異世界の特異点

@_yanana_

第1章 異世界での1日目

目が覚めたらそこは異世界

第1話 予知夢

「____?」



暖かい空気が体を撫でる。ここは、どこだろう?

そうだ、確か布団の中でぬくぬくを寝ていて、気づいたら意識が途切れていて、目が覚めると、ここだ。

私はいったい、どんな夢を見ているのだろうか。


草原に私、田中たなか 有紗ありさはポツンと草原の真っ只中に立っていた。

そして、私の目の前に真っ白で純白の髪色を靡かせてながら少女は立っている。なぜか、少女だというのに、そう思わせない空気が彼女を纏っている。その髪は長く、風が靡くのをやめれば地面につくだろう。

体にはふんわりとした髪とは対照で灰色の服を身に纏っている。そして、宝石のような翡翠色をしている瞳を真っ直ぐ射抜くように私を見つめて、薄い桜色の唇を開く。



「目が覚めるとあなたは_____、異世界にいます。」

「は?」



突然、訳がわからない発言をされ、口から間抜けな声が漏れ出る。少女は、怪訝そうに眉を下げて「すみません。」、と謝罪し、



「とりあえず、目が覚めると異世界にいるます。頑張って、生きてくださいね。」

「は、はい…?」



少女は表情を消し、やや緊迫した声色で私を見つめながら喋る。どういうことだろう?異世界とは?

もちろん、「異世界」ワードくらいなら誰しも聞いたことあるだろう。だからと言って、いきなり異世界に行きますよ、と言われてもポカーンとするだけだ。

固まって少女を見つめていると、くらりと眠気に襲われる。

すると、焦った声がわずかに耳へと滑り込んできた。


「っ!いつの間に、あいつが!」


なんだろう。私を見つめて、緊迫した声色を発しながら駆け寄ってきていて______。あいつって、誰だろう______?

意識がだんだんと沈んでいきながら、そんなことをぼんやりと考える。まぁ、いいか__。

どうでも良くなってきた。意識が、また奥深くへ沈んで______。

あれ?さっき、何を話してたっけ?異世界に行くって言われて、それで。


そして、意識は静かに消失した。


+++


あったかい。ポカポカしてるなぁ。もうちょっと寝ていよう。そんなことを思いながら、ふわふわしている布団に体を預けて蹲る。

ん?布団ってふわふわしてるっけな?あ、そういえば夢の中で異世界とか言ってたなー。おかしな夢だったなぁ。ここは、まごうことなき現実_____。


瞼を開け、光が黒い瞳に入り込んでくる。ゆっくりと体を起こし、辺りを見渡すと、ほら、いつもの景色_________、じゃ、ない。

肌がゴツゴツしている人間、よくわからない精霊?みたいなものを漂わせているエルフ。

……、まだ、私は夢でも見ているのだろうか。うんうん、そうだろう。


夢にしてはやけにリアルな感触。そういえば、ふわふわしているこれはなんだろう?疑問を浮かべ、ふわふわしている何かを手で触りながら、そちらへ目を向けると。目に入るのは、緑。一面の、緑。草?なんだろうか?もう一度手で撫でてみるが、草。


ふわふわの草に、別の人種。つまり。


スゥーーーーー。


現実だ。異世界だ。何事だろう。さっきの少女は、やっぱり異世界のこと言ってたんだなぁ。

異世界ということにようやく脳が理解し、パニックになる。

家に帰りたいっ……。

というか、どうしてだろうか?ううんと頭を捻り、考えてみる。わからない。本当に、どうしてだろう。とりあえず、死ぬ。このままだと、死ぬ。どうにかしないと。


いや、しかし。いや、異世界と言われても!



(いやでも、異世界って…。やっぱり信じれない!!)



とは思いつつ、状況が状況だ。異世界と聞かれて「はい。」と答える以外の選択肢が、ない。

異世界。そんなもの、物語の中でしかないだろ〜、などど思っていたがそんなことはないらしい。ありえないが。

そのまましばらくボケッとしているが、目覚める予兆はない。やっぱり、現実か。

そうやっと理解して不安と楽しさが湧いてくる。


すごい、だが不安だ。そんな感情は有紗を渦巻く。

本当に、異世界ってあった。そんな摩訶不思議な情景が目の前に広がっている。

そして、いろんな人種がおり、人種というか別の種族もいる。どうしようかと不安だが、少し楽しさも湧いてきたのも事実だ。


しかし、死にかけに変わりはないが…。

とりあえず、何か行動を起こさなければ何も起きない。

体を動かし、とりあえずこの街?を歩いてみよう。



「どういうことだろう…………。起きたら、異世界って。普通ならなんか特別な能力がもらえるものじゃないの…?」



と、よくラノベにありそうな特別な能力が付与されることが自分になく、思わずつぶやく。



「そういえば、私が今持ってるのって…、スマホ、なぜか財布…。所持品ってマスターソードとかあるものじゃないんだ…。」



異世界に飛ばされる=すごい能力or、すごい所持品だと思ったが…、とガックリとこの環境を打開できそうな能力、所持品がなくはぁぁ〜と有紗は項垂れる。

でも、飛ばされたからにはなんとかして生き抜かなかればならない。

とりあえず、頼りにできる人を探そうと辺りを探索し始める。



(とりあえず、お金を手に入れないと…。見ている感じ、通貨が違うっぽいし。うーん、このお金、売れるっ?)



