まっ、いっか! ~やはり目指すは世界最強!──え?なれない?異世界転生なのにこの仕打ちって……~

《118》

1. ちょ───なんで?

「───はっ!」


高い所から落ちるような錯覚を覚え目を開く。するとカビの生えてそうな古書店から、心地の良い風が吹く緑の平野にいた。


「どこだ、ここ……それになんだか腰が重いな。あ、刀だ。かっこいい」


青の流線が走る鞘に収まったが腰に携えられていた。とりあえず、かっこつけて片手でブンブン振るってみる。


想像以上に重くて、手首を痛めた……いたいなぁクソ。


「あれ? 荷物が全部ないな……うん?」


そういえば、たしか仕事の合間に古書店で本読んでたんだよな。たしかライトノベルとかいう……それで何かした気がするんだけど……思い出せない。


「まっ、いっか。思い出せないなら思い出さなくても。とりあえず、ひと眠りしとくべ……」


ま、いっか

何度目だろう

後回し


こうやって横着すると碌な目にあわないけど、その時はその時。僕は刹那に生きる現代人なのだ。


遠くには時代遅れの城砦とそれにつながる主要道路、いわゆる街道みたいなのが見えるけど別に今行く必要もないし、なによりどうせこれは夢でしょう。


「どうせならエッチなお姉さんに囲まれる夢が良かったなぁ……ふぁぁ、ねむ」


夢の中で寝るというのも変な話だが、どうせなら寝るなら日の当たらないところが良いと思い、街道から離れた森に向かう。いやまじでどうせならパフパフされる───


《あなたの現在地はグリーン平野です》


「うわぁっ!?」


突如、女性の声が頭に響く。それは明らかに聴覚とは異なった聞こえ方だった。というか邪な考えをしてる時に声をかけるのはずるい。心臓に悪いじゃん。


「なんだなんだ!? 誰だ!?……くっそぅ、幻聴か!?」


辺りを見渡しても誰もいない。なるほど、知らぬうちに幻覚まで覚えるようになってしまったのか。幻覚の原因はストレスや睡眠不足と言うし、きっと睡眠が足りなかったのだったのだろう。しっかり寝よう。夢だけど。


《あなたの 【ステータス】 は正常です》


「お?」


《その先は【ダンガー大森林】です。【リアル中都ちゅうと】で話などを聞き、レベルを上げてからの探索が推奨されます》


「お、おう。そうなんだ……へぇ」


なるほど。どうやらこれはさっきまで読んでいた本にあった異世界転生みたいなもので頭に聞こえるのはシステムメッセージなどの類だろう。気のせいだろうが、口調がさっきよりも固くなってる。


それに『ステータス』や『ダンガー大森林』などの聞き覚えのありそうでなさそうな、でもちょっとある言葉から推測するに……


「ふむふむ。つまり僕は異世界転生したのか……なるほどなるほど」


異世界に転生したということは……死んじャッタ……ってコト!?


泣いちゃった!


いやホントは泣いてないしそんなことはどうでもいい。


「そういえば異世界転生にはおまけの選べる特典みたいなのがなかったっけ……」


もしかしてこの中太の刀か……? かっこいいけど、パッとしないなぁ。どうせなら大雑把すぎた正に鉄塊とかの方が良かった。


もしかしたら魔法とかあるのかも? ならドデカくて大雑把な爆発魔法がとかあるといいなぁ。それかつぶグミみたいなちっこいのがいっぱい撃てる奴。


「全然よくわかんないけど……まっ、いっか」


これが現実にしろ夢じゃないにしろ、とりあえず人に会ってみなきゃ始まらない。


どうやらお昼寝は中止が決定したみたい。泣いちゃった……心の中で。


「ふぅ。じゃ、気合入れて行きますか───



───ダンガー大森林!」



《…………え? ちょ───なんで?》

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