赤いきよし/ホラー(500文字)

 これは私がとある冬に体験したお話です。


 同じ職場の仲のいい同僚を招き、私の家でクリスマスパーティーをしました。

 私の家には前の持ち主の趣味で付けられた暖炉があったのですが、掃除が面倒だったためほとんど使わず飾りと化していました。

 それが外国の家のようでオシャレだと盛り上がったのです。

 せっかくなので、物置小屋に残っていた薪を持ってきて暖炉を使ってみようという流れになりました。


 夕飯を食べ終える頃になっても、今日来るはずの同僚のうちの一人であるきよしがまだ姿を見せません。

 おかしいね、と他の同僚と話しながら、暖炉でマシュマロを炙っていたその時です。


「たすけてくれー」


 どこか遠くから、くぐもった声が聞こえたのです。

 その声を聴いた一緒にいた同僚が悲鳴を上げました。

 賑やかだったパーティー会場が、一気に混乱に呑み込まれます。


 ゲホゲホ、ゴホゴホと咳き込むような声と、力なく助けを求める声が断続的聞こえてきます。

 声の出所を探して、私は暖炉の中を覗き込みました。

 すると、目の前に足が飛び出してきたのです。


「た、たすけてくれぇ」


 煙突の中で身動きが取れなくなってもがいていたのは、サンタの格好をした同僚のきよしでした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る