ううん、と可愛らしく手を顔に当てながら悩む。

言語は流石にわかるが、それ以上はお手上げだ。文字も何が何だがわからない。



「とりあえず、食料を調達しないと…。最悪、お風呂とかに入らなくたっても食べ物があれば大丈だと思うからっ…。」



最初の目標は、食料調達。これなら、森などでもなんとか採れるだろうが…。

この街に近くに、森があることはマップを見て確認済みだ。


所持品を売る、という手もあるだろうが…、引き換える場所が見当たらない。物々交換などもないだろう。金貨と、銀貨がある。多分それが主流だろう。



「仕方ない…、森にでも行くか?」



絶対に汚れるから嫌だが、そんなことは言ってられない。これ以上突っ立っていても、誰か似た助けられるとは限らない。自ら行動を起こさねば、何も起こらない。


そう考え、森に向かって足を踏み出そうとすると____、



「うわあ、魔獣が襲ってきた!」



と、わぁぁっと叫びながら大声を張り上げている男性。パニックになり、急いで走り去っている。

その声を聞き、だんだんを街の住人にパニックが広がり、を見て次々に顔を青ざめ、逆の方向に走っている。

一コマ反応が遅れ、急いで逃げていっている方向と逆の方向を有紗は見て___、その顔が恐怖に染まる。

魔獣だ。まさか、近くにいるだなんて。

森が近くにあると考えたら、それはそうだろうが。この世界に来て早々、酷すぎる。いきなり大ピンチだ。



「やばいやばいやばい!死ぬ!!!異世界にきていきなりっ、襲われるとか、ふざけてるっ____!」



そんな叫び声を上げながら、必死に足を進める有紗。

命ギリギリの淵に立たされると、人間足が早くなるというのは本当らしい。


しかし、一足逃げ遅れた有紗を魔獣は黒く濁っている瞳を向け、追いかけてくる。

魔獣は、犬っぽいもので、そこには大きな牙を口からだし、よだれを無動作に垂らしている。

いかにも魔物だ。


そして、だんだん魔物と有紗の距離が近づき____、生ぬるいといきがはぁはあと後ろから吹き込まれる。


そして____、



『ァ゛ァ゛ァ゛!!』

「き゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛っ゛!!!!」



今までに出したことのない声を張り上げ____、一世一代の悲鳴を、上げる。それに連なり、魔物も大声をあげて、その大きな口を開け、有紗の目の前に口が迫り______。

がぶ、と。

目の前が真っ赤になっていき、体のあちこちが、痛く、感覚が消失して_____。

有紗は、あっけなく命を落とした。



「うわぁぁっ!!」



そう言って、勢いよく飛び上がる。

はぁ、はぁと息をあげながら自分の体を見つめる。



「あれっ?傷が_____、ない?」



そう、ガブリとやられてしまった傷跡はなく____。

さっきのは、やっぱり夢______?

そう思い、顔を上げると、広がっているのは愛おしい我が家、ではなく。ふわふわしている草。

どういうことだろう?さっきのは?確かに、がぶっと食べられた感覚がしたのだが。ん?と首を捻らせるが、結論は出ない。



「さっきのは、予知夢ってところかなぁ?」



きっとそうだ。多分、夢だろう。だが、街並みは全く同じ。ということは、だ。多分、というか絶対に予知夢だろう。ならやることは一つ、さっさとここから逃げることだ。よし、逃げよう!そう思い、先ほどの予知夢の中で逃げていた人々と同じ方向を進む。大丈夫だ、まだ時間はあるはず____。

時計が読めないが、かなり時間が経った後だったはずだ。



「さっさと撤退しないとっ。」



そう呟き、小走りに魔物が来る逆方向を走る。あれが予知夢だとわかっていたとしても、やっぱり怖いことに変わりはない。


これでとりあえず、生きれる!そう、思っていたのだが_____、



「きゃああっ、魔物が襲ってきたわ!ウルフよ!!」

「は?」



先ほどは男の声だったのだが、か細い女の声が街に響く。

その声は、パニックに陥っており、悲痛な叫びに近い。

いやいや、魔物が来るのはもっと後だし____。そう思い、後ろを振り返ると、さっきと同じ魔物がいた。

なぜ?予知夢ではもっと後だったのに__。

しかし、現実は違う様子だ。予知夢といえど、何も全てが同じとは限らない___、今はそんなことを考える場合ではない、早く逃げなければ、と急いで足を動かす。

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