第29話 第一章 第十一節:昭和の闇と冥府機関の試練

 昭和時代の幕開け――世界が戦争に向かって動き始め、日本もまたその波に飲まれつつあった。帝国の拡張政策の中で、冥府機関もまた新たな役割を求められるようになった。政府は妖怪や霊的存在の力を「兵器」として利用する可能性を模索し始めており、その動きが冥府機関の内部に混乱をもたらしていた。


「妖怪を封じるべきか、それとも利用すべきか」

冥府機関の中では、この問いが幹部たちの間で激しい議論を引き起こしていた。


リーダーである「北条誠一郎(ほうじょう せいいちろう)」は、政府の意向に反対する立場を取っていた。彼は妖怪を人間の欲望に利用することが、さらなる災厄を招くと確信していたからだ。


「我々の使命は、妖怪を封じることにある。人間がその力を手にすることは、結局のところ、災いを呼ぶだけだ」


しかし、政府の圧力は日に日に強まり、冥府機関は存続の危機に瀕していた。


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そんな中、黒羽根の女が再び暗躍を始めた。戦争の混乱に乗じて、彼女は人間の欲望を煽り、妖怪を利用する勢力を背後から操っていた。彼女の目的は、人間と妖怪の力を衝突させ、世界を完全な混沌に陥れることだった。


「黒羽根の女は、人間の欲望を利用する。私たちがそれに気づかない限り、奴の計画は止まらない」

北条は、黒羽根の女の目的を察知し、彼女の行方を追うための特別チームを編成した。


この任務に選ばれたのは、次の4人だった。


剣士・三浦剛士(みうら たけし): 戦場で鍛えられた実力者で、北条の右腕とも言える存在。

霊術師・花井琴音(はない ことね): 優れた霊感と術式の使い手。穏やかな性格だが、強い信念を持つ。

隠密・早乙女篤(さおとめ あつし): 情報収集の達人で、任務遂行のためならばどんな危険も厭わない。

技術者・遠藤凛太郎(えんどう りんたろう): 最新技術を駆使した装置の開発者で、冥府機関の技術面を支える存在。


特別チームの最初の任務は、横須賀の軍港で発生した異変の調査だった。

軍艦の乗組員が次々に姿を消し、その後、正気を失った状態で発見されるという事件が発生していた。目撃者の話によると、夜になると港に黒い羽根が舞い、奇妙な囁き声が聞こえるという。


「黒羽根の女の仕業だろう。だが、単なる妖怪ではない。これは計画的な動きだ」

北条は特別チームに現場の調査を命じた。


横須賀での調査と戦闘


夜、特別チームが横須賀の港に到着すると、そこには不気味な静寂が漂っていた。空には黒い羽根が舞い、港全体が薄暗い霧に包まれていた。


「この霧……普通じゃない」

琴音が呪符を手にしながら周囲を観察する。霧には強い妖気が混ざっており、普通の人間ならば近づいただけで正気を失うほどの威力を持っていた。


「準備はいいか?ここから先は一瞬の油断が命取りになる」

三浦が刀を抜き、全員に警告する。


その時、霧の中から巨大な影が現れた。それは「深海喰らい(しんかいぐらい)」と呼ばれる妖怪で、人間の恐怖を糧に成長する存在だった。


「来るぞ!」

三浦が叫び、剣を振りかざす。妖怪の触手が彼らに襲いかかるが、琴音の結界がそれを防ぐ。


「篤、霧の中に本体が隠れているはずよ!探って!」

琴音の指示で篤が霧の奥へ進み、妖怪の核を発見した。しかし、核は深海喰らいの巨大な体に隠されており、簡単には破壊できない。


「ここで俺の装置を使う!」

凛太郎が装置を起動し、妖怪の動きを一時的に封じる。その間に三浦が突進し、刀で核を一閃した。核が砕けると同時に妖怪は消滅し、霧も晴れた。


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戦闘が終わった後、霧の中から一枚の黒い羽根が舞い落ちてきた。それを見た琴音が呟く。

「これは……警告かしら。それとも挑発?」


北条は羽根を手に取り、静かに語った。

「黒羽根の女の目的は、まだ分からない。しかし、我々を試しているのは確かだ。次は我々が攻める番だ」


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横須賀での戦いは勝利に終わったが、黒羽根の女の活動は止まる気配を見せなかった。北条は特別チームに次の任務を準備させる一方、組織全体の再編を進め、戦いに備える体制を強化していった。


「奴の闇は深い。だが、冥府機関の光はそれに負けない」

北条の言葉を胸に、冥府機関のメンバーたちはそれぞれの戦いへと戻っていった。

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