第27話 モニター交渉2

 ユーリさん相手に、昼ジョーさんへ説明した内容を繰り返した。

 こちら側が無償で商品を提供するので、その効果を報告して欲しいという至って普通の内容。

 

「お話はわかりました。今回、ジョーと私には新しいものを。残り二名分、以前のものを用意してください。数は、各自に二つ。合計八つ。それから今回の結果次第ですけど、また依頼があればご相談下さい。その際、種類と数はこちら側が指定出来るということでどうでしょう?」


 前半は問題ないけれど、後半部分。

 おにぎりの種類が増えた程度なら構わないけれど、弁当が召喚出来るようになった場合自由に指定されるのは少々不味い。

 ただ、今後もモニターをやってもいいとは思ってくれているようだ。

 案外金欠だったりするのだろうか。


「前半部分はそれで構いません。後半については、こちらが指定した品物の中から二つまでということで、どうでしょうか」

「指定されることに何か問題が?」

「ご存じの通り、ここは魔女の店です。ですので、今後何が販売できるようになるかわかりませんので『何でも』というわけにはいかないかと。あと、ものによっては用意できる数に限りがあるかもしれませんので」

「なるほど。確かにそうかもしれませんね」


 指定金額までという条件も考えたが、それで大量におにぎりを指定されても困る。なので、二つまでとした。食事の提供ではなくて、あくまで効果の検証だし。

 ユーリさんは少し考えた後、とりあえずはこの内容で納得してくれた。今と大きく変わるような商品の場合は、またその時交渉という条件を付けて。


 話がまとまったので、おにぎりを用意する。

 竹包を二つ注文して、それぞれに四つのせて包む。紙袋は、迷ったけどロゴも入ってるし宣伝目的で付けてしまう。スポーツのスポンサーなんかもそうだったし。


「お待たせしました。下側が鮭おにぎりで、上側が白い方の塩おにぎりです。以前説明していませんでしたが、こちらの包みは多少劣化を遅らせる効果がありますので、明日食べられる際にもある程度美味しいまま保持されているかと思います。あと、ご存じの通り食べ終わると消えますのでご注意下さい」

「おっ! 袋くれんのか。助かるわ。で、劣化が抑えられんのね。確かに前の時もそうだったかもな。さてと、じゃあ明後日辺りに報告に来るわ。行こうぜユーリ」


 袋の方は、ジョーさんが受け取り帰って行った。

 塩おにぎりの時のように、何か効果があればいいけど……。

 ただ塩おにぎりに効果があるとわかっても、現時点では売り上げが特に上がったりしてない。すぐに売り上げに影響が出るわけじゃなさそうだから、当分あまり売れない日々になりそう。


 少しだけ遅くなった閉店作業をパパっと終わらせ、部屋へと戻る。

 決まった時間に食べるようになっていたので、遅れると随分腹が減った気になる。

 今日はガッツリと肉料理にしよう。


 かつ丼、トンカツ定食なんてのが目に入ったが、昨日ミックスフライ定食を食べてるし続けて揚げ物ってのは避けたい。見られてるわけじゃないけど、母に怒られそうな気がするし。

 いつもより少し下までメニューを見ていき、冷しゃぶ定食に決めた。


 冷しゃぶってあっさりな印象だけど、贅沢にたくさん口へ放り込むと物凄く満足感がある。

 今、肉食ってる! って感じで。

 タレは、ポン酢とごまだれがあるので、まずはごまだれかな。ちょこんと付ける。

 口いっぱいになった肉から、濃厚なゴマの香りが押し寄せてくる。それをいつもより少し口を大きく動かしながら噛んで、肉と絡める。段々と、ごまだれメインだった味が肉の味へと変化していき、二度おいしい。そこへ、わんぱくにご飯を追加してさらに口の中を充実させる。うん。いいね。


 一度みそ汁を啜り、口の中の物を流し込む。ふぃー。満足。

 ふふふ。ここからさらにポン酢が待っている。

 またしても口いっぱいに頬張り、ごまだれと同じように楽しむ。こっちは、さっぱり。いくらでも食べれる気になる。

 しかし、ちょっと欲張りすぎて残りが一回分の肉しか残っていない。添えられてる野菜類をタレで食べながら、最後をどっちで〆るか悩む。

 俺の出した答えは、ポン酢による冷しゃぶ丼。

 ご飯に水菜や玉ねぎなどの野菜をのせ、その上に肉。最後にポン酢をかける。途中味変でごまだれも参加させたりして、結局両方いっちゃう。

 うん。おいしかった。ごちそうさま。

 これの欠点は、最後茶碗の底に残ったご飯がタレでおかしな味になることだな。

 わかっていたけれど、毎回同じような気持ちになる。


 食べ終わったので、風呂に入りさっさと休もうと思う。

 時計を見ると、いつもより一時間くらい遅い。

 風呂の後、忘れないようにコピー用紙を使い、今回ユーリさんと話し合ったモニターの条件についてメモしておいた。

 そして就寝。



 翌日。十一日目は、これといった出来事も無く営業が終わった。

 十日以上営業しているので、認知度が上がったのか、ディスプレイのおかげかわからないが少しだけ売り上げが伸びた。といっても、大量購入がなかったので売り上げとしては六千ウィッチほど。



 十二日目。

 予定通りなら、今日ジョーさん達が報告に来てくれるはず。

 少しワクワクしながら開店する。

 勝手なもので、朝一にいるとは思っていないが実際にいないと残念な気持ちになる。


 恒例の朝の交換をしながら子供の顔を見て、少しだけ肉が付いてきたかなと感じた。そんなに変化があるわけではないけど、元が酷いのでさすがにわかる。健康そうになるには、どれくらいかかるものなのだろう。

 

 続いてトリスさんと、いつものやつ。

 今日はトリスさんの店が「魔女の店」なのか聞くことが出来た。

 答えは、イエス。

 ただし弟さんの店を継いだ形なので、トリスさん自身は何か特殊な機能を追加したりなんかは出来ないそうだ。なので商品は、市場で手に入れた食材を魔女製の焼き台で調理して売っているとのこと。

 弟さんについては、トリスさんに店を任せると魔女と共にどこかへ行ってしまったとか。

 気になるけど、それ以上は聞かないでおいた。

 

 あと、この通りの他の店についても聞けた。

 俺みたいな現役の『魔女に選ばれし者』って人は残ってないみたいで、さほど特殊な物を売ってるわけでもないとか。

 ただ決まってこの道に突然店が出来るので「魔女の道」って言われるそうだ。

 それから「魔女の店に悪戯すると酷い目にあう」って話は有名で、その話が広まっていくうちに内容が変わってしまって「魔女の道を通ると悪いことが起きる」みたいな噂もあるらしい。

 異世界だろうと噂話ってのは、そうなっちゃうんだな。


 トリスさんにお礼を言って、情報料として鮭おにぎりをおまけしておいた。その際、殊の外喜んでくれた。海苔を焼き台で炙ったりして色々試しているんだとか。海苔や具材そのものを提供するわけにはいかないが、何か新しい売り物への発想になればとは思う。

 いっそのこと、こちら世界の調味料をいくつか見せてもらって、ちゃんとした焼きおにぎりを教えてあげるのもいいかもしれない。


 このことも忘れないようにメモに書いておいた。

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