わたしの愛する神様にむけて
千蔭えく
お仕事に行く電車の中、わたしはあなたのことを考えています。
ごとごとごと、ごとごとごと。
毎日、わたしは満員電車に乗ります。日曜日はおやすみですけど、たまにおでかけして乗ることもあります。
ひとに、押され。転びかけ、踏みとどまり、また押され。揺られ潰され、わたしは1時間半かけて、会社の最寄駅へと行きます。
今日もひとをぱんぱんに詰め込んだ電車に乗って、神様のことを考えています。
神様は、満員電車、乗らないだろうなあ。そもそも電車、乗るのかな。乗るとしてもグリーン車とかの、もっと快適なものなんでしょう。
社会人三年目。わたしは今年で二十五歳になります。いつまでもなんとなく年を重ねるわけにはいかないけれど……
会社に行く。仕事をする。日曜日のおやすみには、たまっていた家事をして、少しだけ外に出て……
その周期を守るだけで、新しいことは何もできないできないでいます。
たとえば、彼氏をつくるとか。親も、友達も、いいひとはいないの、とわたしに会うたびに聞いてくる。
たしかに、入社から丸二年は経って忙しさは減ったし、わたしはもう結婚してもいいくらいの歳です。友達も、一人だけ結婚していて、あと彼氏がいるひとはもっと多い。
わたしも、いたほうがいいんだろうなあって、思います。……だって、お母さんたち心配するから。兄弟もいないわたしは、親がいなくなったらひとりぼっちになってしまうから。
でも、わたしはあんまり……興味、ない。
わたしには神様が、いるんですから。
毎日あなたのことを考えて、あなたの表情を想像する……
それだけでこの単調な毎日も幸せになるのです。だからこれ以上なにも、望んでいません。
きっとこの気持ちは、誰にもわからないのです。だれにも、わからなくていいのです。
わたしの神様。わたしだけの神様。
ふんわりと淡い髪、陶器のように白い肌。長い睫毛と、まるい瞳。
永遠に十七歳の、女の子。
あなたが、わたしの神様が永遠になってから……もう九年も経つのですね。
今日も窮屈な箱の中で、わたしは、あなたのことを考えています。
だからこの思いは、あなただけに届いてほしい。少しでも……少しでも、いいのです。
ただあなたを愛しているということだけ、ほんの少しでも伝わったら。
わたしはそれだけで、ひどくひどく、幸せになれるのです。
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