第1話『目覚める鬼①』
ある市立高校、夕方にも関わらず部活やまだ教室に残った生徒達の賑やかな声で溢れていた。
教室に残っていた
内容は、文が仕入れた都市伝説の話だ。
「だから、本当なんだって!はる君、かず君」
「いや、そのはる君って止めてって言ってるよね?」
「もう諦めろ、はる。で、文が言ってた何だっけ・・・『口裂け女』?それって大分前に流行った話しだろう?」
「そう!最近この辺りで口裂け女が出たんだって」
文は腕を振り回して身振り手振りで口裂け女の話しをしていく。
かつては社会現象にまでなったそうだが、今では都市伝説好きの間でのお気に入りの話し程度である。
「口裂け女って確か赤いコートを着て、マスクしてた女が「私、綺麗?」って声かけてきて、「綺麗」って答えたらマスクを外して裂けた口を見せてくるってやつでしょ?」
「はる君、詳しい〜!」
「はるも文と同じでその手の話し好きだからなぁ・・・って、こんな時間か。流石に帰ろうぜ」
時間は18時、夏期とは言え暗くなっていく頃だ。
周りの生徒も部活を終えて帰り始めている。
遥達は急いで学校を後にした。
「またね〜、はる君」
「また明日な、はる」
和人と文の自宅は反対だ、遥は2人と別れて1人帰路に着く。
(結構暗くなってきたな、今日は近道していくか・・・)
遥は近道になる公園へと向かう。
この公園を抜ければ10分近く時間が短縮できる。
(ここ、こんな感じだったっけ?)
公園内を歩く足は重く、身体は寒気を感じる。
周りの薄暗さは淀みを帯び
これは「ヤバい」そう思い遥が走ろうとした瞬間、目の前に突如、女性が現れた。
薄暗い中、はっきり分かる程の真っ赤なロングコートを着た女性。
黒い艶のあるロングヘヤーから覗かせる顔には白いマスクが見える。
(いきなり目の前に現れた!?しかもこの格好、まるで・・・)
「・・・私、綺麗?」
「え?」
「私、綺麗?」
透き通る声が物音1つしない公園に響いた。
遥の背筋が凍り、額から汗が流れる。
女性は遥の返事を待つ様に微動だにしない。
遥はその場から動く事も出来ず、意識しなければ呼吸さえ困難になっていく。
(本物!?いや、今はそんな事考えてる場合じゃない・・・とにかく間違えず答える事・・・)
混乱する頭を無理矢理引き戻し、遥はどう答えるかを考える。
口裂け女の話しは諸説ある。
目の前の存在がどの話しに当てはまるのか分からない。
「ポ、ポマード」
「っ!?」
『ポマード』、これは口裂け女への対処法と言われた言葉だ。
口裂け女の口が裂ける原因になった整形手術失敗をした医師が整髪料であるポマードを使用していたらしく、それがトラウマになっている。
その為、ポマードと複数回言う事で口裂け女はその場から消えると言われている。
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