短編 創作怪談

雨廻アノヒコ

ノック

 皆さんはノック、したことありますか?

 扉だったり、ドアだったり、戸だったり、戸にも色々ありますよね引き戸とか折りたたみ式引き戸とか…、

 ん?そんなのどうでもいいって?いえいえ、名前は大切ですよ?

 とはいえ閑話休題、今回はそんなノックにまつわる怪異譚です


 風の強い日に、いつもと違うノックの音が聞こえたら決して扉を開けてはいけない、もし開けてしまったら連れ去られてしまう、誰かの皮を纏ったナニカに、


 短いって?いえいえこれからですよ


 あるオカルトサークルの大学生、先輩のAさんと同級生のBさん、Cさん、の三人が教室で色々怪異譚について調べていたそうです。あともう一人Dさんが来るはずが少し遅れてしまっていて電話を繋いで話に参加していました。

 その日はとても風が強く、1日中ずっと薄暗く肌寒く、そのせいか電波が悪くてDさんは3人の声がとぎれとぎれに聞こえていたようで、聞こえてくる怪異譚の数々もすべてキレイには聞きとれていませんでした

 だからDさん、少し急いで大学までいったそうです

 大学の入り口に差し掛かったとき、今までほとんど聞こえていなかった電話の声が鮮明に聞こえるようになって、電話の奥から一つの怪異譚が聞こえてきたんです

 風の強い日に、いつもと違うノックの音が聞こえたら決して扉を開けてはいけない、もし開けてしまったら連れ去られてしまう、誰かの皮を纏ったナニカに、


 話が終わったその時、強い風がDさんの後ろからブワッと吹きぬけたんですが…その風…何か変なんですよ、強く吹いたのに…冷たいわけでもなく、ただ生温い感じが押し寄せてくるんです、さっきの肌寒さが嘘のように体を生温いなにかが纏わりつくんです。そんななにか得体のしれない気持ち悪さを感じながら、Dさん足を早めて教室に向かったんです


 コンコン、


 電話越しにも聞こえるほどノックの音がきこえたんです、電話越しから

「Dか?」とAさんが聞いてくるんです、 

 そんなことはない、だってまだ階段の途中なんです

「怖がらせてるのか?早く入れよ」そうやって3人はからかってくるんですけど自分じゃない、

 自分じゃないと伝えるんですけれどまた電話の声が聞こえづらくなっていって、あちらがなにを言っているのかわからなくなっていきます、でもそんな中で

 コンコン、コンコン、

 というノックの音だけが聞こえる、

 Dさん怖くなって、あと廊下を曲がれば教室につくけれど曲がるのを躊躇ったんです

 教室の前にいるのは誰なんだろうか、

 そう思っていると、

 コンコン、

 と電話とともに曲がった先の廊下からノックの音だけが響くんです、

 行くべきか、行かないべきか、きっと行ってもそんな化け物なんていないはず、だけれど恐怖がかって前に進めない…そんなことがぐるぐるぐるずっと頭のなかを回る、

 ガチャ、

 そんなとき扉の開く音がきこえて…

 でもなんだかおかしい、電話は繋がってるはずなのに聞こえた音は廊下から響く音だけ

 Dさん、思い切って教室の方を見たんです

 そこには開きっぱなしの扉しかなくて誰もいません

 教室まで行ったとき、Dさん背筋が凍ったそうです

 教室の中には誰もいなくて、扉の前にはAさんの携帯電話がおちていたそうです、

 誰もいないと行ってもさっきまでそこにいたようにノートや本が置いてあって、そこにいたはずの3人だけいなくなっていたんです、

 部屋の中にはさっき校門で感じたような生温い気持ちの悪い空気だけが漂っていて、

 その後Dさん3人を必死に探したそうです、最終的には警察にも頼って本格的に捜索したんですが、痕跡すら見つからず、結局行方不明として、見つかることはなかったそうです。


 それから数日たったある日Dさんも行方不明になったそうです、いなくなったときDさんの部屋には

 ノックがするとだけ書かれた紙が落ちていたそうです


 この怪異は誰のもとにでも来るわけではないそうで、

 遭うための条件は一つ、この話を聞くこと、だそうです

 でも大丈夫ですよちゃんと対処法は存在するようで

 最後にその方法だけ皆さんには教えておこうとおもいます、これなら出逢ってしまっても大丈夫ですね

 それは、名前を呼ぶことだそうです。

 名前、こんな怪異にもちゃんと名前があるんです

 名前によって相手の存在を縛ることで、恐怖をなくすそうです

 正体見たり枯れ尾花みたいなもんですね

 やっぱり名前は大事でしょ?

 そんなこといいから教えろって?

 言われなくても今からお教えしますよ、 

 その怪異の名前は、…

 コンコン

 おっと、誰か来たようです









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