第23話 不吉な侵入者

さらにまた1ヶ月ほどの歳月が経ち、いよいよ場所によっては食糧問題が深刻になりつつあった。


コズモは許可しなかったが、致し方なく、オムニ・ジェネシスの各所で、より沢山の、そしてより大きな生物が入ってこれるようにと元々開いた外と通じる穴をこじ開けて、入ってきた動物を刈り始めるグループが現れ始めた。


「本日のレポートを開始する。」

コズモの毎日のアナウンスの時間である。話題には事欠かない。


「前日未明、リーダー黒豹が率いるA12のグループが2区の第9ハッチを2mほど開き、狩りを敢行。幸いにも最も厄介と思われた大型の生物は全て駆除に成功。そして、それらの生物は食料としての運用も可能であると確認された。その後、ハッチは閉じられた。無数の小型の虫は今でも船内でウロウロしているようなので、十分警戒するようお願いする。体長1mを超える大型サイズの生物は3種類レポートを受けている。」


コズモはレポートを読み上げる。


「高いジャンプ力を誇る猫類に似た見た目の黒い猫のような生物。命名は[トビクロネコ](ドクター・ムニエルが不在中に決定)。その他、2m級のミジーにも遭遇。集中的に関節部を狙い、弱ったところを高周波刀で切り裂き討伐完了。大きくなった分、関節部を狙いやすくなったので、むしろ討伐は簡単であったとか。」


観衆は聞き入っている。すでにそれらに遭遇した、という連中もいた。


「そして、泥玉のような生物。[マッドボール]と命名した(ドクター・ムニエル不在中に決定)。全身を泥のようなもので覆っている。全長1.3Mほどだが、手や足がランダムに生えてくるらしい。動きは遅かったため、高周波刀で処理。ただし、近くによるとハルモニアスーツが濁り始めたらしく、よって毒素を撒き散らしていると断定。見つけ次第、狩ることを推奨する。その他…」


その後は、それらの調理法を説明する。


これらの生物の命名をしたのがステラだったが、ドクターが戻ってきた時に、「安直ですねえ」となじられ顔を赤らめた。


終わってみれば、1時間以上も喋っていた。


しかし、その1時間、あるいは1日1時間さえもないことが多いが、この定期アナウンスは人々を世界とつなげ、多く人間の正気をギリギリで保っていたので、とても重要なものだった。



⭐︎⭐︎⭐︎



「お疲れ様です、船長。」

ステラがリトル・チーキーに戻ってきた船長を労う。


「うむ、それでは、現在把握できている情報をもう一度整理しようか。」

コズモはステラとビリー将軍とドクター・ムニエルを連れて、会議室へ向かう。


「この即席で作った会議室の光景も、もう見飽きてしまいましたなあ。」


ドクタームニエルは、早く自分の作った研究室に戻りたい、という様子だ。


「大事な仕事なんてものは大抵そういうものだ。同じことを繰り返すものさ。そ

れに、毎日誰かが寄ってきて新しい情報をくれている。徐々に俺たちも、この霧

の世界のことがわかってきたじゃあないか。それに、先ほど霧対策用ゴーグルの

生産が手作りで行われ、成功していると聞いた。これで全ての人間にゴーグル配れるようになる。少しずつではあるが、俺たちはこの世界に適応してきているということだ。」


「うむ、その通りですな。それに私は検体の分析でむしろ忙しいぐらいです

が。それで、本日の議題である、カロリー量の話ですが…」


ドクター・ムニエルは、分析した生物たちの栄養素について語り始める。


「……ではやはり、まだ足りないということでしょうか。」


ステラがドクター・ムニエルに向き直る。


「ええ、ええ、残念ながら、今のペースで狩りを続けても、十分なカロリーを得

られないどころか、必要栄養分が足りないですな。それに、せめて中型のサイズ

以上の生物でないと、食べられる部位が少なすぎます。」


「食べられる虫は、どのぐらいいるのですか?」


ビリー将軍が質問する。


「虫を捕まえるのは、この程度の量だと食事としては非効率と言わざるを得ません。食べられる奴らもいるとは思いますが、調理のことなどを考えるとエネルギー効率も悪いと言えますな。」


「ではやはり、外へ出て狩りを始めるしかないか…しかしながら、もうほとんどの部隊で銃弾が尽きてきて、主に高周波ブレードで戦闘していると聞く。このまま外へ出て戦えるだろうか。」


「武器製造工場を復旧さえできれば…」


「武器製造工場を動かすほどのエネルギーを産む施設が今はありませんよ…人力でちょっとした機械のバッテリーを充電するのが関の山です。」


わかりきっている…

やはり、危険を承知で戦いに赴くしかないのか…


コズモがそんなことを考えている時、「大変だ~!」という声がどこからか聞

こえてくる。


間も無く、声の主がいきなり会議中のコズモたちの前に現れる。受付も通さずにズカズカ入ってきたのは、元軍人のブライアンであった。


護衛が後から追いついてくる。


「すみません、勝手にこの人!」


護衛がブライアンを羽交い絞めにする、ブライアンは構わずに喋る。


「ば、化け物だ、船長!!ヤバイ、あいつはヤバイ!」


その場にいた全員が凍りつく。



⭐︎⭐︎⭐︎



ブライアンが事情を説明する。


どうやら、ブライアン組は第4区でハッチを開けて狩りの準備をしていたらしい。最初は2mまで扉を開き、来る小動物どもを狩る予定であったが、待てど待てど、な

かなか手ごろな動物が入ってくることはなかった。


ブライアンたちは、もう1mほど余計に扉を開いてみた。このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。これまで狩ってきた生物を考えれば、多少大きくなっても問題なく仕留められるはずだ…ブライアンはそう考えた。


しばらくすると、白いミミズのような生物が入ってきた。


(こいつは初めてのタイプだな!?)


ブライアンは確信する。


「慎重に行け!ボディパーツが中に入りきるまで待機!」


下手に撃ち込んで引っ込んでしまうと逃げられてしまう可能性がある。


しかし、ブライアンたちが、この生物をでかいミミズだと断定し、決め込んでしまったことが、惨劇の元となった。


この生物はずるずると入り込んで来るが、ミミズをイメージしていたブライアンたちの予想を超えて、その胴体は実に長かった。


真っすぐに出てきているのではなく、折れ曲がりを繰り返しグニャグニャに出てきているので、全長は一見しては分からなかったが、長さだけなら100mは超えているのではないかと思われた。


しばらくすると、隊員の一人がブライアンに進言する。


「ブライアン隊長、あいつ、なんか太くなってませんか。」


「何を言っている。あの入ってきている穴以上に太くなるわけがないじゃないか。曲がっているからそうだと錯覚させているだけだ。」


そう言ってブライアンは鼻にもかけなかった。

いざとなれば、高周波刀で輪切りにしてしまえばいい、と考えていた。





第24話「ディアボロ登場」へと続く

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