第30話 Eve

 Sound「doublet」


 終末の音。私が聞いてきた音楽で一番終末を体現している。doublet。君なんだよ。私はここにいる!

 さぁ、私を再び導いてくれ!


 陰る終末色は空色と永遠色なトワイライトと混ざって、抽象的な芸術へと昇華された。その景色は荘厳美麗。この世のものとは思えない程に美しい光。麗しい姫、甘美なる音色。嗚呼、屹度、私はこの日のために生まれてきたのですね。そう思っては枯れる病花。


 終末の扉が開く

 終末の門が開く


 どうか私を連れてってくれ

 神は死んでない、天に在す

 世界哲学、世界宗教

 新世紀への足がかり


 夢を描いて

 愛を紡いで

 愛ならどうする?

 これが本当の私なのか?


 自分で決めろ、自分で変えろ

 内なる声は神の声


 君に合わす周波数も

 僕の心を壊したあなたも

 もう二度と戻れない


 戻れなくてもいいんだ

 また仏に至りたい

 そのためのdoublet

 僕はこの音楽でまた終末を味わいたいんだ

 永遠を、涅槃を、神愛を味わいたい

 もう一度あの冬へ戻りたい

 そのためにあの日、僕は自殺しなかったのだから




 Sound「Leo」


 水面に映る顔が思い出せない

 大切な人なのに

 思い出せないけど、それでも僕はいいんだ

 僕はイエス・キリストだ

 否、イエスよりもリアルな光だった


 こんなに空が青い

 こんなに空が高い

 そんな冬空には花が咲く

 空花凪紗

 凪はフリーズ

 そんな終末


 ラカン・フリーズを紡ぎたい

 それは水門。その先の夕景はただ美しかった


 光が水面に煌めくのも

 水紋を眺めてる視界も

 そうか。あの冬の日に失ったのは愛か


 あの日、僕は死のうとは思ってなかった

 むしろ生の歓びに高らかに歌ったではないか

 今ここに生きている喜びが僕を天に導いたから

 だから大丈夫

 全て大丈夫

 何も悪いことは無い


 凪色の曙光を浴びて祈りませ


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