かにしてようねw”

“保護者は今日も大変だw”


 おい、このままじゃ本当に、家族喧嘩配信になるぞ。ここから挽回しないと。


「では、先程の続きから。先程、トンカチや棒で叩いてみても良いです、と説明しましたが。今から実際に叩いてみましょう。今俺の前に出してあるストーンバッドでやってみます。今回は先に俺が柔らかい所を探しますね……と」


 俺は軍手を付け直し、ストーンバッドのお腹を触り、1分もしないうちに硬い部分と柔らかい部分を確認した。


「慣れてくれば、これくらいの時間で、探す事ができますよ。では、最初に硬い部分をトンカチで叩いてみましょう。みなさんはよく音を聞いていてくださいね」


 俺がお腹の硬い部分を叩くと、バシバシッ! と音がした。


「では次に、柔らかい部分の音です。こちらです」


 同じトンカチで、同じ力で叩いてみる。すると今度もバシバシッ!! という同じような音がしたが、今度の方が少し低い音のバシバシ音だった。


「どうでしょうか? 違いが分かりましたか?」


“確かにちょっと違うような”

“なるほどなぁ。軽い方が硬いってことか”

“それでも今はこうして、教えてもらっているから分かるかもしれないけど”

“ああ、自分で実際にやったら、分かんないかもな”


「そうですね。これも慣れですから、もしも家族の魔獣が、ストーンバッドを食べる事が好きなら、ぜひ覚えて手作りご飯を作ってあげてください」


“うちの子、好きだから作ってあげたいな”

“慣れだ慣れ、頑張れ!!”

“ファイトです!!”


「頑張ってくださいね! 俺も最初は大変でしたが、今ではかなりの速度でできるようになりましたから」


“家族に邪魔されてもねw”

“保護者は新たなスキルを手に入れた!”

“邪魔され回避レベルが2になった”

“www”


 ……そんなスキルがあるなら、是非とも手に入れたいものだ。

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