小川

 春の日のこと。

 

 さらさらと流れる小川に裸足で入ると、ぽかぽかとした陽気の今日でも、ひんやりとしていた。

 冷たいって言ったら、あなたの方から水しぶきが飛んできて。

 わたしの顔を濡らして、またおんなじ言葉が口をついた。


 笑って、笑い合って、水を掛け合った。

 今思えば、何が楽しかったんだろう。わからない。わからないけど。

 

 楽しかった。

 それだけは、思い出せる。


 楽しかった。

 それしかもう、思い出せない。

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