第23話 悟の逆恨みと瑠奈との別れ
「は、?俺が退学?」
クソっ一日たっても突破口を見つけられなかった俺は学校に到着するなり生徒指導室に連れて行かれた。
「ああそうだ。今回の柳の件の虐めの件もあるし他にも写真が送られてきた飲酒、喫煙、暴虎行為を起こしたお前を学校側は退学処分にすることにした。それに伴って野球部は半年間の活動停止。もちろん出場が決まっていた甲子園の出場も取り消しになった」
「そんな、」
「当たり前だろう。飲酒や喫煙だけでもダメなのに虐めを先導したり悪質な噂を流した件も相当に罪が重い。もちろんこの虐めに関わった全員にある程度の処罰は下すが退学はお前だけだな」
佐々木は残念なものを見るかのような目で俺のことをみていた。
やめろ。
そんな目で俺のことをみるな。
「何とかならないんですか?」
「なるわけないだろ?こんなことをやらかしておいてまだそんなことが言えるなんてお前はある意味大物かもな」
「、どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。とりあえずは明日お前の保護者の方を学校に呼んで事情説明をする予定だから伝えるように。もちろんこちらから電話も掛けるがな」
クソっどうして俺がこんな目に遭うんだよ。
これも全部空がいるから、空のせいで。
「わかったら来て早々悪いがお前はもう帰れ」
「わかりました」
あいつに何とかして復讐しないと俺の気が済まない。
だが、いまあいつをどうにかはできない。
しっかり機会をうかがって最高のタイミングでこなさないと。
◇
「悟君、」
「瑠奈か。どうかしたのか?」
チッ、今はこんな奴に構ってる暇はないのにこんな時に。
「いや、帰ろうとしてるから何かあったのかなって」
「さっき佐々木に退学を言い渡されたよ。明日には親を交えて説明するらしいがあの言い方じゃあ覆りそうにないな」
「そんな」
クソ、一体誰があんな動画を。
空はあの時の様子からして動画なんてとれてないだろうし。
そもそもあの状態の空はどうやって立ち直ったんだ?
何かきっかけがあるはずだ。
じゃないとおかしい。
帰る場所が無くなったあいつは今どこに住んでるんだ?
「それと瑠奈に言いたいことがあったんだ」
「何?」
頃合いだろう。
こいつに構っていても時間の無駄だしこいつとはここで縁を切っておくほうがいいだろう。
「俺はお前のことなんか全然好きじゃなかったんだ。ただ、お前が空の恋人だから奪っただけでお前に好意なんてかけらも持っちゃいない。だからもう俺に関わらないでくれ」
「待ってよ!そんなことないでしょ?今までずっと一緒にいたじゃん!」
「触ってくるなよ。鬱陶しいな。何も嘘なんかついてないぞ。俺はお前に道具としての価値しか見出してなかった。それも用済みだから二度と関わってくるな」
掴まれた腕を俺は勢いよく振りほどく。
「待ってよ。悟君に捨てられたらわたしどうすれば、」
「そんなの知らねえよ。そもそもすぐに恋人を裏切るような人間を誰が信用できるっていうんだ?」
こいつは簡単にずっと一緒だった幼馴染の空を裏切った。
そんな奴を信用しろというほうが無理な話だ。
「それは、悟君が!」
「同じだろ?俺よりいい男がお前に言い寄ったらお前と付き合っていても簡単に捨てられるんだろ?おまけに無理やり迫られたっていう噂まで流されるおまけ付きでだ。付き合っているメリットが感じられねぇ。わかったら失せろ目障りだ」
俺がそういうと膝から崩れ落ちて瑠奈は泣いていた。
それを見て少し愉悦を感じている俺はきっと悪い人間なんだろうなぁ。
ハハッ
◇
一日前
「早退したは良いけど何もやることが無いのよね」
「天音さんって休日は何をしてるの?」
天音さんが休日に何をしてるのか聞いたことが無いな。
まあ、関わって日も浅いから当たり前なんだろうけど。
「別に特殊なことはしてないわよ?勉強したり読書したり家でゆっくりしてることが多いわね。特段外でやることもないわけだし」
「そうなんだ。なんかちょっとイメージ通りかも」
天音さんが休日に外で遊びまわっている姿なんか想像できないし。
「それは褒めているのかしら?」
「もちろん。というか俺が天音さんを貶すことなんかしないし」
「ならいいのだけど。空は紅茶でいかしら?」
「え、うん。ありがとう」
天音さんの部屋で他愛もない会話をしていたら天音さんはエプロンを着てポットを片手に紅茶を入れる準備をしていた。
なんだか改めて見ると本当に天音さんって可愛いよな。
普段は下ろしてる長い髪を今はポニーテールにしていてそれがまた魅力的に映ってしまう。
いやいや、俺は何を考えてるんだ。
こんなことを考えるなんて天音さんに失礼じゃないか。
「一つ聞いてもいいかしら?」
「なに?」
天音さんが俺に聞きたい事なんてあるのか?
というか、それは俺に答えられることなんだろうか?
「恋をするって楽しいことなのかしら?」
「え?」
いきなりとんでもないことを聞かれてない???
そりゃあ天音さんも高校生だしそういう事に興味があるのかもしれないけど。
「それなりに楽しいんじゃないかな。というか、その恋愛をしたおかげでこんな目に遭ってる俺に聞くことではないと思うけどね」
「確かにそれはそうね。ふふっ。ごめんなさい」
「笑ってるし」
まあ、天音さんが楽しそうなら別にいいんだけどさ。
「じゃあ、人を好きになるのってどういうことなのかしら?」
「いきなり哲学?」
人を好きになる、か。
俺はずっと瑠奈が好きだった。
どこが好きだったかと聞かれれば多分全部だったと思う。
一緒にいると安らげたし沈黙が苦でもなかった。
そんな彼女のことが本当に好きだった。
だからこそ裏切られたときは悲しかったしそれ以上に怒りの念が湧いてきたんだと思う。
「いや、そうではなくて。私は今まで異性を好きになったことが無いの。だから、というのもおかしいかもしれないけど人を好きになるって言うのがどういうことなのかわからないの」
「そういう事か」
確かに天音さんが今まで誰かを好きになったことが無さそうだとは思っていた。
確証はなかったけどなんだかそんな気がした。
「だから教えてくれないかしら?」
天音さんは真剣な眼差しで聞いてくる。
これはどう答えればいいのか?
天音さんは真剣に聞いているし俺も真剣に答えないとよくないよな。
「その人と居て安らげたりすることじゃないのかな。一緒にいて楽しかったりドキドキしたりもっと一緒にいたいと思う事じゃないのかな?まあ、俺にも詳しくはわかんないんだけどね。恋愛なんて人それぞれだし」
恋愛に正解なんてないと思う。
人の数だけ恋愛があってその人の数だけ正解があるんだと俺は思ってる。
「意外と恋愛って難しいのね」
「そりゃそうでしょ。恋愛で苦労した俺だから言えるけど、本当恋愛って難しいよ
」
ここ最近に遭った出来事を思い返しながら自嘲気味な笑みがこぼれる。
長年の幼馴染であってもこのような事態になるのだ。
そんな恋愛が簡単なわけがない。
「確かに。空が言うと説得力があるわね」
「なんか微妙に不名誉だな」
「そうかしら?私にそんな気は無いから安心して頂戴」
「わかったよ」
突発的に始まった天音さんとの恋愛相談はこうして幕を閉じた。
でも、なんでいきなりこんなことを聞いてきたんだろう?
もしかして好きな人ができたとか?
いや、そんなことは無いか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます