第30話 セットメニュー

 十八日目。

 昨晩、セットメニューを設定しておいた。

 塩セットが、塩おにぎり二つにとりの唐揚げが四個で千ウィッチ。

 鮭セットが、鮭おにぎり二つにとりの唐揚げが四個で千五百ウィッチ。

 内容としては、おにぎりの種類が違うだけ。容器は、基本紙タイプで節約。ただジョーさん達みたいな遠出する人には、竹包箱かなとは思っている。レジ袋有料化を経験している身としては、選択制もありだとは思うけど手間を考えると悩ましいところ。

 いっそのこと、客がタッチパネルで召喚するものを選んでくれればいいけれど、無理だろう。普通に考えて、追加されるなら食券とかの方が先な気がする。メシポイントの問題もあるし単純ではない。


 あとは、惣菜の値段も決めた。

 とりの唐揚げ単体の値段は、三個入りで五百ウィッチ。

 弁当にしたほうが、少しだけお得な値段設定。

 メシポイント換算だと、四個で鮭おにぎりと同じ二消費なので店側が少し得した気分。だけど、単体売りなので余った分俺が食べ放題とはならない。儲けが増えるだけ。というか、ここで容器代を稼ぎたい。


 消費するメシポイントについても確認済み。

 セットは少しだけ軽減効果がある。

 塩セットは、単体だと通常四消費のところ三。鮭だと六が五。

 二つだけじゃはっきりしたことはわからないけど、純粋に消費が一減るか、八割くらいになって四捨五入なのかな。とにかく減ってくれるだけで、こっちとしてはありがたい。

 

 ついでに、回復速度もしっかり調査済み。

 レベル二の時には、六分で一回復と一時間にメシポイントが十回復していたのが、三になると倍の二十になった。ちなみに上限も倍になって四十になっている。

 ずいぶん増えた気もするし、鮭セットで考えると一時間に四つしか用意できないので不安でもあったり。



 いつもの時間になったのでとりあえず開店。

 本当はメニューも増えたしレイアウト変更をしたいのだけど、資金が足りないなどいろいろと問題がある。

 販売カウンターの脇、もしくは下辺りにショーケースを埋め込んで惣菜をアピールした場合、おにぎりが売れにくくなくなりそうな点。

 一緒に並べた場合は、セットを注文された際に手作業となり手間もかかるし、メシポイント軽減がかからず勿体ない点など。

 

 そんなこんなで、現在は間仕切り部分にホットショーケースを二台を並べているだけで、メニューのデザインさえ決めかねている。


 一先ず必要なのは、塩セット、鮭セット、とりの唐揚げのメニュー。

 メニュースタンドが増えすぎても場所的にきついので、メニューをカウンターの上と下どちらに貼るか悩んでいると、いつもの子供がやってきた。


 少しだけ変わった店内を確認しているのが視線の動きでわかる。

 いつものように葉っぱを差し出した後、とりの唐揚げを指さして首を傾る。そんな仕草が少しだけかわいい。以前は汚いやせ細ったガキで、そんな感情も沸いてこなかったが……。

 そういえばこいつの性別を知らないが、今この瞬間「女の子であってほしい」と初めて思った。男だったら自分に少しだけショックだ。仮に女の子であっても、ロリコンってことになるからどっちみちアウトか。


 動揺を隠すように、少し慌てて子供の疑問に答えてやる。


「あれはとりの唐揚げっていう惣菜だ。具材……ん-、簡単にいうと味の付いた肉だな。あれは三つで、こっちの黒いの一つ分の値段。葉っぱで百枚な。わかったか?」


 頷いているので大丈夫そうだ。

 今朝は、葉っぱ五十枚だったので交換は不可だけど、何かを悩んでいる様子。

 初回ぐらい一つおまけしてやってもいいような、以前対等に接すると決めたしどうしようかと悩み、魔女の初回サービスを思い出す。


「今日だけ初回サービスとして、葉っぱ五十枚でとりの唐揚げ二つでもいいぞ。どうする?」


 やっぱりとりの唐揚げがきになっていたようで、即決でそちらを選択してきた。

 そういえば、こいつ肉が好きって言ってたっけ。

 耐油袋を広げて、入れようとして気付く。専用のトングが要る。

 まだおにぎり用を湿らせていなかったのでそれを流用して、とりの唐揚げを取り出し二つ入れて渡してやる。


「熱いから気を付けろ。袋の上んとこ持つんだぞ」


 袋を受け取った子供は、おっかなびっくりな感じで袋の下部分をつんつんして温度を確認した後、何度か頷くと帰って行った。


 子供を見送り、すぐにトングを注文。購入履歴からの選択なので早い。

 急いで部屋へと帰り、届いたトングを手に取り店舗へと戻る。

 入念に水で洗って販売スペースへ戻ると、トリスさんがやって来た。


「お? ちょっと変わったな。なんか増えてやがる」

「おはようございます。昨日また能力が成長しまして」

「昨日? 前みてぇな音がしなかったけど?」

「前回騒ぎになって衛兵が来たじゃないですか。それで、魔女が対策したみたいで今回は店内でだけ聞こえたみたいです」

「へえ。そうなのか。で、そこの小せぇパンみてぇな色のが新しいやつか?」

「そうです。とりの唐揚げといって、とり肉に下味を付けて油で揚げたものです」

「おっ! じゃあそれといつものくれや。いくらだ?」

「えっと、とりの唐揚げ単品だと三個入りで五百ウィッチです。でもセットもあるんですよ。いつもの鮭おにぎり二つにからあげが四つ付いて千五百ウィッチ。こっちの方がちょっとだけお得です」


 最近のトリスさんは、朝に鮭おにぎり三つが基本になってきていたけど、セットだと一つ少なくなってしまう。その分からあげがあるので、満足感は変わらないか上のはず。

 宣伝も兼ねて、説明しておく。


「んー。じゃあ、おすすめみたいだしまとめて入ってるのにしてみるか」


 厨房に入り、セットを召喚。

 蓋をするのは手動のようで、中身がちゃんと入っているのは確認できた。

 唐揚げがアツアツで美味そうだ。

 販売スペースに戻り渡す際に、いつも持ってきている皿が目に入る。


「すみません。今日もお皿持ってきて下さったのに」

「かまわねぇよ。セットってのだと、皿なくていいってわかったしよ。また別々で買う時には持って来るからよろしくな」

「はい。では、千五百丁度ですね。ありがとうございました」


 トリスさんが練習台になってくれてよかった。

 今回、トリスさんが相手なので袋なしでも問題なかったが、複数買ってくれる人が出てきた場合、やっぱり袋があったほうが良さそう。


 タブレット端末を確認すると、案の定新着があり袋の種類が増えていた。セットが売れたことがトリガーになったようだ。

 セットが三箱入りそうな小サイズ紙袋が百ウィッチ。ちゃんと持ち手も付いている。

 中サイズが、九箱までは余裕で入れられて百五十ウィッチ。

 大サイズが、十八箱くらいと大容量で二百ウィッチ。欲張ればもう少し入るかもしれないが、耐久性が少し心配。


 何だかんだと、細かい部分で出費がかさみそうで、ため息が出る。

 とりの唐揚げを沢山売って、袋や容器代を稼がないとな。

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