魔王に捨てられた剣を持つのは、パーティに捨てられた勇者(仮)

音喜多子平

プロローグ


…ああ。


あるじよ、なぜですか。


なぜ私をお捨てになったのですか。


どうかもう一度、主の傍に私をおいてくださいませ。




災いが降り注ぐのなら、退けましょう。


障害が立ち塞がるのなら、打ち砕きましょう。


脅威が襲いくるのなら、薙ぎ払いましょう。




もう二度と分不相応な事など申しませぬ。


だから。


どうかもう一度、主の傍らに私をおいてくださいませ。


どうか。


どうか。


主よ。


私の声に答えてくださいませ。


…主よ。


…。


……。


………。


…………。



…おのれ。


おのれ。おのれ。おのれ。おのれ。おのれ。




何故私を捨てた。これまでどれほどの心血を注いできたと思っているのだ。



私を握りしめた、その手を切り落してくれる。

私を見つめていた、その眼を抉り出してくれる。

私の名を呼んだ、その口に灰と煮えた油を注いでくれる。


貴様の肉から皮膚を剥ぎ取り、骨から肉片を引き剥がしてやる。骨についている肉も全てこそげ落として、此の世で最も醜い者たちの餌にしてやる。それでも私の憎悪はおさまらぬ。


慈悲も温情も与えてなるものか。




我が憎しみを知れ。

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