第15話: ローハンの覚悟
ローハンの顔色は日に日に悪くなり、目の下には深い隈が刻まれていた。
腕に刻まれた呪いの紋章は、彼の生命エネルギーを容赦なく吸い取り、それを魔力に変えていた。
その様子を見かねたマチルダは何度も安静にするよう促したが、ローハンはただ曖昧に頷くだけだった。
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一行は、とある村で空飛ぶ悪魔の群れの討伐を依頼された。
奴らはその赤黒い翼を翻し、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかる敵は、恐るべきスピードと力を持っていた。
アストリアの体に憑依したセラフィスが"スキャニング能力"を使い、冷静な声で皆に語りかける。
「敵の翼の付け根にある紫色の結晶が弱点だ。ただし、結晶は高速で動き回る敵に覆い隠されている。」
セラフィスの指示に従い、アストリアは「マグナム・トニトルス(大いなる雷鳴)」を、マチルダは「サギッタ・アルデンス(燃え盛る矢)」を駆使して攻撃を試みる。
しかし、デビル達はその攻撃をことごとくかわし、反撃の爪を繰り出してくる。
状況は次第に悪化し、二人は徐々に追い詰められていった。
その時、後方で状況を見ていたローハンがふらつきながら立ち上がった。
マチルダが慌てて彼を制止する。
「ローハン、ダメよ! 今のあなたじゃ、戦えない!」
だが、仲間の窮地を前に、ローハンはその言葉を振り切った。
彼の瞳には決意の色が宿り、腕の呪いの紋章が不気味に輝き始める。
「ただ黙って見ているだけなんて俺には出来ない....俺はもう、逃げるわけにはいかねぇんだ!!」
「フロル・テルリス(大地の怒り)!!!!」
ローハンが呪文を唱えると、その周囲に強烈な魔力の風を巻き込みながら、巨大な土の柱が次々と敵を打ち砕いていった。
呪いの紋章はさらに深い闇の光を放ち、彼の体から生命エネルギーが激しく吸い取られていく。
だが、その代償によって放たれた魔法は凄まじい力を持っていた。
「カラミタス・ダエモニス(悪魔の厄災)!!!!」
更なるローハンの叫びと共に放たれた魔力の嵐が荒野全体を覆い、デビル軍団は一瞬にしてその圧倒的な力に飲み込まれた。
空中に舞っていた無数の敵は、次々と崩れ落ち、塵となって消え去った。
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窮地を脱した面々が振り返ると、ローハンは地面に崩れ落ちていた。
その体は見るからに衰弱し、呼吸も浅くなっている。
マチルダが駆け寄り、その肩を支えながら叫ぶ。
「ローハン! どうしてこんな無茶をしたのよ!」
ローハンは微かに微笑みを浮かべた。
「みんなを守れたなら…それで…いいんだ…」
その声はか細く、今にも消え入りそうだった。
セラフィスが憂いを帯びた声で語りかける。
『このままでは命が持たない。呪いを解く方法を探さなければ...彼は....!』
アストリアは拳を握りしめた。
「皆んな、呪いを解く手がかりを一刻も早く探し出そう。ローハンを絶対に死なせはしない」
彼らは、急いで村の宿屋でローハンを応急処置してもらう。
「大丈夫だ、ローハン。暫く安静にしていよう。」
すると、そこへ村長が入ってきた。
彼は面々から事情を聞くと、目を閉じ、暫く考えた後に口を開いた。
「ここら一帯に言い伝えられている伝説がある。『奇跡の涙』という宝石が魔力を浄化する力を持つらしい。」
「奇跡の涙」という言葉を聞いて、マチルダの顔が一瞬、何かに気がついたかのようにハッとなった。
「どうした?マチルダ。」
マチルダの異変に気付いたアストリアは聞く。
「ううん、何でもない。」
マチルダはそれ以上、何も言わなかった。
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「取り敢えず、『奇跡の涙』について情報を集めよう。」
アストリアはマチルダと別れ、村での聞き込みを始める。
マチルダはすぐに村を出たきり、帰って来なかったが、数日ぶりに村に姿を現した。
「今まで、何をしていたんだ?マチルダ。」
不審に思いながら聞くアストリアに、マチルダは、ただ目線を落とす。
いつものマチルダと明らかに様子が違う。
翌朝、マチルダは"喜の魂"が入った壺と共に、再び姿をくらました....。
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