思ったことは、吐き出せ
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
思ったことを溜め込んだままにしておくと、いつか心の奥底で毒素に変わってしまう。これは、誰にでも共通することだと思う。大きなストレスを抱えて「なんだか苦しい」と感じた経験が一度でもあるなら、それは心の奥で膨らんだ何かが、出口を求めているサインだ。
私も長い間、自分の思いを飲み込む癖があった。特に学校に通っていた頃の私は、言いたいことを飲み込んでばかりだった。「こんなことを言ったらどう思われるだろう」「また馬鹿にされるかもしれない」という不安が常にあった。だから、言葉を選ぶことにばかり集中して、肝心の本音を口に出すことはほとんどなかった。
けれど、そんな風に自分の思いを押し込め続けていた結果、私はどこかで自分を見失っていった。本来、私たちは思ったことをそのまま表現していいはずだ。それが正しいか間違っているかは、後で考えればいい。それでも、私は周りの顔色ばかり気にして、「言ってはいけないこと」と「許されること」の境界線を探すことに疲れ果ててしまった。
吐き出せない苦しさ
何度も経験してきたが、言いたいことを言えない苦しさは、ただのストレスではない。自分自身が「これを感じているのに、どうしてそれを表現できないんだ」と、自分を否定してしまうような感覚だ。気づけば、心の中にもう一人の自分がいて、常に私を責め続けていた。
「どうしてこんなに弱いの?」
「もっとちゃんと生きなきゃダメでしょ?」
そんな声が聞こえる気がして、どんどん自分が嫌いになっていく。そしてその感情をまた吐き出せないから、さらに心が重くなる。
これでは悪循環だ。どこかでこのループを断ち切らないといけない。そう気づいた時、私は初めて「吐き出すこと」の大切さに目を向けるようになった。
吐き出す勇気を持つ
最初は、とても怖かった。だって、長い間溜め込んでいた感情を吐き出すことは、心の奥を誰かに見せるようなものだからだ。でも、それを少しずつ試してみた。信頼できる友人に話すことから始めたり、ノートに自分の思いをただひたすら書き連ねたりした。SNSで、勇気を出して自分の気持ちを投稿してみたこともあった。
もちろん、全てが受け入れられるわけではなかったし、時には否定されることもあった。だけど、不思議なことに、吐き出した後はどこかスッキリしていた。それまで押しつぶされそうだった感情が、一瞬だけでも軽くなった気がした。それを繰り返すうちに、私は「間違っていてもいいから、とにかく吐き出そう」と思えるようになった。
正解も失敗もない世界
私は、言葉や感情を吐き出すことに、正解も失敗もないと思っている。たとえ誰かに否定されても、それはその人の意見であって、自分の感情そのものを否定されたわけではない。吐き出した言葉が間違っているなら、後で修正すればいい。それに気づいてからは、「まずは出すこと」を優先するようになった。
例えば、創作活動も同じだ。作品を作るとき、最初から完璧なものを目指す必要はない。むしろ、思ったことをそのまま形にするほうが、本当の意味で「自分らしい」ものになると思う。私が文章を書く理由の一つも、そこにある。文字にすれば、自分の中で渦巻いていた感情や思考が、少しだけ整理される。人に読んでもらえるかどうかは二の次で、まずは吐き出すこと。それが一番大切だ。
吐き出す場所を持つことの大切さ
吐き出すためには、そのための「場所」が必要だ。私にとっての場所は、文章を書くことだったり、信頼できる人と話すことだったりする。それが人によっては、絵を描くことだったり、音楽を演奏することだったりするかもしれない。形は何でもいい。だけど、自分の中で「ここなら安心して吐き出せる」と思える場所を持つことが重要だ。
もし、まだその場所が見つかっていないなら、探してみてほしい。そして、それが見つかったなら、思い切って吐き出してみてほしい。間違っていても、誰かに批判されても、それが今の自分の本音なら、間違いではない。
最後に
吐き出すことは、心を軽くする第一歩だ。溜め込んでしまう癖がついている人ほど、最初は難しいかもしれない。でも、少しずつでもいい。言葉にすること、形にすることを試してみてほしい。
そして、何よりも大切なのは、自分を否定しないことだ。吐き出すことに正解はない。それが失敗だと思えても、きっとあなたの中では何かが変わっているはずだ。その変化が、次の一歩を踏み出すための力になる。
だから、どうか思ったことは、吐き出してほしい。毒素になる前に、心に余裕があるうちに。そして、吐き出した自分を、少しでも好きになれるように。
思ったことは、吐き出せ 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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