第7話 女子高生の裸の写真が流出

「ね、ねぇ大愛だいあちゃん」

花音かのん、どうしたの?」


 瀬史琉せしるのスマホからフクシュウ狂ヒの手で登録されていた友人全員にメッセージが送られた日の翌日、

 学校で花音かのん大愛だいあに話しかけてきた。彼女の顔はどこか不自然に引きつっていた。


「……これ、大愛だいあちゃんだよね?」


 花音かのんが見せたスマホには目をつぶった大愛だいあの全裸画像が映っていた。




穂炊木ほだき 大愛だいあ15歳、パパ募集中。

 月に10万円無いと女子高生としてまともな生活を送れません。お金をたくさん持ってるパパを募集中です。

 LINE:……」

 

「……!?」


 大愛だいあは思わず手で口をふさぎ、その目を限界まで大きく開かせる。そこには自分の住所や電話番号、SNSのアカウントまで記載されていた。




「……何、これ!? 何なのこれ!? こんなの知らない! 知らない知らない知らないってば!」

「でもいくつものSNSに同じものが載ってるんだよ? 見てみる?」

「嫌! そんなの見たくない!」


 大愛だいあは、一体だれがこんな画像を撮ったのか、瞬時に察する。もしや……


「お早う、大愛だいあ


 ちょうどいいタイミングで瀬史琉せしるが登校してきた。彼女は彼の腕をつかみ、花音かのんのスマホに映る画像を見せた。


瀬史琉せしる!! 何なのこの写真!! いつ撮ったのよ!?」

「!! しまっ!」


 瀬史琉せしるが言うよりも早く、大愛だいあは彼氏の首根っこをつかんで問い詰める。




「言えよ! なんでこんなもの瀬史琉せしるが持ってるんだよ!? お前のスマホから流出したんだろ!? だよなぁ!? だよなぁ!?」


 瀬史琉せしるは観念したのか話し出した。


「すまない、俺が撮ったものだ。中3の頃お前とヤった後、ベッドに全裸で寝ていたお前をひそかに撮って……ズリネタにしていました。ごめん」

「……!!」

「……弁護士に相談しよう。大愛だいあ、確かお前の母親は弁護士だったよな? これは俺たちの手に負えない。親にも相談しないと」


 瀬史琉せしるは恋人をなだめつつそう提案する。恋人は多少口車に乗せられた感じはしたが、渋々同意した。




 授業が終わり帰宅後、事情を話して瀬史琉せしる大愛だいあは、彼女の母親にどうすればいいか相談することにした。

 母親だけあって娘に似た美しい穂炊木ほだき弁護士が事情を聞いて、子供たちからのSOSに応えようとするが、その表情は重い。


「……というわけなんですが、どうしたらいいんですか?」

「言いにくい事なんだけど……ネットに上げられた画像を完全に消すことは、出来ないわ。一度ネットに上がった画像は不特定多数の人に保存されてまた拡散されるのでこればかりはどうしようもないのよ」




 弁護士である大愛だいあの母親は気重そうに、かつなるべく相手を刺激しない口調でそう言う。納得してくれないのは承知の上で、だ。


「それと、話を聞く限りでは相手を告訴しようとすると児童ポルノ禁止法違反に「瀬史琉せしる君も」当てはまってしまい、あなたも書類送検されてしまうわ。

 被写体が未成年である以上、単純所持つまりは持っているだけでも違法なので……」

「そ、そんな……悪いのは画像を上げたあいつじゃないか! なんで俺が罰せられなくてはならないんですか!? そんなのおかしいじゃないか!」

「その気持ちは分かるけど、法律でそうなっているので今回のケースではどうしようもないわ」

「……」




 あまりにも理不尽な答えに一同は絶句する。なぜ善良な市民である我々が罪に問われなくてはいけないのか? さっぱりわからなかった。


「じゃあどうすれば良いんだ!? このまま泣き寝入りしろって言うんですか!? そんなの理不尽じゃないか!」

瀬史琉せしる君、その気持ちは分かるわ。でも法律でそうなっているからには、それに従わなくてはいけないの。俗に『悪法も法なり』って言うし」

「……!!」


 瀬史琉せしるの身体が怒りでわなわなと震える。弁護士である大愛だいあの母親からの回答は理不尽の極みで全くもって同意出来ないし、したくない。


「……黒鵜くろうの奴、オレをコケにしやがって。許さねぇ」


 こんな事になったのは全部あの黒鵜くろうの仕業だ。鋭い目つきになりながら、憎悪にも似たいらだちを感じていた。

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