第14話 娘の行方
その頃マリアの実家では、マリアの行方を案じている両親がいた。
「パトリック。マリアはどこへ行ったの?」
食事の席で母親はパトリックに尋ねる。
「母上。友達の所へ行ったんですよ」
パトリックはどうにかごまかそうと爽やかに噓を付いた。
「友達……あんな夜中に? どちらの令嬢なの?」
「母上、そこまでは俺も分かりません。ですが、ミミの弟の騎士が一緒に行きました。大丈夫ですよ」
母親を安心させようとパトリックは笑顔を見せる。
「……昨日、あの子とても悲しそうだったから。家出でもしたのかと思ったわ」
「大丈夫ですよ。直に帰ります」
パトリックはそう言ったものの、何故帰ってこないのか案じていた。
「昨日は厳しく言い過ぎた」
父親も反省しているようだ。がっくりと肩を落としている。
「父上? 認めてあげるのですか?」
「……それは話が別だ」
「……父上」
「なんだ?」
「何故そこまで頑ななのですか?」
「……そういう訳では無い。ただ……」
仲違いをしてからずっと会っていない、王様とレーム家の父親。話し合えば仲直り出来るかもしれないのだが……。意地の張り合いになってしまっていた。
* * *
パン屋へ着いたエドワーズは、生地を渡し焼いてもらっていた。
パン屋はこじんまりとしていて、対面販売を行っている。奥で生地を焼いているようだ。
待っている間、エドワーズは店員の働きぶりを見ていた。
パン屋で働いてみたいと感じたエドワーズは、ふくよかで笑顔の素敵な対面販売の女性に聞いてみた。
「すみません、こちらで働かせて頂けますか?」
突然の申し出に女性は目を見開き驚いているようだ。
「主人に聞いてみるよ」
どうやらこの店は夫婦で営んでいるらしい。
数分後、ガタイの良い長身の男性が現れた。
「君か?」
低音の声が辺りに響き渡る。
「ええ、私です」
「どこの貴族様だ?」
「え?」
「上品さがにじみ出てるんだよ」
エドワーズはジャクソンから渡された庶民の服を着ていたが、やはり育ちの良さは隠しきれていないようだ。
「それは……」
「どういうつもりか知らないが、遊びならよそでやってくれ」
冷たく言い放つ店主はエドワーズに背を向ける。
「待ってください!」
エドワーズの呼びかけに店主は振り返る。
「どうしても、働かないといけないんです!」
店主は無言でエドワーズをしっかり見つめる。
「……愛する女性と暮らすために」
「……大事な女か?」
「……はい! 僕のこの命をかけて守り抜きたい女性です!」
突然店主は口元をゆるめる。
「そうか。大事な女の為に頑張りたんだな?」
「はい!」
「気に入った! 明日から来られるか?」
「はい! よろしくお願いします!」
話をしが終わりしばらく待つとパンが焼き上がった。
ふんわりと良い香りが漂っている。
「はい、焼き上がったよ」
奥さんがパンをエドワーズに渡し、エドワーズは
「ありがとうございます」
エドワーズは代金を支払いマリアの元へ帰って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます