第18話 ププちゃんの戦闘配信?3

「では、今日の【もふっとチャンネル】配信はここまでです。皆さんいかがでしたでしたか? 今日採取した物に関しては、別の機会に配信しようと思っています。是非、そちらの配信もご覧ください」


“……それで?”

“あれ? 終わり?”

“いつもの可愛いププちゃん達は見られたけど……”

“ププちゃんのダンジョン大好きってのは?”

“何かあるんじゃなかったの?”


「と、いつもならここで、みんなで挨拶をして終わりなんですが。ここからはダンジョン大好き? 戦闘大好き? ププちゃん配信に切り替わります!」


“待ってました!!”

“ププちゃんの時間だ!!”

“ププちゃん、今まで我慢頑張ったね!”

“さぁ、ププちゃん、暴れる時間だぜ!!”

“何々?”

“戦闘配信?”

“このチャンネルって、まったり配信じゃなかったの?”


 コメント欄が盛り上がる中、俺達は荷物を洞窟の壁の方へ移動させて、ププちゃん達が自由に動きやすいようにしてやる。もちろん荷物の隣にはブーちゃんを置いた。と、置いた瞬間目を覚ましたブーちゃん。


『にょおぉぉぉ~』


「何だ、起きたのか? お前よく寝てたなぁ。もう採取は終わって、ププちゃんの遊びの時間だぞ」


『にょお? にょおぉぉぉ!』


 ゆっくりと起き上がるブーちゃん。そして数歩だけ歩き、俺の隣に陣取った。ここからププちゃんを応援するらしい。ラビはププちゃんの後ろの、少し離れた場所に陣取った。何かあった時に、ププちゃんを手伝うためだ。

 もちろん俺もすぐに動けるようにしている。これからププちゃんがやろうとしている事のためにな。


「すみませんが、詳しい話しは後ほどしますね。ププちゃんが待っているので」


“何だろう?”

“何するの?”

“後で話してくるって”

“まずは可愛いププちゃんを見よう”

“そうそう、その方が良いぞw”


 視聴者さんに伝えた後、ププちゃんに声をかける。


「よし、ププちゃん良いぞ! ラビ、頼むな!」


『ぷぷっ~!!』


『きゅいっ!!』

q

 俺の声に、ププちゃんが洞窟の奥へと、ジャンプしながら凄い勢いで移動し始めて、すぐに見えなくなる。

 少しの間静かになる洞窟の中。少しすると、ププちゃんが消えた洞窟の奥から、キィキィ、キーキーって感じの、機械音みたいな音がたくさん聞こえて。


 そして音が聞こえると、ププちゃんがニコニコしながら、洞窟の奥から戻ってきた。ある魔獣達と一緒に。


「晴翔、くるぞ!! もしあれだったらカメラはすぐ置けよ! 今日は量がいつもより多そうだ!!」


「分かった! タク、お前も気をるけろよ!! ふっ、まあ、引き連れてきたもんだ」


 ププちゃんが引き連れてきた魔獣。それはコウモリに似ているストーンバッドという魔獣だ。大きさな猫と同じくらいで、石を好んで食べる魔獣だが、人や魔獣の血も好物で、よく団体で襲ってくる。

 今回ププちゃんが引き連れてきた、ストーンバッドの数は150くらいか。


“うわっ!? 何だよあの量!”

“わわ、ププちゃん見つかっちゃったの? 逃げて!!”

“待て待て、慌てるなってw”

“あれ、わざとだからな”

“は?”

“だからわざとなんだよw”

“あれはププちゃんがわざと、ストーンバッドを引き連れてきたんだ”

“あ? 何でそんな事を?”

“それはププちゃんが、戦う事が大好きだからだ”

“え?”

“???”


