フクシュウ狂ヒ
あがつま ゆい
第1話 オレを逮捕してくれ
「頼む、オレを逮捕して少年院に入れてくれ!」
午後3時半。これから学生が帰宅するであろう時間帯に、下校途中と思われる男子高校生が警察署へとやって来た。
逮捕され、少年院に入りたい。そんなおかしな願望を持ちながら。
「ふーむ……『
冬服を着込んだ警察官が「逮捕されたい」という願望を持った青年と話をする。
青年は今すぐ国民的アイドルになれそうな
「オレは、中学校にいた頃……いじめをやってました」
◇◇◇
クラスの男子生徒がわめきながら教室を出ようとする。
だが出入り口にはスタンガンを持った
「トイレ行かせてくれよ!」
「しょうがねえだろ『
「まだ2時限目が終わったばかりだろ! そんなの無理……」
もちろん公布元は
ブリブリブリブリュブリュリュブリュドブァ
下着のトランクスに尻穴から出た何か生温かくて柔らかい物体。それが自重でトランクスの股をすり抜け、制服のズボンを通り抜けて上履きの上にドサっと降って来た。同時にクラス内に
「ギャハハハハハ!! オイ
「テメェのせいじゃねえか!」
「うるせえな
この「相手を教室内で脱糞させた」いじめを皮切りに、彼が犯した罪の自白は1時間も続いた。
1時間持つほど多彩な内容にして、かつその全てが
◇◇◇
全ての罪を白状した後、
「こんなオレって悪人ですよね!? 逮捕されてもおかしくないですよね!? だから逮捕してくれ! もうアイツが追ってこれない場所は少年院の中ぐらいしか無いんですよ!
だから頼む! オレを逮捕してくれ! 逮捕して少年院に入れてくれ! お願いします……お願いします……」
彼は大粒の涙をボロボロとこぼしながら警察官にそう訴えた。
「分かった分かった。確か
彼は泣きながらコクリ、とうなづいた。
警察に「いじめをやっていた」という罪の裏付けをとるために
当然、警察に自首して罪を白状する人間にとって、普通の感情ではない。
全ての罪を洗いざらい吐いた後、彼は警官に今後の自分はどうなるか? を尋ねた。
「……で、どれくらいの判決になりそうですか? 警察だからある程度の予測とかできますよね?」
少年院送りを望んだ彼の「願い」は粉々に砕かれる。
「!? 無罪だと!? そんな! オレはいじめをやったんだぞ!? それも3年間もだ! それが無罪だって!? あり得ないですよそれ!」
「実を言うと被害者と連絡がついて、彼と話をしたんだが「いじめられたことは一切ない」って言って、君の言ってる事は全部否定したんだよ。
だからいじめられた相手がいじめを認めずに否定している以上、君を罪に問うことは出来ないんだ」
連絡がついた被害者から事情を聞いた結果「いじめは無かった」と本人がかたくなにいじめられた事を否定したため、無罪が妥当だろう。という判断だった。
「被害者」がいない以上は事件が起きようもないし、ましてや裁かれようがない。彼のリクエストである「少年院送り」は夢のまた夢だ。
「確か
「……いじめた相手が仕返しにやって来てるんだ。アイツに何言っても聞きやしない! もうどこかに逃げるしかないけどもう考えられる場所が少年院ぐらいしかないんだよ! だから逮捕してくれよ! 頼むから……あああああ!!」
彼の願いを聞いてリクエスト通りに少年院送りにできるものは誰もいなかった。
「集団レイプされて産まれた、誰が本当の父親なのかも分からない子供」であるクラスメートを3年間いじめ抜いた結果、相手が復讐の鬼と化しその罪の代償を払っている途中だった。
彼はそいつから逃げ出したかった。だが相手は法律、特に少年法でガッチリと守られている上に、自分たちに復讐するためなら何もかもを差し出す覚悟を決めており、止める術が一切なかった。
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