第36話 未来を描く日

中学校での読書イベントを終えた真一は、自分が選んだ道に少しずつ自信を持ち始めていた。本を通じて誰かに言葉を届ける。そんなシンプルな行動が、自分自身の未来を形作っているように感じられる日々だった。


そんな中、学校で進路についての個別面談が行われることになった。


進路面談の日


面談当日、真一は担任の先生と向かい合った。先生は、机の上に進路調査票を置きながら微笑んだ。

「さて、真一くん。最近、いろいろな経験をしているみたいだけど、進路についてはどんなことを考えている?」


真一は少しだけ迷ったあと、ゆっくりと話し始めた。

「まだ具体的な道が決まったわけではないんです。でも、書店でアルバイトをする中で、本を通じて人とつながることの楽しさを知りました。だから、もっと本に関わる仕事をしてみたいと思っています。」


その言葉に先生はうなずきながら言った。

「本に関わる仕事というと、出版や編集、図書館司書など、いろいろな道があるね。具体的に興味のある分野はある?」


真一は少し考え込んでから答えた。

「まだ分かりません。でも、本を作る仕事や、それを届ける仕事に興味があります。もっと調べてみたいと思っています。」


進路へのヒント


先生は真一の言葉を聞きながら、机の引き出しからいくつかのパンフレットを取り出した。それは、出版や図書館、書店業界の仕事について書かれたものだった。

「これ、興味がある分野が載っているかもしれないから、持って帰って読んでみて。」


真一は感謝しながらパンフレットを受け取った。そこに書かれている文字を追いながら、自分が知らない世界が広がっていることに胸が高鳴るのを感じた。


未来の絵を描く


その日の夜、真一はパンフレットを見ながら、これからの自分について考えた。本を作る仕事、届ける仕事、そして本を通じて人をつなげる仕事。どれも魅力的で、どれが自分に合っているのか分からない。それでも、考えるだけでわくわくする感覚があった。


真一はノートを開き、思いつくままに自分の未来を描き始めた。


ノートの一部:

「本を作る仕事は、誰かの言葉を形にすること。本を届ける仕事は、その言葉を必要とする人に届けること。そして本をつなぐ仕事は、人と人を結ぶこと。どれも素晴らしいけど、まずはもっと本の世界を知りたい。」


書き終えたあと、真一は少しだけ未来が近づいたような気がした。


学校での共有


翌日、クラスメートたちと進路について話す機会があった。良平が軽い調子で言った。

「お前、やっぱ本関係の仕事目指すのか?」

「そうかもしれない。まだ調べてる途中だけど、書店での経験がすごく楽しくて……その延長線上にある仕事をもっと知りたいと思ってる。」


良平はうなずきながら言った。

「いいじゃん。お前、今のまんま突き進めばいいと思うぜ。俺もそろそろ真剣に考えねえとな。」


その言葉に、真一は心の中で「少しだけ自分を信じてみよう」と思えた。


夜空を見上げて


その夜、真一はまた夜空を見上げた。星々が静かに輝いているその景色を見ながら、自分が進むべき道を少しずつ描き始めた自分を感じていた。


「未来はまだ遠いけど、少しずつ形になり始めてる。」


そう呟きながら、真一はまた一歩、未来へ近づく準備をしていた。星たちは、彼の進む道を静かに見守るように輝いていた。

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