 コメント欄が盛り上がる。そんな中、ラビの少し前まで戻ってきたププちゃん。そして……。


「皆さん、ププが動きますよ!!」


 俺がそう言った瞬間、大きく飛び跳ねたププちゃんは、畑の水撒き時のように、水魔法を使った。が、水撒きと違うのはその威力だ。

 水撒きは噴水みたいで綺麗だって紹介したけど、今は水玉が鋭い形に変形し、物凄い勢いでストーンバッドの方へ飛んで行って、一気にたくさんのストーンバッドを倒した。


 だが倒したと言っても、まだまだストーンバッドはたくさんいる。と。次の攻撃に移るププちゃん。


 今度はジグザグに飛び跳ねながら前に後ろに動き、さっきの攻撃よりも、少し大きな水玉を作くると。近くにいるストーンバッドから、次々に倒し始めた。ここで4分の1を倒すププちゃん。


 だがププちゃんは止まらない。次はわざとストーンバッド達から離れ、遠くから的うちのように水玉をあってて倒し。またまた次は自分の体の一部分を伸ばし、剣のような形を作ると、次々とその水剣でストーンバッドを倒した。


 そんな色々な技を繰り返すププちゃん。時々群れを離れたストーンバッドを、ラビが攻撃して倒す。が、ププの手伝いはププが手伝ってというまでは、いつも絶対に手伝わない。

 まぁ、今日は調子が良さそうだから、ラビの手助けはいらないだろう。はぐれストーンバッドを倒す以外は。


 こうして攻撃を続けたププちゃんは、10分後。見事に全部のストーンバッドを倒す事に成功した。汗はかいていないはずだけど、俺達人間の真似をして、汗を拭く仕草をするププちゃんの表情は、大満足、やりきったという表情だった。


「皆さんお待たせしました。ププちゃんの戦闘遊びが終わりました」


“?”

“へ?”

“戦闘? 遊び?”

“え? あれププちゃんなの?”

“本物のププちゃん?”

“www まぁそうなるわな”

“あれはいつものププちゃんで間違いないよw”

“今のはププちゃんの遊びなんだよ”

“まぁ、遊びって言ったら何だけどw”

“お~い、現実に戻ってこいよw”


「ププちゃんですが、実はププちゃん。ラビ達の中で1番年下の、まだまだ小さなスライムですが。3匹の中で1番好戦的なのがププちゃんなんです。色々な技を使って敵を倒すことが好きで。時々洞窟に来ると、こうして戦闘遊びをするんです。初見の方は驚いたと思いますが、これで戦闘遊び配信のことを分かってもらえたかと」


“そうだったのか”

“なるほど、ププちゃんにしてみれば遊びなんだな”

“だけど俺達みたいに知らない人たちが見れば、戦闘配信になるってわけか”

“まさか、あんなに可愛いププちゃんが戦闘好きだったなんて”


 ププの戦闘遊びを見て、ププちゃんが大好きな視聴者さんは、どう思っただろうか。もしかしたらやっぱり魔獣だと、怖がってしまっだろうか? 今まで何回か配信をして、残ってくれている視聴者さんも多いけど……。と、俺の心配は杞憂に終わった。


“やだ~、可愛くて強いなんて!!”

“ププちゃんサイコー!!”

“あんなに満足な顔して、楽しかったんだね、良かった良かった”

“ププちゃん、カッコいー!!”

“俺を撃ってくれ!!”


 いや、怪我するから。下手すると重症だからやめとけって。コメント欄にはププちゃん大好き、最高、また見せてね! など、ププちゃんの大好きなコメントで溢れて。


 こうして、ププちゃんは怖がられることなく、さらにファンを増やす事になったんだ。


     ============================


「うひひ、うへへへへ。何よこれ、こんな楽しい話しをしてたなんて。たまたま別の所を見ていて気づいたから良かったけど。まったく、私や先輩を差し置いて、楽しもうだなんて。そんな事させないわよ。そうね、もう少しだけ様子をみて、あれの計画を始めた方が良いかもしれないわ! うひひひ、うへへへへへへ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る