妖怪レンタル彼?彼女
高井希
第1話妖怪レンタル彼?彼女はじめました
メルヘンチックな白い教会での結婚式。
教会の鐘が鳴り、拍手の中、美しい白いウエデングドレスを着た花嫁と白いタキシードの花婿が教会から出てくる。
ブライダルシャワーを浴びながら微笑む花嫁と花嫁に微笑む花婿。
「凄くお似合いね、美女とハンサム羨ましいわ。」
「知ってる?、これ、今流行りの妖怪婚なのよ。」
「え?。ステキ。憧れちゃうよね。妖怪婚。」
「そうよね。去年人間と妖怪の婚姻が世界で初めて認められて、妖怪婚はトレンドよね。」
「花婿が妖怪らしいわ。」
「素敵。妖怪だから、長生きで死に別れの心配もないし、長い間仕事をしてるから経済力もあるんだって。」
「いいな、どこかに、素敵な妖怪いないかな?。」
二人の会話を聞いていた苦み走ったいい男の中年男性がにやりと笑った。
それを見た隣にいるグラマーな美人が、
「あ、ぬらちゃん、また、なにか企んでる?。」
「新しいビジネスを思いついた。」
「えー?、また?。ぬらちゃん、あんなに沢山会社持ってるのに、また新しい事はじめるの?。」
「もちろんだ。目指せ、富豪世界一が私のモットーだからね。」
「それで、どんなお仕事を思い付いたの?。」
「『妖怪レンタル彼?彼女』さ。今の話聞いてただろう?。妖怪婚がトレンドだって。」
「そりゃあ、妖怪の大将のぬらちゃんが声をかければ、どんな妖怪でも集まるけど。なんで、レンタルなの?。マッチングアプリの方が楽じゃない?。」
「まだ、妖怪について知らない妖怪初心者にはレンタルで、妖怪を知ってもらう事から始める必要があるだろ?。」
「うーん、そうかもね。じゃあ、あたしも、レンタル要員に立候補するわ。」
「いいねえ。HPに君の写真を乗せさせてもらうよ。それで、『つかみはOKだ。』」
「あら、ぬらちゃん、古いわよ。年がバレちゃう。」
通りすがりに二人の姿を見た若い男性二人組が、
「あれ、日本一金持ちの『ぬら.りひょん』だぜ。隣にいるすごいグラマー美人は秘書かな?。」
「二人共、すごいオーラだよな。流石、一流の成功者。俺たちもああなれたらいいのに。」
「ばかだな、成功するには、我慢や努力をしなくちゃならないぜ。俺たちは楽しくいきていければいいのさ。目指せ、すねかじり。」
Z世代の若い男性らは、教会の駐車場に向かって歩いていった。
携帯に広告が表示されている。
『レンタル妖怪彼?彼女』
大学の食堂で、数人のグループがこの広告を見ている。
テーブルの上には食べ終えた学食の皿が置いたままだ。
「見た?、この広告。」
「うん、見た。気になるよね。」
「妖怪婚、憧れるな。」
「私、この前妖怪婚を白い教会で見たよ。凄く素敵だった。私もああなれたらな。」
目を閉じてうっとりと自分の妖怪婚姿を想像する友人に、
「なに、想像に耽ってるの。夢をみるだけじゃあ、実現しないわよ。行動あるのみ。」
「行動って?。」
「これよ。レンタルしてみましょう。『レンタル妖怪彼?彼女』。」
「本気?。」
「もちろん。でも、一人じゃ不安たから、一緒に行きましょう。」
「これが『レンタル妖怪彼?彼女』のショップ?。」
「行くわよ。」
二人が意を決して店舗に入っていくと
「いらっしゃいませ。」
と、若く優しそうな店員が挨拶をしてくれた。
それを見て、二人はちょっと緊張を解いて切り出した。
「あの、レンタル妖怪彼氏をお願いしたいんですけど。」
「はい、お二人共、レンタル妖怪彼氏のご希望でよろしいですか?。」
「では、ここにお座りになって、こちらにあるカタログから。ご希望の彼氏をお選びください。」
二人はテーブル席に座ってカタログを眺めはじめる。
「凄く沢山いるのね。それに、プロフィールも詳しく乗ってるし。」
「でも、多すぎて目移りしちゃう。」
二人は悩んでいるが自分では決められない。
「すみません。おすすめってありますか?。」
思い切って、優しそうな店員の助けを求めた。
「はい、1番から10番に登録されているのが今月のおすすめ彼氏です。優しくて、社交的で経済的にも安定している人物を選んでありますので、初心者さんは取り掛かりやすいかと思いますよ。」
「そうなんだ。じゃあ、私、5番の彼氏で。」
「私は選べないから、ラッキーセブンの7番の彼氏をお願いします。」
「はい、では、お客様のご希望の日時を第五希望までお選びください。あ、お二人はダブルデートをご希望ですか?。」
「そうね、ダブルデートなら安心かも。」
「では、5番と7番のスケジュール確認後に、デートの日時をご連絡差し上げます。こちらのリストからご希望のデート場所をお選びください。」
「えーと、遊園地、水族館、動物園、映画館、喫茶店、居酒屋、明治公園.....。どこがいいかな?。」
「水族館がいいんじゃない?。」
「そうね、いいかも。」
「では、水族館で。では、デート当日をお楽しみください。」
水族館に向かって歩いている二人。
「ちょと、ケイ、気合入りすぎじゃない。」
「ゆうこそ、それ、ブランドでしょ。」
「まだ、約束の時間になってないけど。あのモニュメントの所が約束の場所よね。」
二人が約束の場所を見るとすでに二人の妖怪レンタル彼氏が待っていた。
「えー、写真より、カッコいいよね、二人共。」
待っている二人の所にケイとゆうは小走りで駆け寄った。
「お待たせしてごめんなさい。」
頭を下げる二人を制して、
「ううん、大丈夫。僕らも今、来たところ。僕は風神。フウって呼んで。こっちは気狐。そのまま気狐でいいよ。」
「私は西河恵。ケイって呼んでください。」
「私は新庄由宇。ゆうって呼んでください。私達、大学の3年生。文学部です。」
「よろしくね。じゃあ行こうか。」
4人は水族館に入っていった。
「わあ~。綺麗。」
トンネル状になった水槽の下を歩いていく四人は、夢中になって美しい魚の姿を眺めている。
「ぼく、水族館久しぶりなんです。」
気狐がニコニコしながらケイに言った。
「私も。でも、いいですよね、水族館。」
「君のバックカワイイね。」
フウがゆうに話しかけた。
「ありがとう。フンパツしちゃった。」
「ゆうに似合ってるよ。」
フウの言葉にゆうが頬を染めた。
「ケイのワンピースも似合ってるよ。」
街気狐の言葉にケイも顔を赤くしている。
いいムードなんてきた四人。
「ゆう、手をつないでもいいかな?。」
ゆうはコクンと頷いて、フウに手を差し出した。
そんな二人を見て、
「僕もケイと手をつなぎたいな。」
気狐がケイの耳元で囁いた。
耳まで赤くしてケイが頷くのを見て、気狐が優しくケイの手をとった。
ダブルデートを終えて、夕暮れの街を歩くケイとゆう。
「ステキだった。あっという間に夕暮れになっちゃった。」
「本当に。また会いたいな。」
「またレンタルしちゃおう。もう、結婚にこぎつけるまで、レンタルするぞ。」
「ケイったら。でも、そうよね。また会いたいな。未だ連絡先も交換出来なかったし。」
彼女達はレンタル妖怪彼氏に夢中になったようだ。
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