第5話 管理する協会、そしてスキル

「で、晴翔、最近どうだよ。拓哉に対する周りの目もだいぶ変わったんじゃないか?」


「どうなんだろうな? その辺あいつはあんまり気にしてないから」


「はははっ、相変わらず魔獣中心の生活か。まぁ、お前も人のこと言えないだろう? その買い物袋、ラビ達のに、他の連中の物も入ってるんだろう?」


「当たり前じゃないか! 俺もお前の頼みじゃなかったら来てないさ。本当だったら今もみんなをもふもふ……」


「分かった分かった、呼び出して悪かったよ。じゃあ支払いはできてからで良いんだな」


「ああ、大体2週間くらい考えておいてくれ。ちょと今、注文が立て込んでてな」


「お前の所のご飯は、うちの連中も大好きだからな。今回も催促が凄かったんだよ。じゃあ頼むな」


「おう! じゃあな! と、電話しておくか。……もしもし?」


『もしもし? 何の用だった?』


「牙ネズミのローストビーフを作って欲しいらしい。最近進化して、食事の好みが変わったから、色々試してみたいんだと」


『なるほど。じゃあ今度その辺もまとめて作ろう』


「どうする? 今日あれば買って帰るか?」


『そうだな。どうせ他も作らないといけないからな、そうしよう。車で来られるか?』


「ああ、じゃあ待っててくれ。すぐに行く」




 数十分後、晴翔が俺の家に到着し、俺達は協会へと向かった。協会とは、俺達のようなダンジョンに入る人々や、ダンジョン関係の仕事をしている人達の、登録と管理をしている場所だ。


 様々な課があって、俺達がよく使うのは魔獣課と生産課、後は新種の物を発見したり作り出したりした場合、調べたり申請したりできる新種専門課かな。他にも時々別の課を利用したりする。


 そして協会では登録管理だけではなく、物品の販売も行っていて。他のお店よりも大量にダンジョン産の物をたくさん取り扱っているため、俺達はよく利用させてもらっている。


 まぁ、品質はピンからキリまでって感じかな。本当に品質が良い物が欲しい時は、別のお店に買いに行ったりするけど。

 今日は大量の材料が必要だったから、協会で買い物をする事にしていた。が、友人からの注文分も増えたため、晴翔には車で来てもらったんだ。


「種も買っていくだろう?」


「ああ、今度畑の配信をするからそれ用にな。ラビの作った野菜の種は、うちにいっぱいあるから良いけど、他が少し足りなくなってる。あとはいつも頑張ってくれてラビ達に、何か買ってやるつもりだ」


「確かに頑張ってくれてるな。最近は準備もてるだってくれるし。それどころか準備する物の品質チェックもしてるからな。この前なんかカメラのチェックまでしてたぞ。で、その時他にいた配信の奴らの機材と比べてた」


「は? まさか。いくら色々な事を理解できるラビ達とはいえ、他の機材と比べたらなんて」


「それが本当なんだよ。今度注意して見ててみろ。かなり細かく比べてたぞ」


 ラビ達が機材をチェック? ラビ達は他の人間達と暮らしている魔獣達に比べて、理解力が良い。これは協会で調べてもらったから間違いはない。

 それに魔獣の中には、契約した人と長く暮らす事によって、完璧に意思疎通ができるようになったり、魔獣のレベルが高ければ高いほど、意思疎通ができやすくなる。


 俺の場合はまだ1番長く一緒にいるラビで1年半だし、ラビ達のレベルがそこまで高いわけじゃないけど、けっこう意思疎通ができるんだよ。が、それでもなぁ。機材のことまでラビ達が分かるかどうか。


 そうそう魔獣との契約だけど。これは人々に与えられたスキル能力の1つで、その名の通り魔獣と契約ができる魔獣契約という能力だ。


 人は5歳を過ぎると、何かしらのスキルを得る事ができる。それは火魔法だったり土魔法だったり、生産系のスキルだったり。

 そしてその5歳の時に得たスキルが、一生変わることなく使う事になるんだけど。まぁ、時々は大人になってから新しいスキルを得ることも。


 また与えられるスキルの数は人によって違って、1~2個の人もいるし、4つや5つ持っている人もいて。訓練を積んでスキルの力を上げていく感じだ。


 だけどどういう訳か、スキルレベルを最大まで上げられるスキルは1つだけで。その他は中級くらいまでしか上がらない。だからその1つのスキルを中心に、自分自身で戦い方を工夫し使う感じだ。


 俺の場合は魔獣契約と火魔法が使える。が、それがメインのスキルじゃない。メインのスキルはようやくレベルが上がってきて、今は下の上って感じだ。世界で誰も持っていない特別なスキルで、協会にも特別登録してある。


 スキルを見る機会があるんだけど、5歳の頃から半分スキル名が隠れていて、どういった能力かいまいち分からず。ようやく分かったのが1年半前だった。それで俺はようやく自分のやるべきことが分かったんだ。

 

 もちろんみんな俺のスキルを知っていて、何回もこのスキルを使って配信もしている。次回は畑の配信が終わってからかな。


「さて、着いたぞ。みんな印を付けているとはいえ、しっかり俺について来るんだぞ。別の場所へ行きたい時は、必ず俺に行ってから行く事。良いな」


『きゅう!!』


『ぷぷぷ~!!』


『みゅおぉぉぉ』


 でしょうね。ラビとププちゃんは、元気よく返事をして、俺の周りを跳ね回っているが。ブーちゃんは俺に、短い手を面倒くさそうに伸ばしながら、おんぶを要求。


「ブーちゃん、ずっとおんぶはできないからな。今日は買う物が多いいんだから、少しは1匹で歩いてくれ」


『みにょぉぉぉ』


 俺の話しを聞いて仰向けに寝て、拒否のブーちゃん。ブーちゃんや、君は結構な重さなんだから頼むよ。




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