第3話 異能者と非異能者
俺はこの学生服を着たリーダーと呼ばれる化け物にゆっくりと歩みを寄せていく。
「向かってくるやつを殺すのは初めてだな。ほら、さっさと死ねっ!」
ヤツは再び手をかざし、俺に【空気弾】とやらを放ってきた。
迫ってくる速度、それはバッセンの感覚でいうと120キロくらいか。
まぁ避けられるな、そう思い、俺は体を半身に反らして躱わす。
「へっ! 運のいいやつめっ!」
2発目。
運とか言われたのが頭にきたので、刀でかっ斬る。
その空気弾とやらは球体の形を失った途端、その場で自然に消滅した。
「なるほど。斬ってもいいわけだ」
「は……? うそ、だろ?」
3発、4発目も同じく刀で丁寧に斬っていくと、ようやく敵も理解したのか少しずつ後ずさり、俺との距離を離そうとし始めた。
タッタッ――
俺は少し駆けてさらにリーダーへ詰め寄った。
「く、くるなぁっ!」
何発放っても俺には効かない。
攻撃に対応しながらも速度を緩めない俺に恐怖を覚えたのか、彼はその場ですっ転んだ。
「そこで眠っとけや」
ドスッ――
俺は刀の峰部分を使ってリーダーの頭部をどつくと、激しい振動に耐えかねてか、その場に倒れ込んだ。
「ひ……ご、ごめんなさい……」
その横で未だにへたり込んでいる学生は、俺を見るとすぐ小さな声で謝罪をしてきた。
「ま、その……お前もある意味で被害者だよな。とりあえずこの辺は危ないから君も帰りな」
「は、はい。ありがとう、ございます」
その子はゆっくり立ち上がってこの場を後にした。
「き、君っ! すごいなっ! 攻撃を避けてぶっ倒したなんて」
「本当にありがとう! 命の恩人です!」
「お、お名前は……? ぜ、ぜひお礼をっ!」
戦いが落ち着いたと思えば、この場にいた人々に突然寄りつかれた。
感謝の嵐である。
「あ、いえ、そんな大したことは……それより怪我してる人がいたけど、大丈夫なのか?」
と、俺はその方へ目をやると、すでに何人かが応急処置的なことを始めている。
救急車の手配まで準備完了っぽいし、とりあえずは安心か?
「耀ちゃん……っ!!」
心菜は勢いよく俺に駆け寄り、後ろから飛びついてきた。
「おぉっ!?」
ビックリしすぎて変な声が出ちゃったじゃねーか。
足音でなんとなく駆け寄ってきているのは分かったが、まさか全体重を乗っけてくるとは思わなかった。
「ちょっと重いから降りてくれ」
「むぅ……」
俺がそう言うと手を離し、素直に地へ足をつけた。
なんだか頬を膨らませて、いじけたような顔をしている。
昔からスキンシップの激しいやつだ。
もう28にもなって距離が近いのはやめてほしい。
い、一応……その、男女なんだし、胸が当たったりするのは俺も困る。
「耀ちゃん、助けてくれてありがとう……っ!」
「いんや、気にすんな」
「ほんと、その……いつもごめんね」
心菜はそう言って肩を落とす。
彼女の言ういつも、とはきっと『ナンパ男撃退』のことを言っているのだろう。
心菜の見た目だ、しょっちゅう町では声をかけられる。
それも大抵は体目当て。
昔から一緒にいるよしみ、俺が隣にいることで自然とナンパ男撃退になっていた。
その甲斐あってか、最近では1人でいる時も声をかけられることがほとんどなくなったそうだ。
だからといって完全に気を抜いていいわけではないのだが。
「そうだな。お前は人一倍可愛いんだから、その辺自覚持った方がいいわ」
「え……っ!? かわ……えぇっ!? 私が?」
心菜は急に狼狽え始めた。
今更何を慌てているのかさっぱり。
可愛いなんて普段言われてるだろうに。
「なんでそんな自信なさげなんだよ。いつも周りに言われ慣れてるだろ」
「いや……でも耀ちゃんには言われたことなかったから」
「そうだっけ?」
「うん、だからついびっくりして……」
なぜ俺に言われてそんな慌てるのか甚だ疑問である。
別に昔から男子にモテてるのは見てたし、俺自身そう思わないこともない。
だからこそコイツの距離の近さには時折、ドキッとすることもあるのだ。
だけど心菜は俺の唯一の女友達。
その関係を壊してまで、先に進もうとは思わない。
そもそも心菜自身もそんなつもりないだろうし。
「え、えっとその……あ、そういえばいいことを思いついたのっ!」
恥ずかしさからか、心菜は突然話題を変えてきた。
「え、なんだ?」
「えっとね、実はこれをSNSにアップしたの!」
そう言ってスマホ画面を見せてきたので、俺はそれを覗きこむ。
そこには、あるSNSアカウント。
そして1件の動画が公開されていた。
「おい、それって……」
「そう! 燿ちゃんとさっきの人の戦闘シーンだよ!」
心菜のやつ、戦いの一部始終を撮影してやがったのか。
それも割と序盤からとは、えらく余裕があったようで。
さすが俺の幼馴染だ、イカれてるね。
「さっそくネットの反響もスゴイみたいだよ!」
"え、これってさっきテレビで言ってた異能者? 動きヤバくない?"
"いや、合成だろ。道場のアカウントだし、どうせ宣伝"
"剣士の方もヤバいな。二人とも異能使ってるのかな?"
"剣士てw"
"いや普通に銃刀法違反で草"
"合成だとしてもかっけぇな"
"逆にこれ合成で作ったとしたら色んな企業案件来るレベルだろ"
"合成じゃないと信じたい"
"俺も。そっちのが夢ある"
"てか投稿のタイトル、異能関係のお悩みなんでも解決しますだってさ笑"
"これまともな悩みこないんじゃ……w"
良いのか悪いのか、投稿のリプがめちゃくちゃ送られてきている。
「心菜、動画はまぁいいが、これの何がいい方法なんだ?」
SNSに載せたのは分かったけど、結局のところ彼女の真意がよく分からん。
「このアカウントでさ、さっきの投稿にも書いたけど『異能関係のお悩み解決』をしようと思いますっ! これで箕原道場を有名にして、見事道場復興っ! どうよ?」
心菜は誇らしげに顔を上げる。
「いや、どうよってそう簡単に上手く……」
「ほらさっそく一件依頼がきたよっ!!」
「え、ガチ?」
そしてこの一件から俺の人生は大きく変わっていくことになる。
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これから耀と異能者の戦いが始まっていきます🙇
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