第13話 2人の朝

 昨晩は夜中に着いた為、マリアとエドワーズはそれぞれ別々の部屋へ行き、すぐに眠りに付いた。


 マリアは明け方に目を覚ますとキッチンへ向かい、現代とは違う使用に戸惑いながらも何とか料理をしようとした。


「おはようございます」


 不意に後ろから声が聞こえ振り向くとエドワーズが眠そうなまぶたを瞬かせながら、微笑みながら立っていた。


「エドワーズ様……おはようございます。お早いんですね」


「ああ……やはりあまり眠れなかったよ」


「大丈夫ですか?」


「ああ……大丈夫」


 ふと見つめ合うものの何となく気恥ずかしくなり、目をそらしてしまう。


「朝食を作ろうと思ったのですが……ジャクソンさんが色々買い揃えてくださったようで……」


 卵やお肉、魚や野菜。庶民にはなかなか手に入りにくい物までそろえられている。


「ああ、ジャクソンは出来る男だからね」


 ジャクソンの話をするとエドワーズは顔をほころばせ、嬉しそうになる。


「ジャクソンさんと仲がよろしいのですね?」


「そうだね。長い付き合いだからね」


「素敵ですね。エドワーズ様、何か食べられない物はありますか?」


「そうだね……特に好き嫌いはないよ」


「分かりました。それでは質素ですが、パンと卵と、サラダとフルーツにしましょう」


「パンは近所のパン屋さんで焼いてもらって下さいと、ジャクソンさんに教わりました」


「僕が行くよ」


「え? ですが……」


 驚くマリアにエドワーズは優しく微笑む。


「マリアさん、これからは2人で暮らすんだよ。2人で協力して行こう? 僕が出来ることはするし、王子としてではなく、1人の男として君のそばにいたいんだ」


「……分かりました。私も令嬢ではなく、1人の女性としてエドワーズ様のお傍にいたいです」


「そうと決まれば、まずは……その様付けをやめようか?」


「え……」


「様付けをしていたら、聞いた人が何かと思うよ?」


「そうですね……それでしたら、エドワーズさん? でしょうか?」


「良いよ」


 エドワーズは笑顔で答えると、マリアに提案した。


「君のことはマリアと呼んでも良いかな?」


 マリアと呼ばれた瞬間、心臓が大きく脈打ち、真凛はマリアそのものになった気がした。


――どうしよう……このままここにいたら、真凛だって忘れそう……。


「マリアさん?」


 返事を忘れているマリアにエドワーズは尋ねる?


「あ、ごめんなさい。マリアと呼んで下さい」

 マリアはエドワーズに微笑みながら告げた。

「ありがとう。それでは、パン屋へ行ってくるよ」


「はい。行ってらっしゃい」


「行ってきます」

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