魔女と王子の冬休み〈アドベントカレンダー2024〉

ミコト楚良

 この降誕こうたんの月に、ボッチノ森の魔女は、いちばん稼ぐ。

 アドベントカレンダーは実入りが多い。

 それは人のこよみで、降誕こうたんの月の1日めから人の神の誕生日の25日まで、日の数を数えるために使う。紙や木で作った工作物であることが多く、小さな窓ないし扉、小箱の場合もある。それを毎日ひとつずつ開けていく。

 その中には、詩の一編、チョコレート、焼き菓子など、小さな贈り物が入っている。宗教色の濃いものもあれば、娯楽用もある。

 魔女の作るアドベントカレンダーは、後者である。魔女の信じるものは、神ではない。

「お金かな。魔王の沙汰さたも、金次第」

 百歳にも満たぬ、ひよっこ魔女は、黒い長衣のフードを目深にかぶり、白い手のひらを、魔女の家に出向いた商人に差し出した。

「毎度ありぃ」

 人のこよみでノウェムの月に、魔女は人の商人にアドベントカレンダーを納品した。

 今年の制作分は予約段階で、すべて売り切れた。特別な顧客に向けての、オリジナル創作も含む。魔女も商人も、ほくほく顔だ。商人は、金貨の小袋を魔女に手渡した。なに、彼は魔女の支払い分に上乗せして、しっかりもうける。

「よい冬を。森の乙女」

「また来年もよろしく。お大尽だいじん

 この季節しか顔を合わせない、ふたりは、互いをねぎらいあって別れた。

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