いつの間にか、腕の上を走っていた虫がいた。

 振り払えど振り払えども、気が付けばそこに居る。どこにでも居る。鬱陶しい。


 そう思うからダメなのかな、と。

 ふっと、軽く息をふきかけてみる。

 ぷるる……っと震えて、そいつは立ち止まった。

 指の腹で撫ぜてみる。

 微かに鼓動しているのがわかる。


 可愛い、と思った。

 だから、潰した。


 ぷち……って、音がするまで。

 念入りに。

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