ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!
ありぽん
第1話
「おい! お前は今日限りでクビだ!! さっさと俺のパーティーから出ていけ!!」
「待ってくれ! タクの能力はまだちゃんと分かって……」
「その能力が目覚めるのをどれだけ待ったと思ってる!!」
「まだ1年ちょっとじゃないか!!」
「もう1年過ぎてんだよ!! その能力が目覚めることを期待してパーティーに入れてやっていうのに。ここにいられても邪魔なだけだ! 他の能力が強ければ別だが、それすら俺達の役に立たないじゃねーか!!
「役に立たないって、タクは出来る限りの……」
「いいんだ晴翔!!」
「タク……」
「みんなの気持ちは分かる。俺だってみんなの立場だったら、同じことをしただろう。いつまでもどんな能力か分からないんじゃ。それに戦闘で役に立たないのも事実だし。分かった、俺は今日限りでスターツを抜ける」
「話しが分かるじゃねぇか。ふん、今日のお前が集めた戦利品はくれてやる。餞別としてな。どうせいつも通り、大したもんじゃないだろうが。ハハハハハッ!!」
「はぁ、やっといなくなるのね、お荷物が」
「これでこれからは、もっと上を目指せるんじゃないか?」
「そうですね、邪魔がいなくなれば、効率も上がるでしょうから」
「……それじゃあ」
「あっ! タク、待てよ!! チッ、おい、俺も今日限りでこのパーティーを抜ける!!」
「何だ? あの役立たずと共に行動するつもりか? 幼馴染だから心配してんのか? はぁ、お前は力があるんだ。俺の元に残った方が、お前のためだと思うが?」
「仲間を大事にできない、力しか求めないお前達といたって、何も得られるものはないさ」
「ふん、勝手にしろ。命令を聞けないような奴は俺だっていらねぇよ。だが、お前も本当に馬鹿だな。奴がいなくなった俺達は、すぐに階級を上げて引っ張りだこになるぜ? そうすれば何でもやりたい放題できるようになる。そう、何でもだ。そんな生活を捨てるなんてな」
「どうだか。お前が、お前達が考えているよりも、そんなに簡単に全ての物が手に入るとは限らないぜ。じゃあな!」
「たくっ、あいつ相変わらず足だけは早いな、俺がちょっと話しているうちに何処まで行ったんだよ。……ん、ああ、いたいた。おい、タクっ!! ってあいつ何やってるんだ?」
「待ってろ、何となくやり方が分かったからな。今からお前を癒してやるぞ」
「おい、タク!!」
「晴翔、どうしてここに?」
「どうしてここにって、お前を追いかけて来たんだろうが。俺もパーティーを抜けて来たんだよ」
「は? 何でそんな事したんだよ。お前は力があるんだから、残らないでどうするんだ。まぁ、奴らの性格は問題だけど」
「別に俺が決めた事だから良いだろう。大体俺達は小さい頃から一緒に行動して来たんだから、これからもそれは変わらないぜ。って、今はその話は良いんだよ。それよりもお前、こいつに一体何するつもりなんだ?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。俺のあの能力、どうやって使えば良いか、分かったっぽいんだよ」
「は? 本当か!?」
「だから今からそれをやってみるつもりなんだ。ちょっと待っててくれ」
『……きゅうぅぅ?』
「ああ、待たせてごめんごめん。よし、やるぞ。そのまま静かにしてるんだぞ」
『……きゅうぅぅぅ』
パアァァァァァッ!!
『……きゅ? きゅきゅ? きゅうぅぅぅ!!』
「よし、成功だ!!」
「は? 何だこれ? 何でこいつは元気になったんだ? やっぱり名前の通り、回復系の能力だったのか?」
「まぁな。でも回復は回復でも、特別な回復能力だったんだ?」
「どういう事だ?」
「まぁ、詳しい話は帰ってからするよ。それよりも俺にはもう1つ、やる事が残ってるんだ。もう少しだけ待っててくれるか」
「ああ、別に今日はもうやる事もないし、明日からの予定もなくなったからな。時間はたっぷりある」
「……俺のせいで、悪かったな。せっかく高ランクパーティーに入れたのに」
「良いんだよ。俺とお前の仲だろう。それよりも、やる事って何だ?」
「やるのは初めてだな。あれをやるんだよ」
「あれって?」
「俺が今まで使った事のなかった能力は、不明の能力以外に何だ?」
「……まさか、ついにあれをやるのか!!」
「ああ、こう、何だろうな。初めてやっても良いと、お互いの心が通じてる感じがしたんだよ」
「そうかそうか!! ついにあれをやるのか!! よし、早速やろう!! ほら、早くやろう!!」
「……」
『……きゅ?』
「ん? どうしたんだ? 早くやろうぜ?」
「お前の態度に、引いちゃってるじゃないか」
「俺が何だって? ほら、何でも良いけど、早くやろう!!」
「はぁ、分かった分かった。ごめんな、こいつの勢いに驚いただろう?」
『きゅ……』
「こいつは本当に友達思いの良い奴なんだ。ただみんなに関しての態度が、ちょっとすぎるだけで……。だから怖がらないで、いや引かないでくれな」
『きゅう……』
「よし、じゃあやるぞ!!」
パアァァァァァッ!!
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