第37話 怪しげなガレージ

バスが行き交う大通り沿いに中学校や小学校、保育園、総合病院、ショッピングセンターなどが設置されたニュータウン。小規模の店舗が集まった商店街の一角に、ある発明家のファクトリーがあった。表向きは旧い音楽レコード盤やCD等を販売する広さ3畳ほど中古店だが、店舗の裏は車が3台は収まる怪しげなガレージに1台のS660《エスロク》が入庫しており、エンジンフードが開けられていた。その中を覗いているのは初老のオレンジのツナギの男。


ホンダ伝統のスポーツを象徴するSシリーズとして登場したS660《エスロクロクマル》は高回転型のターボエンジンを搭載。 しかし馬力自主規制の影響により軽自動車は64馬力に抑えられているため、最高出力には概ね5000回転で到達、そこからの加速には伸びを伴わずに7000回転付近でレブリミッターが作動。


マニュアルミッションの6速では3000回転で100キロに達するので通常走行には問題ないS660《エスロク》が、4速にシフトダウンしての100キロからの再加速時には早々に5000回転に達して、高速による空気抵抗も加わって加速に伸びを欠く。軽だから140キロ出せれば十分なのだが、更なるモアパワーを訴えるオーナーたちの要望に応えているのが初老のオレンジのツナギの男なのだ。

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