第2話 今日ももふもふスローライフ配信始めます!! 1
『皆さんこんにちは!! 【もふっとチャンネル】の拓哉です! そして俺の大切な家族の、ラビとププちゃんと、メンバーの晴翔です!! 今日も魔獣のための、癒しスローライフ配信、始めて行こうと思います!!』
“お、始まった!”
“こんにちは~”
“今日は何をやるんだ?”
“ラビたん! ププちゃん! 今日も可愛いー!”
“こっち見てー!”
「ほら、2匹とも。カメラの方見てって言われてるぞ」
俺がラビとププちゃんにそう言うと、2匹はすぐにカメラの方を向き、ラビはわざわざ後ろに向き直って、顔だけ振り返り、尻尾をフリフリカメラにアピール。ププちゃんは魔法でハート型や星形の泡を飛ばしてアピールした。その途端ラビとププちゃんのことで溢れるコメント欄。
“きゃあー!! ラビた~ん!! 可愛いぃぃぃ!!”
“可愛い魔法、別のも見せて~!!”
“もふもふのお尻にダイブさせてー!!“
“水魔法で攻撃してー!!”
後半何とも言えないコメントが届いたが、気にしないようにしよう。それにしても見事に誰も俺のことに触れていないな。ラビとププちゃんが人気があるのは嬉しいけど、少しは俺のことも何か言ってくれても良くないか?
何てちょっと思いながら、俺は今日の配信内容について話し始める。
「今日は最近リクエストが多いい、魔獣達が大好きな基本のクッキーを作っていこうと思います」
“そう言えば最近は、新しい人増えたもんな”
“作り方、録画が残ってても、生で見たい人もいるか”
“まぁ、何回見ても良いし”
“こっちも復習になって良い”
“俺のポポちゃんのために、しっかりと見ないと”
“お前のポポちゃんって誰やw”
「ではさっそくやって行こうと思いますが、今回は……」
俺がクッキーを作り始めようとした時だった。俺の家族はもう1匹いるんだが、そのもう1匹が居ないことに、もちろん視聴者さんは気づいていて、そいつについて聞いてきた。
“待って! もう1匹の子は?”
“そうそう、あの自由奔放の子はどこだ?”
“今日は居ないの?”
“なに? もしかして配信に遅刻?”
“遅刻って、どうせ家にいるんだから遅刻じゃないんじゃ?”
“寝てて遅れたら遅刻だろ?”
“いつも何処かしらで寝てるもんな”
”でもいつもは、カメラには映ってるだろう?”
“まさか具合が悪いんじゃ!?”
“ぶーちゃんはどこ!?”
「ああ、違いますよ。いつも通り元気ですから心配しないでください。ただ、あんまり映せない格好をしてるんですよね。でも、そうですね、皆さんには状況を見てもらった方が安心するかな。晴翔、ブーちゃんを」
「OK!」
カメラ担当の晴翔が、配信をしている部屋のベランダへと移動する。そうしてそれにくっ付いて行ったラビが、ジャンプしてカーテンに足を引っ掛け開けると、晴翔はすぐにベランダで寝ているブーちゃんを映した。そう、お腹を出して、ブーブーといびきをかきながら寝ているブーちゃんを。
そして映されたブーちゃんといえば、ちょっとだけ目を開け、チラリとカメラを見た後、すぐにまた目を閉じ。お腹が痒いのか、短い後ろ足でなんとか掻こうとしたが、どうにも足が届かなかったらしく。ププちゃんを呼んでお腹をかいてもらうと、またブーブーいびきをかきながら寝始めた。
少しの間無言になるコメント欄。が、すぐにまたコメントが溢れた。
“いつも通りだなw”
“いつも通りの、親父の貫禄w”
“足が! 足がっ!!”
“あの体型にあの足だからな、そりゃ届かんわw”
“あれで良くダンジョンで生きてられるよな”
“ブーちゃんもいつも通り可愛い~”
“そうだよね、今日は天気も良いし、外でまったり寝たいよね”
“良いんだよブーちゃん、君は君の道を行って”
“うんうん、それがブーちゃんだもんな”
どうにもはしたない格好だったから、映さないでいたけれど。まぁ、みんなが盛り上がってくれたなら良いか。可愛いって言ってもらえたし。……あのままオナラをされなくて良かった。
「きっとクッキーが焼きあがる頃に起きてくると思うんで、それまではラビとププちゃんと、クッキーを作っていこうと思います」
“だな”
“きっと匂いで起きてくるはず”
“この前のお菓子の配信でも、いつの間にか後で待機してたもんなw”
“そうそう、俺、ぜんぜん気づかなかったぜ”
こうしてクッキーを作り始めた俺達。今回は、最近新しく登録してくれた視聴者さんから、基本の魔獣用クッキー作りの配信をして欲しいと、かなりリクエストがきていたため、それを配信する事に。
ただいつも通りの基本クッキーだけだと、前から見てくれていた視聴者さんが面白くないといけないからな。今回は基本のクッキーと、他にも俺が考えた、基本のクッキーをもとにした、野菜クッキーを作ろうと思っている。
そして使う野菜は普通の野菜じゃない。地球産の野菜と、ダンジョン産の野菜を交配させた特別な野菜で。実は俺の家族が、この野菜の交配に関係しているんだけど。
「じゃあまず、クッキーに使う粉についてですが、これは人間用に市販されているものでも、魔獣用に売られている物でもかまいません。それから、一緒に暮らしている魔獣が好きな食べ物を用意してもらいますが、こちらも何でもかまいません。もちろんお肉を細かくして入れるのもありです」
“お肉でも良いんだ“
“クッキーだから、甘いものだけかと思ってた“
“違うんだなこれが”
“このクッキーは、本当に何でもありだよな”
「確かに俺達人間はクッキーにお肉なんて、と思うかもしれませんが。ダンジョンに行き、疲れて帰ってきた魔獣達には、好きな物を食べてもらい、リラックスして欲しいですし。家にいる魔獣達も好きな物を食べた方が良いですからね。うちのラビもお肉入りのクッキーが大好きですよ。それからこれです」
俺はドンッ!! とテーブルの上に野菜を置いた。
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