帰ってくれ!花盗人
七都あきら
面倒な生徒はじめました
第1話
――ご健勝とご活躍をお祈りします。
中学を卒業してから、高校の入学式までの短い休みの間、千秋は悠々自適な一人暮らしを満喫していた。それは千秋が望んだことではなく、突然、父親の単身赴任が決まったことと、祖父が入院して母親が留守がちになったことが理由だった。
そんな理由で二週間ばかり昼夜逆転の生活をしていたのだが、四月に高校生活が始まり、久しぶりに目覚ましのアラームで朝起きたら体が全力で動くことを拒否した。
なんとかベッドから這い出し、真新しい制服のブレザーに袖を通したが、今にも体がぺたんと床にくっつきそうだった。
だるい、ベッドが恋しい。眠いを通り越して、倒れそう。
中学生の頃の自分だったら、どんなに眠い朝でも制服を着て一階に降りたら頭がしゃっきりしていた。
朝からとにかく体が変だった。自分の体が自分のものじゃないようで鉛のように重い。
件の理由から両親共に忙しく、入学式に参加できないことを二人は、とても残念がっていた。けれど、高校生にもなって両親揃って式に出席なんて恥ずかしいと思っていたので、ちょっとだけ、ほっとしていた。
結局、学校についてからも変わらず原因不明の体の不調は続き、千秋は次第に不安になっていた。
その矢先の出来事だった。
式が終わって、各自の教室に向かう途中から耳鳴りがしていた。
(もしかして、高校生活を満喫する前に、自分は死ぬんじゃないだろうか)
冗談じゃなく、そんなことを考えていた辺りで、視界がブラックアウト。
体育館から外に出た後の記憶があやふやだった。
耳元で「くそ重いな、何キロだよ」って声が聞こえた。
失礼な、平均だ! って言葉は、きっと届かなかったと思う。
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