弱者と呼ばれた転生者 〜天才スキルで成り上がる〜

さすけ

第一章

平凡な日常

僕はごく普通の高校生である。勉強もスポーツもそこそこにできるが、あくまでそこそこである。ただ、そんな僕にも一つだけ人より突出していることがある。それは圧倒的なアニメ好きであるということだ。アニメは日本が誇ってもいい素晴らしい文化であり、僕はアニメが大好きだ。そんなこんなで、「僕もアニメの主人公になれたらなー」なんて思いながら登校していた。


クラスに入ると、みんながしょうもない話で盛り上がっていた。昨日の野球の試合のことや、クラスの女子がどうやら、そんな話をしていた。そんなクラスメートを横目にし僕は自分の席に向かった。


僕の席は、教室の一番端っこである。陰キャの僕にとっては素晴らしい席だ。そんなこんなで、一人でじっと窓を眺めているとクラスのガキ大将的存在である、若松わかまつ しんと、若松につるんでいる田上たがみ 郁雄いくお里山さとやま 洋介ようすけの三人が絡んできた。


「よぉ、うんち! エロアニメ鑑賞は楽しいか?」

「うぁ、キッショー」


と笑いながら話す。一体何が楽しいのだろうか。僕には理解しがたいが、根も葉もない噂を流されるのは大変だ。確かに、僕は世間から見れば ”オタク” と呼ばれる人種だろう。


しかし、そこまで絡まれるほどのことはしていない。第一、僕はそこまで見た目は汚いわけでもないし、身だしなみには割と気を使っている方だ。髪だって若松よりも短いし、清潔感はまだある方だ。


ではなぜ、僕はこんな連中に絡まれるのか。その答えは明確である。僕が、林田はやしだ みやびと幼馴染であるからだ。彼女は学校の三大女神と言われている存在の一人だ。男女問わず人気であり、その圧倒的な美貌と知能で校内で知らない人はいないくらいの美人である。


しかし、幼馴染であるといっても、よくある漫画のように仲が良い訳では無い。たまに一緒に帰るくらいで、学校では軽く話すぐらいだ。


けれども、若松らにはそれが気に入らないらしい。頻繁に、僕に絡んできてはオタクだのなにか理由をつけていじってくる。誠に迷惑である。もっと他にすることがあるのじゃないかといつも思う。


さらに厄介なことに、若松グループともう一つ僕に何故か敵意しているグループがいることだ。それが、小倉おぐら 咲人さくと率いるグループである。このグループのリーダー的存在である小倉はかなりのイケメンであり、スポーツもできる上、成績もそれなりにいい。校内外問わず週に一回は必ず告白されるみたいで驚きだ。しかし、彼が告白を受けたという話は聞いたことはない。


その理由は簡単だ、彼が僕の幼馴染である林田のことを好きだからである。小倉グループと林田グループは頻繁に帰るほどの仲であり、そこで彼は彼女に惹かれたらしい。まあ、これはあくまで僕の想像に過ぎないが、客観的に見てその可能性が高い。


授業が始まる前の静かな教室で、突然、小倉のグループが僕に近づいてきた。

小倉の後ろには、宮崎みやざき 隼人はやと伊藤いとう 龍之介りゅうのすけがついている。どちらも小倉に負けず劣らずの人気者だ。


「おい、少し話そうぜ」


小倉が軽く声をかけてくる。


「……何だよ」


不機嫌そうな声を出したつもりだったが、小倉は気にする様子もなく笑って言った。


「お前、林田と幼馴染なんだろ? 俺たち、昔の話とか聞きたいんだよな」


「別に大した話なんてないよ。普通に家が近いだけで、特別なエピソードなんてない」


できるだけそっけなく答えた。これ以上余計な話題を広げたくなかったからだ。すると、宮崎がニヤニヤしながら言った。


「そんな冷たいこと言うなって。幼馴染なんて羨ましい関係なんだしさ、ちょっとくらい面白い話を聞かせてくれよ」


「たとえば、昔一緒に風呂入ったとか?」


伊藤がからかうように言う。


「そんなの、ない!」


僕は少し声を荒らげたが、二人は笑いながら肩をすくめるだけだった。そのとき、教室の扉が開いた。教室の視線が一斉にそちらに向かう。


林田だ。彼女が登校してきた瞬間、教室の雰囲気がガラリと変わる。


「おはよう、みんな」


林田は教室を見渡して柔らかく挨拶をした。小倉は一瞬だけ表情を引き締めると、さりげなく手を振った。


「おはよう、林田」

「おはよう、雅ちゃん!」


宮崎と伊藤も軽い調子で挨拶する。林田は少し微笑みながらも、特に立ち止まることなく自分の席へと向かった。その横を通り過ぎるとき、彼女は僕に目を向けて、ほんの一瞬、口元に笑みを浮かべた。その瞬間、小倉グループの視線が一気に僕に集中する。


「なんだよ、今の」


宮崎がからかうように言う。


「別に、なんでもないだろ」


僕は視線をそらして窓の外を見た。


「ふーん……まあ、なんでもないならいいけどよ」


小倉は何か考えるように僕をじっと見つめていた。


林田が席に座ると、教室は次第に元の喧騒を取り戻していった。しかし、小倉グループの視線が未だに僕に注がれていることに気づいて、僕は内心ため息をついた。


(やれやれ、平穏なんて遠い話だな)







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