第4話 ダンジョンと世界と俺達

「お前も馬鹿だなぁ、配信前に確認してただろうに」


「いやぁ、大丈夫だと思ったんだけどな」


「見事にドロップキックが決まってたぞ」


「だろうな。今でもジンジンしてるし」


「次はドロップキックされないように気をつけろよ。それとお前がクッキーを作ってる間、ラビ達がみんなを盛り上げてくれてたからな。その分今日の夕飯は豪勢にしてやれよ。まったく、本当にどっちが保護者なんだか」


「はぁ。それはそうと、そうだな。片付けが終わったら夕飯でも買いに行くか。お前はどうする?」


「今日は久しぶりに父さんが帰ってくるんだよ。家族で夕飯だから帰ってこいってさ」


「親父さん帰ってくるのか。3ヶ月ぶりだな」


「だから今日は帰るよ。明日は時間通りに。買い出しだろ?」


「ああ、次回は畑の配信をやる予定だからな。必要ならダンジョンにも行かないと」


「だな」


 クッキーを作ったものの、そこまで汚れておらず、片付ける物も少なかったため、すぐに片付けは終わり、晴翔は帰って行った。そして俺はといえば、ラビ達を連れて、夕飯を買いに商店街へと行くことに。


 ラビとププちゃんが俺の周りを嬉しそうにジャンプしながら、そしてブーちゃんは俺におんぶされて慣れた道を歩く。そして商店街に着くと、夕飯前だからか、商店街はかなりの人と魔獣達で溢れていた。


 人間と魔獣が溢れる商店街。俺が生まれた時には、すでにこういう光景は当たり前だったが。この風景が普通に思えるようになるまで、どれほどかかったのか。


 昔の地球には魔獣なんて生き物はいなかったらしい。それが起こったのは80年以上前。突然だったらしい。世界中にダンジョンという物が現れて、世界の人々は混乱に陥ったと。


 ダンジョンていうのは、宝や謎の物など、とても珍しい、もともと地球にはない物がたくさん隠されている場所で。洞窟だったり、高い塔だっだったり、空間だったりと、様々な物がある。そして昔の人々は、その特別なものに惹かれ、次々とダンジョンへ入っていく事に。


 しかしダンジョンの中には、特別な物だけではなく、命に関わるような危険な罠や。魔獣と呼ばれる、もともと地球にはいなかった、とても危険な生き物で溢れていて。その罠や魔獣により、かなりの人々が命を落としたと。


 そして魔獣達は、最初はダンジョンから出てくることはなかったが、時々外にも出てくるようになってしまい。そんなダンジョンや魔獣達を恐れた人々は、どうにかダンジョンを消し去ろうとしたのだが。結局何をしても、どうすることもできず。


 そんな絶望していた人々だったが、ある時を境に、人々はスキルという、特別な能力を授かる事になった。何故それを授かれたのか、どうやれば授かれるのか。調べたが、ダンジョンがどうして現れたのか分からないのと同様に、理由は分からず、今もそれは分かっていない。


 しかしそのスキルによって、人々は魔獣と戦う能力を手に入れ、それからはダンジョン攻略をするように。そしてダンジョンに入った人々がもたらした、ダンジョン産の物によって、世界は大きな発展を遂げた。

 今では全ての人ではないが、ダンジョンに関わりながら生きている。そう社会の一部となったんだ。


 そして恐れてばかりいた魔獣達も、詳しく調べていくうちに、人と敵対する魔獣ばかりではなく、人と良い関係を築く魔獣達もいると分かり。また魔獣に関する素晴らしいスキルの登場により、今ではダンジョンの外で幸せに暮らしている魔獣達もたくさんいる。


 そう、ラビとププちゃんとブーちゃんだけど、みんなは俺がダンジョンで出会った魔獣で、1番長く一緒に暮らしているラビで1年半くらいだ。


 ちなみにラビはフェザーラビットと言われる、うさぎに似ている魔獣で、背中に天使の羽のような羽が生えていて、空を飛ぶ事ができる。大きさは大人で、普通のうさぎの2倍くらいの大きさだ。ラビはまだ子供だから、大人の半分くらいの大きさかな。


 ププちゃんはスライムなのだが、今までに確認されているスライムの種類は100を超え、ププちゃんはその中の、ウォータースライムという水のスライムだ。

 大きさは人の頭くらいの大きさで、水に関する魔法を使う事ができる。それと体を様々な形に変えることもでき、色々な事ができるぞ。


 そしてブーちゃん。ブーちゃんはカプリシャスキャットという、猫に似ている魔獣なんだけど。大きさは普通の猫の3から4倍だろうか。しかもまぁ、言うのもあれなんだけど、みんなボールみたいにまん丸で。体が重いのかあまり動かない。今だって俺におんぶをさせているくらいだ。


 だけど自ら動くとなると、体に見合わずかなりの速さで動くもんだから、俺も最初それを見た時はかなり驚いた。ウサギのように早く動くラビよりも早く、下手をしたら動いている姿がブレるほどの速さだからな。

 だから今日のブーちゃんが動いた時の姿を、視聴者さん達は見る事ができなかったんだ。


 そんないつもは自由気ままに、ほとんど動かないカプリシャスキャットだけど。ダンジョンで出会うのはかなり難しく、少し前までは幻の猫と言われていたほどで。今でもダンジョンから出て暮らしているカプリシャスキャットは、そんなにいない。


 俺の場合は、ダンジョンで俺が作ったお菓子を、休憩がてら食べていたら。いつの間にか俺の側に来ていて、食べたそうにしていたからあげることに。

 そして休憩が終わり、ダンジョンを進んだんだけど、何故かずっと着いてきて。ダンジョン探索が終わり帰ろうとすると何とダンジョンの出口までついてきたんだよ。

 

 どうも俺のお菓子がかなり気に入ったらしく、どうにも離れなかったため、そのまま家族になる事になった。そしてブーちゃんが出歩く時の定位置は俺の背中だ……。必ずおんぶを要求してくる。


 こんな感じで、今ではみんながダンジョンと共に暮らしているんだ。

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